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「新規制基準≠世界最高水準」火山灰リスクへの対応不十分、鹿児島県は再稼働同意の見直しを。グリーンピース委託報告書が指摘(Greeneace)

2015-02-27 12:08:14

sendaikazannキャプチャ




sendaikazannキャプチャ国際環境NGOグリーンピースは、本日2月26日、委託レポート『川内原発と火山灰のリスク』を発表し、原子力規制委員会(規制委)の定めた「原子力発電所の火山影響評価ガイド」が国際原子力機関(IAEA)の定めた「火山安全ガイドライン」を満たしていないこと、そして九州電力が川内原発1,2号機(鹿児島県)の再稼働審査にあたって大規模火山噴火に伴う火山灰などの影響を過小評価していることを明らかにしました(注1)。



 

また、規制委と九州電力による川内原発の火山灰への安全対策は、アメリカの原子力規制委員会に比べ不足していることも指摘しています。本レポートの分析を踏まえ、同日グリーンピースは、鹿児島県の原子力安全対策課に本レポートと、伊藤祐一郎知事宛の川内原発の再稼働同意の見直しを求める要請書(注2)を手交した他、鹿児島県の池畑憲一県議会議長に同様の要請を行いました。また、規制委の田中俊一委員長にも本レポートを送付し、再稼働審査のプロセスを再考して審査をし直すことを求めました(注3)。

 

本レポートは、英国の原子力コンサルタント、ジョン・ラージ博士(注4)に委託して作成したものです。大規模火山噴火に伴う火山灰は、原発の運転に支障を及ぼす重大なリスクをはらんでいますが、本レポートの分析によれば、規制委も九州電力も、火山灰堆積の可能性や原発施設への影響を過小評価していることが明らかです。レポートの主な論点は下記の通りです。

 

  • 規制委の定めた火山影響評価ガイドは、2012年にIAEAが定めた火山安全ガイドラインを満たしていない。IAEAガイドラインは、電力会社に対しそれぞれの原発の立地条件やあらゆるリスクに即したアセスメントを行い、大規模火山噴火時の対策を「設計基準」として取り入れることを求めているが、はっきりとした基準が示されていない規制委のガイドは「設計基準」を採用しているとはいえない。


 

  • 九州電力は桜島薩摩噴火(約1万2800万年前)だけを根拠とし、予想しうる最大の被害への対応を取っていない。例えば、原発敷地に火山灰が15センチまで積もると想定しているが、風向き等が変わった場合には30センチに及ぶ恐れがある。これは燃料取扱建屋の設計荷重を超えている。sendai_power_plant_article_thumbnail


 

  • 大規模火山噴火では火山灰が大量に降り、配電設備のショートや外部電源の喪失につながる恐れがある。東京電力福島第一原発事故と同じ外部電源喪失が起きた場合、原発の電源は非常用ディーゼル発電機に頼ることとなる。九州電力は非常用発電機を適切に維持できるとしているが、不十分である。


 

  • 原発施設に堆積した火山灰の除去について、九州電力および規制委は有効な対応策を取っていない。除去が必要な箇所は建物の屋根や道路など多岐に及ぶ。また使用済み核燃料を890トンも貯蔵する燃料取扱建屋などは、屋根崩壊のリスクをもっと考慮するべき。


 

  • アメリカの原子力規制委員会は原発から約220キロ離れた火口からの火山灰までその影響を考慮している。一方、日本の規制委と九州電力は、川内原発から約50キロの活火山・桜島からの降灰の影響と対策でさえ十分に検証しているとは言えない。


 

グリーンピース・ドイツ核問題シニアスペシャリストのショーン・バーニー︎は、「日本の原子力規制委員会の策定した新規制基準は『世界最高水準』ではありません。一方で規制委員会は、九州電力による火山のリスク対応に多くの不備があるにも関わらず、盲目的に受け入れています。規制委員会は、現在進めている再稼働審査のプロセスを保留し、火山灰のリスク評価をし直すべきです」と求めました。

 

グリーンピース・ジャパン気候変動/エネルギー担当の高田久代は、「東京電力福島第一原発事故により、今も約12万人の方が避難生活を続けています。原発事故は故郷やなりわいなど、多くのものを奪いました。大規模な火山噴火など天災は防ぐことはできませんが、原発事故は防ぐことができます。県民の安全を守るために、現在開会中の鹿児島県議会で改めて再稼働の是非を議論することを求めます」と訴えました。

 

注1)グリーンピース委託レポート『川内原発と火山灰のリスク(英題:”Implications of Tephra (Volcanic Ash) Fall-Out on the Operational Safety of the Sendai Nuclear Power Plant”)』(ジョン・H・ラージ執筆)日本語抄訳英語本編/English version

 


注2)鹿児島県の伊藤祐一郎知事、池畑憲一県議会議長宛の要請書

 


注3)原子力規制委員会の田中俊一委員長宛の要請書

 


注4)コンサルティング会社、ラージ・アンド・アソシエイツ主宰。1960年半ばから1990年代初頭まで英国原子力公社の研究に従事。IAEAや英・仏・独など各国政府ならびに米国の原子力規制委員会に対し専門的知見を提供している。

 

http://www.greenpeace.org/japan/ja/news/press/2015/pr201502261/