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川内1号機再稼働 「原発ゼロ」2年で幕 事故時の責任不明のまま(東京)

2015-08-11 18:17:04

sendaiキャプチャ

九州電力は十一日午前、川内(せんだい)原発1号機(鹿児島県薩摩川内市)の原子炉を起動し、再稼働させた。二〇一一年三月の東京電力福島第一原発事故を受け、原子力規制委員会が策定した新規制基準に基づく原発の稼働は初めて。

十四日にタービンと接続して発電・送電を始め、徐々に出力を上げて問題がなければ九月上旬にも営業運転に移る。

 国内で原発が運転されるのは、一三年九月に関西電力大飯原発(福井県おおい町)が停止して以来で、「原発ゼロ」は一年十一カ月で終わった。1号機の運転は一一年五月に定期検査で停止して以来、四年三カ月ぶり。九電は十一日午前十時半、核分裂反応を抑える制御棒の引き抜きを始め、原子炉を起動。十二時間半後の午後十一時ごろ、核分裂が連鎖的に生じる臨界に達する。

 規制委事務局は地元事務所の検査官四人に加え、応援を派遣した。約十人態勢で起動操作を監視。九電は中央制御室に通常通り運転員十二人を配置した。発電所長やメーカー社員らも集まった。

 規制委は昨年九月、川内1、2号機が「新基準を満たす」と判断。今年三月から1号機の設備を現地で確認する使用前検査を始めた。九電は七月七日から核燃料を原子炉に入れ、再稼働に向けた作業を続けた。今月七日には冷却水ポンプの振動を測る計器に異常が見つかり、部品を交換した。

 九電は一三年七月の新基準施行と同時に川内1、2号機の審査を申請。川内2号機についても、十月中旬の再稼働を目標に準備を進めている。

◆住民避難検証足りず

 <解説>事故対策が多少強化されたとはいえ、住民避難はうまくいくのか検証されず、再び重大事故が起きれば責任はだれが負うのかもあいまいなまま、九州電力川内原発が再稼働した。

 政府は「世界で最も厳しい規制基準」で審査されたと強調するが、現実には国際原子力機関(IAEA)の基準に達しているかどうか疑わしい。

 原子力規制委員会は「基準を満たせば事故は一定のレベル内に収まる」と、福島のような事態は二度と起きないかのような説明を繰り返す。しかし、その根拠は明確にされていない。懸念される火山の巨大噴火にしても、専門家の意見を聴かないまま「今後数十年の間にはないだろう」と判断。核燃料の緊急搬出策も決めずに「よし」とした。

 最終手段である住民の避難計画は形にはなったが、実効性はチェックされていない。事故時の責任の所在を明確にする仕組みや兆円単位に上る損害賠償の備えについても、国会決議で整備を約束しておきながら、何ら具体化していない。

 関西電力大飯原発(福井県)が定期検査入りした二〇一三年九月以降、原発に依存しなくても、電力をまかなっていけると、日本が自ら証明した。猛暑の今年も、全国的に安定供給が実現されている。原発は発電コストが「安い」と宣伝されてきたが、新規制基準への対応、除染を含めた事故対策、使用済み核燃料の処分、核燃料サイクル-これら原発に関連する費用を考慮すれば決して安くない。

 直近の世論調査では、六割近くの人が、審査を経た原発であっても、再稼働に「反対」と答えている。無理を重ねてまで原発を維持する必要が本当にあるのか。その疑問には何も答えないままの再稼働となった。 (山川剛史)

 

http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2015081190142332.html