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英グリーンファイナンス戦略の要(かなめ)役を担ってきたロジャー・ギフォード卿が死去。英グリーンファイナンス機構(GFI)の議長。日本にも駐在経験(RIEF)

2021-05-28 08:56:42

Gifordキャプチャ

 

  英国のグリーンファイナンス戦略の要(かなめ)となっていた英グリーンファイナンス機構(GFI)議長のロジャー・ギフォード卿が25日、骨髄腫で亡くなった。まだ65歳だった。

 

 ギフォード氏はスコットランド生まれ。ロンドンの国際金融街シティで、英投資銀行のSGウォーバーグを振り出しに、スウェーデンのSEB(エンスキルダ・スカンジナビア・バンク)の英国担当を20年以上務めた。その後、シティ・オブ・ロンドンのメイヤー(2012~13年)に選ばれるなど、生粋のシティーの紳士だった。SEB時代の1994~2000年には日本駐在を務め、日本の金融界にも知己が多い。

 

 同氏が注目されるのは、むしろ「メイヤー後」だ。英国のグリーンファイナンス分野で中心的役割を果たし、GFIを生みだし、自らその議長を務めた点だろう。同氏は、2016年にシティのグリーンファイナンス・イニシアティブの議長に就任。翌年には英政府のグリーンファイナンスタスクフォースの議長も兼ねた。

 

 タスクフォースは、英国のグリーンファイナンス戦略の立案を政府にアドバイスする役割を果たした。まさにパリ協定後、EUのフランス、ドイツ等と張り合う形で、英国のグリーンファイナンスの国家戦略立案のまとめ役を担い続けてきた。

 

 ギフォード氏が率いた政府のタスクフォースが公表した報告書は、現在、英政府が2021年度に発行する予定のグリーンボンド国債(グリーンギルド)や、グリーンファイナンス機構(GFI)の設立等を生みだした。同氏自身、GFIの議長を務め、グリーンファイナンス戦略を実践中の道半ばでの逝去となった。

 

 同氏はロンドンをグリーンファイナンスの国際ハブセンターに位置付け、シティおよび英政府のグリーンファイナンス戦略を設計してきた。並行する形で、英政府が「気候変動の次」を意識して、生物多様性・自然保全を金融・経済面から取り組む「ダスグプタ・レポート」のアドバイザリーボード・メンバーにも就任していた。「ClimateからNatureへ」とサステナブルファイナンスの視点の拡大を目指していた。

 

 一方で、シティの紳士らしく(?)、クラッシック音楽の愛好家としても知られた。夫人のクララ氏と共同でシティ・ミュージック財団を立ち上げてきたほか、英国室内楽チャリティの議長も務めた。ロンドンのセント・ポール寺院財団の評議員でもあった。シティ・メイヤー時代に、サッチャー元首相の葬儀を同寺院で行った際、メイヤーとして先導役を務めた経験もあった。

 

 英オックスフォード・サステナブルファイナンスのディレクターを務めるベン・カルダコット氏は「ギフォード氏はまさに、英国にとっても、国際的にも、グリーンファイナンスのチャンピオンだった」と評価している。Avivaの責任投資担当のスティーブ・ウェイグッド氏は「サステナブルファイナンスでの彼のリーダーシップは、世界を本当に変えてきた。彼がいなかったらGFIは存在しなかった」と惜しんでいる。