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国連支援の責任投資原則(PRI)のCEO、フィオナ・レイノルドさん、退任を発表。PRIの「中興の祖」、オーストラリアの家族との生活を優先へ(RIEF)

2021-06-08 08:54:21

PRI002キャプチャ

 

 国連支援の責任投資原則(PRI)のCEOを務めるフィオナ・レイノルド(Fiona Reynolds)氏が7日、2022年でのCEO退任を表明した。2006年に発足したPRIを、2013年から率いてきた。この間、PRIの署名機関は1000から4倍の4000を超えるまでに成長した。まさにPRIの「中興の祖」だ。だが、オーストラリア国籍で、同国在住の家族と離れて英ロンドンを中心にグローバルに活動してきたが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、家族との接触が十分にできなかったことが退任の決断につながった、と明かした。

 

 同氏によると、同日、PRIは新たな3カ年計画を発表したことを機に、CEO退任を公表したという。「これは簡単な決断ではない。PRIですべての人々とともに働き、『責任投資(RI)の旅』を共有し、よりサステナブルで、グリーンで、かつ公正な未来に向けて進むことは、明らかに私のキャリアと私の人生のハイライトとなってきた。PRIはまさに私のDNAの一部になっている」と強調した。

 

 そうしたPRIからの「卒業の決意」について、同氏は「10年近く、オーストラリアの自宅を離れて、ロンドンで過ごしたことは、個人的なレベルでいえば、深いチャレンジだった。特にコロナウイルス感染で、国境が閉鎖されるなど、多くの点でこのことはより困難になってきた。このことが私の決断を早めた」と明かした。

 

 「オーストラリアの家族と会わないままで過ごすか、あるいは家族と時を過ごすか、というトレードオフは、私にとって非常に大きな課題になっていた」。「責任投資」という投資家の行動をPRI活動を通じて支援していく一方で、長らく離れて暮らしてきた家族に対する「責任」をどう両立させるか。まさに「ワーキング・ウーマン」としての選択に悩んでいたようだ。そして同氏は、「家族」を選んだという。

 

 「もちろん」と続ける。コロナ禍でテレワークがグローバルに普及したこともあり、コロナが一服すれば、オーストラリアに戻って、テレワークを軸に、航空便での移動も活用してCEO職を続ける選択もあり得た。しかし、同氏は「そうした方法は実際には実用的でもないし、可能でもない。したがって、次の人に『責任投資』のバトンを渡す時が来たということだ」と結論付けた。

 

 同氏がPRIを率いた2013年のスタッフ数は37人。それが現在は170人を超えている。後輩たちが育っている点も、同氏の選択を促す要因になったと思われる。さらには、これまでPRIが、民間の自主的な非営利活動として、市場参加者へ続けてきた啓蒙活動は大きな成果をあげてきた一方で、サステナブルファイナンスの市場の流れは、情報開示の義務化やタクソノミーの制定等、徐々に、法的規制や義務化の方向に向かっている。4000超の署名機関を抱えるPRI自体、そうした流れの中で、新たな展開が求められているのも事実だ。

 

 新しいPRIの展開を描き、推進するには、新しいCEOに委ねたほうがいいというのがレイノルド氏の判断のようだ。同氏は「バトンをスムーズに渡す『秩序立ったトランジション(移行)』は最優先課題」として、来年1月まで現職を続け、現在のPRIの理事会や取締役会と連携しながら、次期CEOにポストを移管したいとの考えだ。

 

 PRIの理事会の議長であるマーチン・スカンケ(Martin Skancke)氏が、後任のCEOの選出の責任を負うが、すでにその調査のためのサブ委員会で調整作業に入っているという。スカンケ氏は「フィオナがCEOの座を降りるのは非常に悲しいことだ。しかし、彼女が家族と過ごしたいという思いは十分に理解できる。PRI理事会と私は、すでに後任者の選別を始めている。署名機関は、われわれが切れ目のないトランジションを果たすことを確信してもらいたい」と述べている。

 

https://www.unpri.org/pri-blog/pri-ceo-fiona-reynolds-steps-down-from-post/7793.article