HOME8.温暖化・気候変動 |損保ジャパン、気候変動の激化に対応する「適応策」として、コメ作りを対象とした「予兆保険」を実証化へ。今月から来年3月までの検証事業への参加企業、農家、自治体等を募集(RIEF) |

損保ジャパン、気候変動の激化に対応する「適応策」として、コメ作りを対象とした「予兆保険」を実証化へ。今月から来年3月までの検証事業への参加企業、農家、自治体等を募集(RIEF)

2021-11-25 17:40:41

sompo001キャプチャ

  損害保険ジャパンは、気候変動の激化によって増加する農作物被害の適応策として、AI による予測モデルで早期に検知し、被害を未然に防ぐための対策費用を保険で支払う「予兆保険」の検証事業に乗り出した。対象はコメ作り。水稲の高温障害の発生を早期予測し、被害回避の追肥事業等を生産者に促すことで、コメの収量・品質の安定化を目指す。今月から来年3月までの検証期間に参加する農家、自治体、企業等を募集している。

 

 検証事業は、損保ジャパンとグループ会社のSOMPOリスクマネジメント、電通国際情報サービス(ISID)の3社が協働する。各社の役割は、損保ジャパンが「予兆保険」を組成、SOMPOリスクは、気候リスク予測モデルの開発支援、保険組成支援、プロジェクトコーディネーション、ISIDはAIを使ったリスク検知・アラートサービスの開発を担う。

 

 3社はすでにリスク検知・アラートサービスを開発している。同サービスでは、気候変動で水稲が高温障害を起こすことを早期予測し、被害回避のため追肥の実施を農家等に促す情報を提供する。水稲の高温障害は、稲が実る時期(登熟期)の気温上昇が原因となり、収量不足と品質劣化を起こす。そこで登熟期の高温が予想される際、登熟以前の早期の段階(栄養成長期)に追肥すれ ば 、 被 害の発生を抑えられることは 農業技術として広く知られている。

 

AIを使った「予兆保険」の流れ
AIを使った「予兆保険」の流れ

 

 しかし、これまで1~2か月先の気象予想は難しかった。仮に高温予想ができても、 対策となる追肥事業の労働力の確保や費用負担は、個々の生産者に委ねられ、対策が後手に回ってきた。今回は、AIを使った気象予測で早期検知し、追肥にかかる費用を「予兆保険」で補償、さらに無人ヘリコプターやドローンによる追肥作業の代行などの対策手段の提供もサービスに含めるという。

 

 自然環境の下で行われる農業はリスクが大きく、気象の影響で農作物被害の深刻さは増大している。一方で、食の外部化(中食・外食産業の発展)に伴って、家庭用だけでなく、業務用農作物の重要性が増えている。そのため農作物にも一定の収量・品質・価格が求められており、フードチェーンの安定化が社会的な要請になっている。


 今回の3社の取り組みにはこうした背景もある。3社は昨年から、ビッグデータの取得や分析、農業IoTの開発等で共同での取組みを進めてきた。開発した「予兆保険」の提供先としては、契約農家を抱える商社や米卸売事業者を主な利用対象とするほか、生産者の直接利用も可能としている。


 来年3月にかけて実施する検証活動では、応募に参加した生産者や生産団体が営農する検証地域や、対象品種の違いを踏まえ、複数の、水稲の高温障害予測モデルの精度検証を行う。また適応事業として提供する追肥手段提供サービスについても検証する。募集するパートナー企業・自治体・研究機関については、別途、応募条件を公開している。応募等の窓口:suitou-yotyou@sompo-rc.co.jp

https://www.sompo-japan.co.jp/-/media/SJNK/files/news/2021/20211117_1.pdf?la=ja-JP