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英大手資産運用会社のマン・グループは「不人気の市場を選好」として日本株の上昇を予想
2011-04-11 13:09:27
マン・インベストメンツ・オルタナティブ・ニュースの3月号に掲載された同グループ傘下のGLG日本株チームのロバード・ブルック氏による日本株分析。多くの東証上場企業の株価純資産倍率(PBR)が1倍以上になっていることを指摘。
PBRが1倍を下回るということは、株価が企業の資産価値を下回っているということなので、「たとえその企業に将来性がなく死に体同然であるとしても、株価は理論的には純資産を若干下回る資産清算価値と同等であるはず」と指摘する。同氏の見立てでは東証上場企業の少なくとも40%、おそらくは60%が1以下になっているという。したがって、それらの企業株は破たんしても、利ザヤを稼げるということになる。いわゆる究極の逆張りの発想だ。
ただ、債務超過で清算価値がマイナスだと、株主への配分は得られない。東京電力のように、膨大な賠償責任と廃炉・復旧コストを抱えた場合、この見方の対象になるかどうかは、ブルック氏は明言していない。
以下は引用です。
<不人気の市場を選好>
<日本は大半の投資家が考えるよりも魅力的>
1973‐74年の世界的な弱気相場の後、日本では長期的な強気相場が続きました。これが頂点に達したのは1980年代後半のバブル期で、当時、日本は時価総額で一時米国を抜き世界最大の証券取引所を擁する国になりました。1980年代における日本株の年間リターンは28.7%に達しました。重力に逆らうようなこうした株価の上昇は、世紀の変わり目に他の先進市場を襲った技術・メディア・通信(TMT)ブームの先駆けとなるものでした。
1990年代初頭以降20年間にわたり、日本経済は生涯に一度ともいえる信用サイクルに突入しました。これにより、(円ベースで)大規模な構造的弱気相場が引き起こされ、株価の下落が続く中、投資家は株式へのエクスポージャーを徐々に縮小させていきました。
株式市場でこのように圧倒的な下落傾向が20年にわたり続くのは極めて異例なことです。というのも、定義に従えば、構造的な下落は需給の不均衡に付随するものであり、需給不均衡は最終的には反転地点に達するためです。実際、直近では金(1980‐2000年)がこうした驚異的な弱気相場に見舞われました。過去の金価格チャートでは、新たな上昇トレンドが確立してしばらくたってから、まとまった買いがようやく入り始めたことが示されています。
ジョン・テンプルトン卿の言葉の通り、「強気相場は悲観の中で生まれ、懐疑と共に育ちます」。結局のところ、単に人気がないという理由で特定の市場や資産クラスを無視するのは、客観性に欠ける行為といえます。現在、金の強気相場が揺るぎないものとなっている中で、日本株は究極的な逆張り投資となり得ます。
<円の昇る国>
ここ数年にわたり、日本はいわゆる円のキャリートレードを活用しようとする投資家にとって関心の対象となってきました。キャリートレードでは、低利の円で調達した資金を高利回りの他の地域で運用します。日銀が1995年以降実施してきた超低金利政策は、国内経済の刺激という点では概ね効果を発揮しませんでしたが、これまでで最大級のキャリートレードを事実上促進する結果になっています。
円のキャリートレードは金融危機の初期に解消され始め、2007年中ごろから2010年11月までの期間に円は対米ドルで35%以上上昇しました。為替市場における円の変動の影響を受け、為替レート調整後の日本株のパフォーマンスは1990年後半以降、他の先進市場とほぼ同等となっています。実際、2008年の金融市場のメルトダウン期間に日本株は大幅にアウトパフォームし、ポートフォリオの分散化対象としての潜在価値を発揮しました。ところが、投資家は日経平均株価が過去最高値から70%以上下落した水準にあるという事実に気を取られているため、こうした考え方はいずれも概ね評価されていないのが実情です。
過去20年間において夜明け前の光が射しかけたことは幾度となくありましたが、日本の株式市場がようやく長期にわたり上昇し始めると考えるには、れっきとした理由があります。最も基本的な理由は日本株が割安なことです。
最近の分析によれば、東京証券取引所の上場企業の少なくとも40%、おそらくは60%は株価純資産倍率(PBR)が1倍以下になっています。PBRが1倍を下回るということは、株価が企業資産価値を下回っているということです。たとえ企業に将来性がなく死に体同然であるとしても、株価は理論的には純資産を若干下回る資産清算価値と同等であるはずです。
有効なビジネスモデルと競争上の優位性を持つ既存の大手企業は、継続企業としてみなされるべきであり、それゆえ株価は純資産価格に対して大幅なプレミアムとなります。例えば、S&P500指数構成銘柄の過去30年間の平均PBRは2.4倍です。
欧米企業の財務内容とは極めて対照的に、日本企業は長年にわたり債務の返済と現金の蓄積に重点を置いてきました。その結果、特に市場が圧力に見舞われた期間には、健全なバランスシートが大きな強みとなっています。例えば、2008年に金融危機の余波を受けてゼネラル・モーターズが破産申請を行いました。これと同時期に、トヨタはその輝かしい歴史の中で初の営業損失を計上しましたが、深刻な構造的困難に遭遇することはありませんでした。このことは、日本企業と欧米企業の財務の堅牢性の差異を端的に示しています。また、これは日本で信用創出の見通しが十分にある時期に、なぜ欧米企業が現金を蓄積しようとしているのかを説明するのにも役立っています。
<日本の回復の可能性に乗じる>
日本市場に資金を配分する主な理由は、基本的に割安なバリュエーションを活用する機会があることです。また、これと関連する根拠としては、他の先進国がピークに達した直後に日本では生涯に一度ともいえる信用サイクルの底に達したことが挙げられます。そうした意味では、日本の株式市場の動きは1990年代の「根拠なき熱狂」とそれに続く長期的な低迷を事実上、先取りしたものであった点に留意することも重要です。
今後、回復の過程では市場の大幅な変動と景気循環に対抗するトレンドが特徴となることが予想されます。その結果、日本株のバリュエーションのアノマリーを活用することに焦点を当てたアクティブ運用が、パッシブ運用よりも中長期的に高いパフォーマンスを上げる可能性が高いと考えられます。
PBRが1倍を下回るということは、株価が企業の資産価値を下回っているということなので、「たとえその企業に将来性がなく死に体同然であるとしても、株価は理論的には純資産を若干下回る資産清算価値と同等であるはず」と指摘する。同氏の見立てでは東証上場企業の少なくとも40%、おそらくは60%が1以下になっているという。したがって、それらの企業株は破たんしても、利ザヤを稼げるということになる。いわゆる究極の逆張りの発想だ。
ただ、債務超過で清算価値がマイナスだと、株主への配分は得られない。東京電力のように、膨大な賠償責任と廃炉・復旧コストを抱えた場合、この見方の対象になるかどうかは、ブルック氏は明言していない。
以下は引用です。
<不人気の市場を選好>
<日本は大半の投資家が考えるよりも魅力的>
1973‐74年の世界的な弱気相場の後、日本では長期的な強気相場が続きました。これが頂点に達したのは1980年代後半のバブル期で、当時、日本は時価総額で一時米国を抜き世界最大の証券取引所を擁する国になりました。1980年代における日本株の年間リターンは28.7%に達しました。重力に逆らうようなこうした株価の上昇は、世紀の変わり目に他の先進市場を襲った技術・メディア・通信(TMT)ブームの先駆けとなるものでした。
1990年代初頭以降20年間にわたり、日本経済は生涯に一度ともいえる信用サイクルに突入しました。これにより、(円ベースで)大規模な構造的弱気相場が引き起こされ、株価の下落が続く中、投資家は株式へのエクスポージャーを徐々に縮小させていきました。
株式市場でこのように圧倒的な下落傾向が20年にわたり続くのは極めて異例なことです。というのも、定義に従えば、構造的な下落は需給の不均衡に付随するものであり、需給不均衡は最終的には反転地点に達するためです。実際、直近では金(1980‐2000年)がこうした驚異的な弱気相場に見舞われました。過去の金価格チャートでは、新たな上昇トレンドが確立してしばらくたってから、まとまった買いがようやく入り始めたことが示されています。
ジョン・テンプルトン卿の言葉の通り、「強気相場は悲観の中で生まれ、懐疑と共に育ちます」。結局のところ、単に人気がないという理由で特定の市場や資産クラスを無視するのは、客観性に欠ける行為といえます。現在、金の強気相場が揺るぎないものとなっている中で、日本株は究極的な逆張り投資となり得ます。
<円の昇る国>
ここ数年にわたり、日本はいわゆる円のキャリートレードを活用しようとする投資家にとって関心の対象となってきました。キャリートレードでは、低利の円で調達した資金を高利回りの他の地域で運用します。日銀が1995年以降実施してきた超低金利政策は、国内経済の刺激という点では概ね効果を発揮しませんでしたが、これまでで最大級のキャリートレードを事実上促進する結果になっています。
円のキャリートレードは金融危機の初期に解消され始め、2007年中ごろから2010年11月までの期間に円は対米ドルで35%以上上昇しました。為替市場における円の変動の影響を受け、為替レート調整後の日本株のパフォーマンスは1990年後半以降、他の先進市場とほぼ同等となっています。実際、2008年の金融市場のメルトダウン期間に日本株は大幅にアウトパフォームし、ポートフォリオの分散化対象としての潜在価値を発揮しました。ところが、投資家は日経平均株価が過去最高値から70%以上下落した水準にあるという事実に気を取られているため、こうした考え方はいずれも概ね評価されていないのが実情です。
過去20年間において夜明け前の光が射しかけたことは幾度となくありましたが、日本の株式市場がようやく長期にわたり上昇し始めると考えるには、れっきとした理由があります。最も基本的な理由は日本株が割安なことです。
最近の分析によれば、東京証券取引所の上場企業の少なくとも40%、おそらくは60%は株価純資産倍率(PBR)が1倍以下になっています。PBRが1倍を下回るということは、株価が企業資産価値を下回っているということです。たとえ企業に将来性がなく死に体同然であるとしても、株価は理論的には純資産を若干下回る資産清算価値と同等であるはずです。
有効なビジネスモデルと競争上の優位性を持つ既存の大手企業は、継続企業としてみなされるべきであり、それゆえ株価は純資産価格に対して大幅なプレミアムとなります。例えば、S&P500指数構成銘柄の過去30年間の平均PBRは2.4倍です。
欧米企業の財務内容とは極めて対照的に、日本企業は長年にわたり債務の返済と現金の蓄積に重点を置いてきました。その結果、特に市場が圧力に見舞われた期間には、健全なバランスシートが大きな強みとなっています。例えば、2008年に金融危機の余波を受けてゼネラル・モーターズが破産申請を行いました。これと同時期に、トヨタはその輝かしい歴史の中で初の営業損失を計上しましたが、深刻な構造的困難に遭遇することはありませんでした。このことは、日本企業と欧米企業の財務の堅牢性の差異を端的に示しています。また、これは日本で信用創出の見通しが十分にある時期に、なぜ欧米企業が現金を蓄積しようとしているのかを説明するのにも役立っています。
<日本の回復の可能性に乗じる>
日本市場に資金を配分する主な理由は、基本的に割安なバリュエーションを活用する機会があることです。また、これと関連する根拠としては、他の先進国がピークに達した直後に日本では生涯に一度ともいえる信用サイクルの底に達したことが挙げられます。そうした意味では、日本の株式市場の動きは1990年代の「根拠なき熱狂」とそれに続く長期的な低迷を事実上、先取りしたものであった点に留意することも重要です。
今後、回復の過程では市場の大幅な変動と景気循環に対抗するトレンドが特徴となることが予想されます。その結果、日本株のバリュエーションのアノマリーを活用することに焦点を当てたアクティブ運用が、パッシブ運用よりも中長期的に高いパフォーマンスを上げる可能性が高いと考えられます。