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金融庁、ソーシャルボンドガイドライン公表。国際資本市場協会の原則を、なぞる内容。環境、経産の両省と分野調整完了。「ESGウォッシュ」のモニタリング体制等は不明(RIEF)

2021-10-27 13:58:53

FSA001キャプチャ

 

 金融庁は26日、ソーシャルボンドガイドラインを公表した。民間金融機関で組織する国際資本市場協会(ICMA)がすでに制定しているソーシャルボンド原則(SBP)とほぼ同じ内容。ESG分野の資金調達とするESG債の日本版「基準」は、グリーンボンドが環境省、トランジションボンドが経済産業省、ソーシャルボンドが金融庁と、各役所が所管ごとに仕分けする体制となった。EUの取り組みとは異なり、いずれも法令に基づかない行政指導でしかない。

 

 ガイドラインでは、国連の持続可能な開発目標(SDGs)の達成に向け、民間企業の取り組みが期待されることや、民間企業自身も、自らの経営課題や戦略としてこれらの取り組みへ の関心が高まっているとし、「社会的課題の解決を通じてSDGsの達成に資するものとして、民間企業によるソーシャルボンドの発行及びこれを通じたソーシャルプロジェクトの実施を促進していくことが重要」としている。

 

 つまり「ソーシャルボンドはSDGsの目標達成のための資金調達」という位置づけだ。ただ、この点は同ガイドラインが「お手本」とするICMAのSBPにはない。このため海外から疑問のコメントが示されたことから金融庁は原案に「日本証券業協会が、グリー ンボンド、ソーシャルボンド等を『SDGs債』と呼称している」との注記を加えた。「ソーシャルボンド=SDGs債」の評価は「日本流」と認めた形だ。

 

 この点の微修正以外は、民間のICMAによるSBPが定める①プロジェクトの評価及び選定のプロセス③調達資金の管理④レポーティング、の4項目を軸とした記述の「翻訳」に、日本語で解説を加える内容になっている。その内容は、いずれもすでにESG債を発行している発行体企業や、機関投資家等にとって目新しい点はないと思われる。

 

 民間団体等がまとめた基準を、政府がコピーして翻訳し、国内基準とする取り組みは、中国やASEAN諸国等でもある程度、実施している。これに対して欧米の先進国では、EUの場合、市場ベースの基準の「甘さ」がグリーンウォッシングの要因の一つになるとの懸念から、監督当局が基準の厳格化や客観化を進め、第三者評価にも登録制等を採用、モニタリング等を強化する仕組みづくりを目指している。

 

 一方、米国は市場の自主基準を尊重する姿勢が基本だ。だが、市場の評価に幅のあるESGを投資対象としたボンドやファンド等での「ウォッシュ度」が目立つため、証券取引委員会(SEC)は関連情報開示の強化に加えて、金融商品のESG適合性の取り締まり(Enforcement)強化を打ち出している。

 

 日本の場合、今回のソーシャルボンドガイドラインで、ICMAのESG債ガイドラインを3省庁間で分担して「コピー」し合う体制を築いた一方で、投資家保護のために「ESGウォッシュ」を防ぐ監督モニタリング体制、市場評価のセカンドオピニオンの品質維持等の政策等での政策的取り組みの方向感は見えていない。

https://www.fsa.go.jp/news/r3/singi/20211026-2/01.pdf

https://www.fsa.go.jp/news/r3/singi/20211026-2/06.pdf