HOME |東京都、「国際金融都市・東京」構想2.0を公表。グリーンファイナンスの推進、金融のデジタル化促進、多様な金融プレイヤーの集積を3本柱に据える(RIEF) |

東京都、「国際金融都市・東京」構想2.0を公表。グリーンファイナンスの推進、金融のデジタル化促進、多様な金融プレイヤーの集積を3本柱に据える(RIEF)

2021-11-02 15:38:11

tokyouto003キャプチャ

 

 東京都は1日、「国際金融都市・東京」構想2.0を公表した。2017年に策定した現行構想を4年ぶりに改定したもので、グローバルな金融をめぐる環境変化や東京自体が直面する課題を踏まえ、①グリーンファイナンスの推進②金融のデジタライゼーション③多様な金融関連プレーヤーの集積、を3本柱として施策展開を推進するとしている。

 

 「2.0構想」は「サステナブル・リカバリーを実現し、 世界をリードする国際金融都市へ」を副題に掲げた。世界第3位の経済規模や約1900兆円の個人金融資産、都市の総合力の高さ、政治的安定性等を「東京の強み」とし、日本国内の資金需要と資金供給力を背景に、ア ジアの金融ハブとして国内外の資金を結びつけるインベストメント・チェーンの構築を目指す、としている。

 

 3本の具体策のうち、「グリーンファイナンスの推進」では、投資先企業のESG情報開示の促進のため、ESG情報プラットフォームの整備のほか、グリーンボンド発行体への外部レビュー費用軽減等の支援、グリーンボンド市場育成のため「アンカー発行体」としての東京都のプレゼンス向上等を打ち出している。

 

 「金融のデジタライゼーション」ではフィンテックの活用等によって、「金融」と「非金融」の融合を進め、円滑な資金の流れを強化するとしている。ポスト・コロナ下では、 「非対面」や「非接触」サービスへの移行ニーズが高まると予想している。

 

 「多様な金融関連プレーヤーの集積」では、ニューヨーク、ロンドン並みの人材の集積を目指すため、資産運用業、フィンテック企業について国内での起業・成長支援策を強めるほか、データセンター、決済、情報セキュリティ、調査研究機関などの資産運用業をめぐる周辺産業の育成も重視する姿勢を示している。

 

 こうした構想の具体策の一環として、海外のグリーンファイナンスやフィンテック企業を東京に誘致する支援制度もすでに始めた。海外のスタートアップ企業等が都内に拠点を設立する際に必要となる初期費用や、専門機関等コンサルティング費、オフィス賃料等に充当する費用を1社最大5000万円を供与する仕組みだ(5社まで)。https://rief-jp.org/ct6/119171

 

 支援制度の対象事業は資産運用業の場合、①グリーン分野の企業等への投資②グリーンボンド組成支援③ESG開示効率化事業等で、フィンテック企業の場合は、①ESG/インパクト分析②ESG/インパクトIndexの提供③クリーンテク技術やアグリテク技術等のグリーンテクノロジーツールの提供企業等としている。

 

 「構想2.0」が分析するように、日本は世界第3位の経済規模や豊富な個人金融資産等の「強み」を持つ。だが、国際金融センターとしての掛け声が過去30年も40年も続く一方で、「強み」が生かされている気配はあまり感じられない。アジアでも長年、香港、シンガポールの後塵を拝して久しい。

 

 今回の東京都の改定構想は、そうした従来の環境を打破すべく、グリーンファイナンス等の新たな潮流を重視する内容になっている。ただ、英シンクタンクが定期的に発表する「グローバルグリーンファイナンスインデックス」調査の最新版では、東京は前回のアジアトップ(13位)から、22位へと大きく下がり、アジアでも北京、上海、ソウル、シンガポールに抜かれて5番目と低迷していることが示されている。https://rief-jp.org/ct6/119343?ctid=69

 

 「東京の強み」を強調するだけではなく、「東京に欠けているもの」「東京の弱点」をしっかり把握して、それらを克服する対策を市場に示さない限り、「構想」を何度バージョンアップしても、内外の市場資金が集積することは容易ではないように思われるが、どうか。

 

https://www.seisakukikaku.metro.tokyo.lg.jp/pgs/gfct/vision/