気候変動等の情報開示を評価するCDPの2021年「Aリスト企業」は約3割減の200社に縮小。基準厳格化が響く。水、森林を含む3部門での「トリプルA」企業は花王等14社に増加(RIEF)
2021-12-08 17:45:40
気候変動情報開示を評価する自主団体CDPは、2021年のAリストを公表した。気候変動、森林、水セキュリティの3分野で最上位格付のAを得た企業数はグローバルに272社。このうち3分野すべてでAを獲得した「トリプルA」企業は14社。気候部門でのA企業は評価基準を強化したことから、昨年の280社から200社に約3割減った。この中には、ゴールドマンサックス、 Bank of America、Northern Trust等の米銀大手が含まれている。
CDPは企業に対して情報開示に関する質問状を送付し、その回答の環境パフォーマンスを評価してA~Dの格付を付与している。今回、グローバルに約12000社の回答を得た。A評価を得た企業全体の時価総額は12兆㌦に達する。2021年の情報開示では13000社以上がCDPの評価を通して情報開示を実施している。
ただ、時価総額21兆㌦に及ぶ約17000社は開示に応じていないという。その中には、エクソンモービルやシェブロン、バークシャーハサウェイ、グレンコアなどの「大物企業」が入っている。
今回の評価では、水セキュリティ部門のAリスト企業数は106社から118社に増え、森林部門も16社から24社に増えた。その半面でメインである気候部門のAリスト企業は、昨年の280社から200社に大きく減少したことが目に付く。
気候部門でのA評価企業の減少は、CDPが評価基準を引き上げた影響が大きい。 CDPによると、強化した評価基準に基づいて気候分野でA評価を得るためには、①健全な気候ガバナンスと気候課題の監視体制②厳格なリスクマネジメントプロセス③検証付きのスコープ1~2と、バリューチェーン全体での排出削減等が明確でなければならないという。SBTイニシアティブによる承認も必要事項だ。
これらの基準の厳格化の影響で、3分野を含めて145企業がAランクから脱落した。その中に、ゴールドマンサックスやBank of America等の米銀大手が含まれたわけだ。気候部門でAランク落ちの金融機関はそれ以外に、スイス再保険、モルガンスタンレーも含まれる。金融以外ではグーグルの親会社のAlphabet、アップル、ブリティッシュタバコ、GM等も格下げ組だ。日本の金融機関でA評価を維持したのはMS&ADインシュアランスホールディングスグループと野村ホールディングの2社。
日本勢でAリスト入りした企業は、気候部門で55社、水部門で36社、森林部門は花王と不二製油グループの2社となっている。
一方で、3分野でAランクを獲得したトリプル企業は前年の10社から14社に増えた。この中には日本の花王、不二製油のほか、ロレアル、ユニリーバ、HP等が名を連ねた。