英広告基準機構(ASA)。独航空大手ルフトハンザのキャンペーン広告を「グリーンウォッシュ」と摘発。「航空機の環境影響を消費者に誤解させる」。日本の広告も調査して下さい(RIEF)
2023-03-05 16:45:31
英広告基準機構(ASA)は航空大手の独ルフトハンザが展開するキャンペーン広告が、同社の航空機が地球温暖化に対するインパクトが少ないかのような印象を消費者に与える可能性があるとして、調査を開始した。問題の広告は、同社の機体を前から見た写真の下半分に「Connecting the world. Protecting its future(世界をつなぎ、その未来を守る)」とのキャッチコピーが付されている。ASAは「航空機の環境インパクトについて消費者を誤解させる」と指摘している。
ASAは2021年9月に、企業による製品・サービスの広告に、根拠のない「グリーン性」を強調したり、消費者の誤解を招くような表現をすることの取り締まり強化を宣言。これまでに植物ミルクのOatley、紅茶のLipton、ユニリーバの洗濯洗剤「パージル」、金融のHSBCやエネルギーのShell、Esso等がやり玉にあがっている。欧州ではEUも「グリーンウォッシュ広告」の摘発に力を入れている。
今回のルフトハンザのキャンペーン広告について、ASAは「同社の『グリーンイニシアティブ』は世界を守っている」との印象を消費者に与えると指摘した。しかし、実際には航空機から排出されるCO2は地球温暖化を加速化させる要因の一つであり、航空機の排ガス対策は十分に進んでいないのが現状だ。
ASAの指摘に対して、ルフトハンザ側は「広告の表現は、2050年ネットゼロ、30年半減を掲げる同社の温暖化対策目標を含めての希望(aspiration)を示したもの。(読み手の)自由な解釈に委ねており、消費者は広告を見ても、『航空機が地球環境を害さない』とか『(地球を守ることが)同社による完全な約束(absolute promise)』とは考えないと思う」と反論した。
さらに今回の広告は同社が展開する環境キャンペーンサイト「Make Change FLY」のサイトへのリンクを含んでおり、そちらにアクセスすると、航空機からの環境インパクトを削減する必要性や、同社がそのために取り組んでいることに人々は気付く仕組みだと説明した。だが、ASAは「広告を見た消費者は、ルフトハンザは自らの環境インパクトを削減するため、すでに重要な削減対策を実施していると考えそうだ」との見方を変えなかった。
ASAは、各航空会社が航空機からのCO2排出量削減のために、サステナブル代替燃料(SAF)の利用や航空機の省エネ化等の取り組みをしていることを理解しているとしたうえで、「これらの多くのイニシアティブは(今ではなく)何年も後、あるいは数十年後の将来の達成を目指しているもの」とし、それを今、強調することは、消費者の誤解を招くとした。
ASAの苦情・調査担当局長のMiles Lockwood氏は「気候変動や環境問題は、われわれの時代のカギとなる長期的な課題。高炭素排出産業を対象とする広告会社は、明確な証拠によって立証できない限り、対象企業のグリーン性の信頼度や計画について、消費者を誤解させるような表現を盛り込むべきではない」として、広告業界の倫理観の向上を求めている。
これらのASAの指摘は、日本の広告市場にあふれるグリーン、サステナビリティ、ESG、SDGs等への「貢献」をうたった多くの広告にも通じる。民間企業の製品・サービスに限らず、政府の「グリーン・トランスフォーメーション(GX)」キャンペーン等も、あたかも高炭素排出企業の「脱炭素化移行」がスムーズに実現可能なようにアピールし、膨大な予算を配分しようとしており、消費者、国民に「誤解を生じさせる」可能性が高い。ASAに厳格に調べてもらいたい。
https://www.asa.org.uk/advice-and-resources.html
https://www.theguardian.com/business/2023/mar/01/airline-green-adverts-banned-uk-lufthansa-asa