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味の素、同社初のサステナビリティ・リンク・ボンド(SLB)。2本で300億円。SPTにスコープ3削減目標も。過去の排出削減比と他社比較で評価会社から「野心的」との評価(RIEF)

2023-05-19 22:28:00

Aji001キャプチャ

 

  味の素は19日、同社として初となるサステナビリティ・リンク・ボンド(SLB)300億円を6月以降に発行すると発表した。5年物と10年物の2本。SLBのサステナビリティ改善目標となる重要業績指標(KPI)には、いずれも温室効果ガス(GHG)排出量のスコープ1~2と同3を選び、それぞれの削減目標を設定したサステナビリティ・パフォーマンス・ターゲット(SPT)については、評価会社のSustainalyticsから過去の排出削減比と、同業他社比でともに野心的として、高い評価を得た。Scope3排出量削減の目標設定がSLBの基本形になる期待がある。

 

 食品会社である味の素は、今年2月に発表した「中期ASV経営 2030ロードマップ」で「アミノサイエンス®で人・ 社会・地球のWell-beingに貢献する」を「志(パーパス)」と定め、2030年までに、GHG排出削減等の「環境負荷50%削減」と「10億人の健康寿命を延伸」のアウトカムを、ともに実現することを掲げている。

 

 今回のSLBはその一環としてGHG削減を進めるもの。目標となるSPTは、5年債ではSPT1としてScope1~2(排出絶対量)を36%削減(2018年度比)、SPT2としてScope3(排出量原単位)を10%削減(同)を掲げた。判定年限はいずれも2027年11月(4年5か月後)。10年債のほうは、SPT1が50 %削減、SPT2が24%削減で、判定年限は2031年10月末(9年5カ月後)とした。

 

 いずれかの目標を達成できない場合は、判定日後から社債の償還までにカーボンクレジットを市場から購入する。購入額はSPT1未達の場合は、社債発行額の0.1%相当額の10 分の5、SPT2未達の場合は、同0.1%相当額の10分の5と設定している。

 

 設定されたSPTの妥当性を評価したSustainalyticsは、同社のScope1~2排出絶対量が2018年度から2021年度の間に年平均で5.9%減少している点を踏まえ、SPT1の達成には、今後、2030年までに同排出量の50%削減が必要で、そのためには引き続き年平均約4.2%の削減ペースを維持する必要がある、と指摘。Scope3は、同期間に年平均2.6%増加しており、SPT2の達成には、30年度までに排出量原単位を24%削減(2018年度比)が必要で、そのため年平均約2%の削減ペースとしなければならない、と指摘。

 

 SPT1は同社の過去のパフォーマンス実績と同水準の削減を継続する必要があり、SPT2は過去のパフォーマンス実績を上回る削減になる点と、両方とも同業他社の設定目標を相対的に上回るとして、SPT1には4段階評価で最上位の「Higyly Ambitious」、SPT2は二番目に高い「Ambitious」の評価を付した。

 

 日本で発行されるSLBには、これまでKPIが当該企業のマテリアリティを反映していないケースや、SPT水準があいまいな事例が少なくなかった。それでも評価機関によって大半に最上位の評価を付与されるなど、SLBの商品性に疑問が残るものがあった。味の素の評価の場合、グローバルな食品会社間の横比較を踏まえた形で、投資家にとってもわかり易い内容といえそうだ。

 

 主幹事は5年債が、野村證券、みずほ証券、三菱UFJモルガン・スタンレー証券、大和証券の4金融機関。10年債が野村以下3機関は同じで、大和証券の代わりにSMBC日興証券が入った。ストラクチャリング・エージェントは野村が務めた。

https://www.ajinomoto.co.jp/company/jp/presscenter_topics/2023_05_19.pdf?1684488235451

ajinomoto-co-inc-sustainability-linked-financing-framework-second-party-opinion-(2023)-japanese50485818-e3cd-4ad0-8713-b920aa61cf28.pdf (mstar-sustops-cdn-mainwebsite-s3.s3.amazonaws.com)