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カーボンクレジットのスタートアップ「Green Carbon」(東京)。フィリピンで稲作に「間断灌漑(AWD)」導入でのメタン削減からクレジット創出事業拡大へ。JETROが支援(RIEF)

2023-08-23 15:35:23

AWD001キャプチャ

 

 カーボンクレジットのスタートアップ、Green Carbon(東京)は、フィリピン大学と連携して同国内で実施している水田での間断灌漑(Alternate wetting and drying:AWD)によるメタンガスの排出削減で、カーボンクレジットを創出する実証事業が、日本貿易振興機構(JETRO)の支援事業に採択されたと発表した。これを受けて、11月から事業の対象水田を1000haに拡大する。さらに2024年までに10倍の1万haに拡大、同手法の現地での普及を促進する。

 

 AWD事業は水田の中干し作業と似ているが異なる。中干し作業は、水稲の栽培期間中、出穂の前に一度、水田の水を抜いて地面を乾かすことを行うことをいう。これにより、水稲の根元からの枝分かれ等を防ぎ、成長を制御し、実りを豊かにできる。J-クレジットでは同作業を一定期間延長することで、土壌からのメタン(CH4)の排出量抑制を促し、クレジットの創出を認めている。https://rief-jp.org/ct4/134359?ctid=

 

水田の灌漑管理が重要
水田の灌漑管理が重要

 

 これに対してAWDは、水田の水位を目安に、数日おきに入水と自然乾燥を繰り返すという手法をとる。こうした作業により、水田の土壌中のメタン生成菌の活動を抑制する。中干しに比べ、管理上の手間がかかるが、水の使用量を減らすことができる。

 

 Green Carbonは2023年1月からフィリピン大学と連携し、フィリピンのブラカン州において作業を進めている。7月22日からは農地約20haを使って、AWD事業の実証事業を展開している。同大学は同国内でのAWD実践のノウハウが豊富で、その経験を活用するとともに、Green Carbonが開発した、カーボンクレジット創出をオンライン上でワンストップで実現するサービス「Agreen」を連携させ、新たにクレジット創出支援を実践している。

 

 フィリピンは水田を中心とした農業から年間6000t-CO2eのGHGを排出している。同国は2030年までにその75%に相当する4500t-CO2eの削減目標に掲げている。その目標達成に向けて、フィリピン全土の水田から排出されるメタンガスを抑制することで、削減目標の半分の約2405万tのCO2を削減できるポテンシャルがあるという。

 

 フィリピンの農家は伝統的に低収入に悩んでいるが、従来からの米作収入に加えて、クレジット売却収入を得られれば、農業地域の活性化につながることが期待される。創出したクレジットは同国内外の企業に売却し、脱炭素化に資する。

 

 JETROは同事業を「日ASEANにおけるアジアDX促進事業」として採択、支援を決めた。同施策は、日本とASEANが一体となってデジタルイノベーションの社会実装と、ASEANの経済産業協力関係の強化を目的とする制度だ。事業を推進するGreen Carbonのクレジット創出の専門性やこれまでの海外事業での実績、先進的なプラットフォームの運営等を評価して支援対象とした。

 

   同社は、日本国内でも、Natural Capital(福岡市)が設立した「ナチュラルキャピタルクレジット・コンソーシアム(NCCC)」と連携し、「カーボンクレジット共創プラットフォーム稲作コンソーシアム」を運営しており、「Agreen」はそのエンジンとして機能している。

 http://green-carbon.co.jp/jetro/

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000022.000117956.html