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日本ガイシ。スタートアップのSustechと共同で、自社開発のNAS電池を活用する蓄電事業に進出。2024年度中に開始。企業の脱炭素需要増大による再エネ電力の安定供給を収益化(RIEF)

2023-09-13 12:46:49

NASキャプチャ

 

 日本ガイシは13日、脱炭素関連のシステム開発のスタートアップ、Sustech(サステック、東京)と共同で、大容量蓄電事業に乗り出すと発表した。日本ガイシが自社で開発する大容量蓄電池「NAS電池」を送電網に直接接続する「系統用蓄電所」を、国内に設置する。蓄電所は、Sustechが開発する電力運用プラットフォームを用いて運用し、2024年度中に運転を開始するとしている。日本ガイシはこれまで、電力会社等に蓄電池を供給してきたが、企業の脱炭素需要の高まりを受け、自ら蓄電池事業を展開し、同事業を収益の柱とする方針だ。

 

 日本ガイシは、世界で初めて大容量のメガワット級の大容量のNAS電池の開発に成功している。同電池は鉛蓄電池の約3分の1のサイズで、大容量、高エネルギー密度(コンパクト)、長寿命化の特徴を持つ。

 

 電池の負極(マイナス極)にナトリウム(Na)、正極(プラス極)に硫黄(S)、両電極を隔てる電解質にファインセラミックスを用いることで、硫黄とナトリウムイオンの化学反応で充放電を繰り返す仕組みだ。高出力の電力を長時間、安定して供給できる強みがある。再エネは、自然条件によって発電量が変動するため、同電池を利用することで、安定的な供給が可能になるほか、電力負荷平準によるピークカットや非常電源用途にも適用できる。

 

gaishi002キャプチャ

 

 Sustechが提供するプラットフォームELIC(エリック)は、AIを活用して再エネや蓄電池などの分散型電源の管理・運用を複合支援する。太陽光発電の発電量の予測精度が高いとされる。プラットフォームは発電された再エネを管理し、自家消費や余剰電力の売電、環境価値の市場取引を行うとともに、蓄電池との組み合わせで、電力の安定供給に資する。

 

 共同で開発する蓄電所では、プラットフォームを提供するサステックが蓄電所の運用を担当し、日本ガイシはNAS電池の提供とともに、電池の保守・点検事業等を担う。蓄電所の設置場所や規模などは今後詰めるとしている。

 

 蓄電事業としては、卸電力市場に安定的に電力を供給するほか、電力の供給力を売買する「容量市場」、さらに電力の需給を調整して報酬を得る「需給調整市場」での取引等を通じて収益化することを目指す。

 

 日本ガイシはこれまで、NAS電池を再エネ発電を軸とする新電力会社や、企業の自家発電等の需要に供給してきた。同電池は、約6時間の連続充放電が可能で、耐久年数も約15年と長い点が、再エネ電力事業に適応してきた。直近ではサーラコーポレーション子会社のサーラエナジー(愛知県豊橋市)をはじめ、世界で約250カ所への納入実績があるとしている。

 

 日本ガイシが自ら自社開発の蓄電池を活用して蓄電事業に参入するのは今回が初めてだ。同社はセラミック技術に強みがあり、これまで自動車の排ガス浄化装置等を主力事業としてきたが、自動車業界はが内燃機関車から電動車に転換する方向で、排ガス浄化装置等の需要減が見込まれる。こうしたことから、自社開発のNAS電池を生かして電力の安定供給サービスを新たな収益源に育てたいとしている。

https://www.ngk.co.jp/news/2023/20230913_1.pdf

https://www.ngk.co.jp/product/nas-about.html