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初の中国製風力発電タービンを採用したウェンティ等による富山・入善町での風力発電事業稼働。経済コストで欧州勢より安く、性能等で変わらない中国製タービンが日本市場を席巻するか(RIEF)

2023-10-21 22:08:32

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写真は、発電を開始した富山・入善町の3基の風車)

 

  ウェンティ・ジャパン(秋田市)とJFEエンジニアリング、北陸電力が共同で開発を進めていた富山湾の入善町沖合での洋上風力発電所が稼働した。同発電所は、民間資金だけによる一般海域での洋上風力発電としては初めての稼働となる。総事業費は約61億円。一基3000kW級の発電タービン3基で構成する。同タービンは中国の風力発電大手の明陽智慧能源集団(明陽智能)が開発した設備を、日本で初めて採用したことでも話題を集めていた。

 

 ウェンティが中心になって事業会社「入善マリンウィンド合同会社」を設立、水深約10~12mの海域に、着床式での風力発電設備を建設する開発事業を推進してきた。今年3月に、JFEと北陸電力が同合同会社に共同出資の形で参加し、3社事業となっている。風車の建設工事は2022年10月から進めていた。https://rief-jp.org/ct10/122115?ctid=

入善町のプロジェクト
入善町のプロジェクト

 

 中国の明陽智能の風力発電タービンの採用は、同事業のEPC(設計・調達・建設)を担当する清水建設が、性能や経済性等を総合判断して決定した。風車の運用‣保守(O&M)も明陽智能が担当する。モノパイル方式の風車の基礎や変電設備、送電ケーブル等のO&MはJFEが担当する。

 

 風車はすでに6月に完成し、9月から発電を開始している。出力は3基合わせて9000kWとなるが、出力制御により最大出力7495kWとして運用する。発電した電力は全量「再エネ固定価格買取制度(FIT)」を活用し、北陸電力に売電を始めている。一般家庭3600世帯分の年間使用電力量に相当する。

 

 明陽智能は広東省中山市に本拠を置き、上海証券取引所に上場している。風力発電機の新設シェアでは世界6位で、中国勢としては3位。出力16MW級(MySE 16.0-242)のメガタービン設備を2024年上半期に商業化するとしているほか、風車の基礎部分のジャケットに養殖漁業用のネットゲージを併設するタイプ等、多様な風力発電設備を開発している。

 

 グローバルな風力発電市場では、これまでシーメンスガメサ・リニューアブル・エナジー(スペイン)やヴェスタス(デンマーク)などの欧米企業が市場を牽引してきた。だが、現在は、コストが安く、性能も欧州勢に引けを取らない中国の風力発電事業が欧州勢を「追いつき、追い抜く」状況になっている。特に日本市場向けでは、「中国は日本から距離が近いため、素早い保守サービスを受けられる利点もある」。中国製の風車は台風時の強風にも強い点もメリットとされる。

 

 日本の風力発電は、数年前までは三菱重工や日立製作所等が独自の風力発電事業を展開していたが、すでに相次いで本体の事業から撤退している。グローバルに市場が拡大している洋上風力発電事業でも、欧州勢との提携等で息をつないでいる形だ。日本より後発だった中国勢は、明陽智能だけでなく、国営の中国長江三峡集団(CTGC)、CSSC(中国海装)等がいずれもグローバルプレイヤーとして競い合っている。https://rief-jp.org/ct10/136961

 

 中国製の風力発電タービンの採用については、国産化を主導したい経済産業省等が懸念を示した可能性もある。だが、今回の事業は政府の補助金等に頼らず、民間資金だけで実現していることから、役所に口出しをする余地を与えなかったとも考えられる。一方で、日本政府主導で進められている浮体式洋上風力発電事業の入札事業等では、事業者が「最適な設備・サービスの組み合わせ」ができるかどうかが課題となりそうだ。

https://www.venti-japan.jp/pdf/20231017_nyuzen%20shunkousiki.pdf

https://www.jfe-eng.co.jp/news/2023/20231017.html

https://www.jfe-eng.co.jp/news/images/uploads/ea9bfacaae9c9a634c30fafd9e0613e16ca92a10.pdf