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日本最大のCO2排出企業「JERA」。オーストラリアで新規LNG調達の権益取得。14億㌦(約2100億円)。IEAの「ネットゼロ達成には新規石油・ガス開発停止」要請にもかかわらず(RIEF)

2024-02-23 16:01:38

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写真は、スカボローガス田開発の陸上設備の建設状況の一部=Woodside Energyより)

 

  国内最大の発電会社であり、最大のCO2排出企業でもあるJERAは23日、オーストラリアの天然ガス田の権益を約14億㌦(約2100億円)で取得する契約を結んだと発表した。年間120万㌧のLNGを輸入し、日本でガス火力発電に使う。国際エネルギー機関(IEA)は2050年までのネットゼロ実現には、石油・ガス田の開発停止の工程表を示しているが、JERAは今回契約したガス田からのCO2排出量は少ないとしている。同ガス田開発では、住友商事と双日が折半で設立した「LNGジャパン」も10%分の権益を取得しており、日本向けガス供給が柱となる。

 

 JERAが開発権限を確保したのは、豪エネルギー大手のウッドサイド・エナジー・グループ(Woodside Energy)が同国西オーストラリア州の北西部沖合約 375km の海域で開発中の「スカボローガス田」。プロジェクト全体のLNG生産量は最大で年間800万㌧。総事業費は約57億㌦(約8500億円)。生産されるLNGのうち15%は現地の西オーストラリア州内で消費する。

 

スカボローガス田の位置
スカボローガス田の位置

 

 JERAはウッドサイドが保有する権益の15.1%を取得し、年間120万㌧のLNGの権益を確保することになる。昨年8月にLNGジャパンが発表した同事業の権益取得分を合わせると、少なくとも同プロジェクトで開発されるLNGの4分の1が日本向けになる。JERAの契約は、今後、同州当局の許認可を得て24年後半には権益の取得が確定する見通し。投資資金は国内等の金融機関からの借り入れ等で調達するとしている。

 

 JERAによる海外のガス田の権益取得では過去最大の規模だ。同社の今回の契約では、スカボローガス田の権益取得とは別に、ウッドサイドが所有するテベ(Thebe)、ジュピター(Jupiter)の両ガス田から開発するLNGの15.1%(年間40万㌧)相当分を、2026年以降の10年間にわたって購入する非営業参加権益を取得するオプションも含まれているという。

 

 スカボロープロジェクトは2021年11月に最終投資決定済みだが、まだ生産は行っておらず、生産開始は2026年の見通し。IEAが石油・ガスの開発停止を2050年のネットゼロ工程表発表で盛り込んだのが2011年5月なので、同発表後に最終投資決定をしたプロジェクトとなる。ウッドサイドおよびJERAは、同ガス田のガス性状について「CO2含有率が0.1%未満と非常に低く、環境負荷の小さいLNGを確保することが可能」と説明している。

 

 JERAは東京電力と中部電力がそれぞれの保有する石炭・ガスによる化石燃料火力発電所を集約して設立した合弁会社。両社の膨大な火力発電を抱え込んでいるため、CO2排出量は日本国内で最も多い企業として知られる。その一方で、石炭火力のガス火力への転換のほか、アンモニア・水素混焼火力の推進を軸にして「CO2の出ない火をつくる」とのイメージ・キャンペーンを展開するなど、脱炭素へのトランジションが経営の最大課題となっている。

スカボローガス田で開発した天然ガスをLNG化するための設備の建設状況
スカボローガス田で開発した天然ガスを陸揚げし、LNG化するための設備の建設状況(Woodside Energyより)

 

 このため、日本政府が進める「グリーン・トランスフォーメーション(GX)」政策の支援を受けるGX企業の代表格でもある。JERAがウッドサイドとの間で結んだ基本契約では、スカボロー事業が生産開始になる2026年から10年間にわたり、年間6カーゴ(約40万㌧)のLNGの供給を受ける。また同社からアンモニア、水素、CCS等の脱炭素事業における協業を検討に関する覚書も締結した。

 

 JERAは「アジア地域では、経済成長を支えるためのエネルギーの安定供給と脱炭素化の両立が求められる。他の化石燃料による発電と比較してCO2排出量の少ないガス火力発電は、発電出力が不安定な再生可能エネルギーを機動的に支えるという補完関係にあり、エネルギートランジションを進める上で不可欠なエネルギー源」と説明している。

 

 JERA会長でグローバルCEOの可児行夫氏は「世界のエネルギー問題解決には、信頼できるパートナーとチャレンジングな案件を一つ一つ仕上げていく地道なプロセスが前提となる。今後、グローバルプレイヤーのウッドサイドとLNGの上流事業で信頼関係を拡大し、脱炭素を実現する新しい取り組みも同時に進めたい」としている。

https://www.jera.co.jp/news/information/20240223_1820

https://www.woodside.com/docs/default-source/asx-announcements/2024/woodside-to-sell-15.1-scarborough-interest-to-jera.pdf?sfvrsn=ffb86761_3

https://www.woodside.com/docs/default-source/asx-announcements/2023-asx/woodside-to-sell-10-scarborough-interest-to-lng-japan.pdf?sfvrsn=caa9b47f_3