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世界最大の木質ペレット企業の米エンビバ(Enviva)、経営悪化で連邦破産法11条申請。契約先に住友商事、三菱商事等。ペレット価格上昇になると日本のバイオマス発電の操業に影響(RIEF)

2024-03-27 16:22:25

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写真は、エンビバのペレット製造工場の模様=Dogwood Allianceのサイトから)

 

 世界最大の木質ペレット製造会社の米エンビバ(Enviva : メリーランド州)が資金繰りの悪化から、連邦破産法第11条を申請、民事再生手続きに入った。26億㌦(約4000億円)の負債を抱え、金融機関や出資企業等とのリストラ調整に入った。同社の木質ペレットは日本のバイオマス発電用に大量に輸出されており、住友商事、三菱商事、丸紅、電源開発等の日本企業が取引相手になっている。事業再建に際して、日本向けを含む既存契約の見直しが不可欠で、経済産業省の固定価格買い取り制度(FIT)に基づくバイオマス発電所の操業にも影響する可能性がある。

 

 エンビバが破産法申請に踏み切ったのは今月13日。報道等によると、同社の26億㌦の債務の主な相手先は、地元のデラウェア銀行にへの億8000万㌦のほか、ドイツの大手電力会社RWEに対して3億4800万㌦、ミシシッピー、アラバマ両州の地域開発機関に対して3億5300万㌦等となっている。同社は昨年第三四半期の段階で、資金繰り悪化で格付け引き下げられ、経営者の交代等の対策が講じられていた。

 

 同社は破産法申請に先立ち、再建支援契約(RSA)として、同社の有担保上位融資枠の約72%、2026年優先社債の約95%、現在建設中の工場関連の社債の約78%等を保有する特別保有者グループとの間での債務調整のRSAと、それ以外の事業社債の92%以上に相当する特定保有者とのRSAの2つを締結したとしている。

 

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 エンビバは、米国中南部のバージニア、ノースカロライナ、サウスカロライナ、ジョージア、フロリダ、ミシシッピの各州に年生産量約500万㌧の10工場を所有・操業しており、現在、アラバマ州に11番目の工場を建設中。生産した木質ペレットは 米国内よりも、英国、EU、日本の海外バイオマス発電所や石炭火力発電の混焼用等として輸出されている。

 

 ただ、バイオマス燃料については、生物多様性保全とのバランスが問われるほか、エンビバの各工場では、ペレット製造工場周辺での騒音、粉塵、大気汚染拡散等の環境問題が起きているほか、工場隣接のコミュニティや従業員の平等な雇用の確保等の社会的課題も指摘されている。本来は、同社の事業再生を進める場合は、こうした環境・社会課題の改善も再生条件に加えるべきだろう。https://toyokeizai.net/articles/-/605269?display=b

 

 米環境NGOで、エンビバが自らの木質ペレット生産プロセスを「カーボンニュートラル」と主張してきたことを、「グリーンウォッシュ」として異議を唱えてきた「Dogwood Alliance(ドッグウッド・アライアンス)」事務局長のダンナ・スミス(Danna Smith)氏は「長年にわたり、エンビバは顧客を欺き、森林を破壊し、地域社会を汚染してきた。そしてついに追いつめられた。彼らは何百万㌦もの税金を無駄にしてきた。バイデン政権は、この破綻し汚れた企業に、これ以上、支援金を与えてはならない」との声明を出している。https://dogwoodalliance.org/2024/03/statement-worlds-largest-wood-pellet-company-declares-bankruptcy/

 

エンビバの工場による環境汚染に抗議する「ドッグウッドアライアンス」のメンバー。マイクを持つのはスミス氏
エンビバの工場による環境汚染に抗議する「ドッグウッドアライアンス」のメンバー。マイクを持つのはスミス氏

 

 同社の再建計画は、2024年第4四半期中の完了を目指しており、その期間中も現在、建設中のアラバマ州の11番目の工場の建設は継続するという。同工場の操業開始は2025年前半に予定だ。事業再建には、既存債務の整理とともに、収益性の改善と流動性の確保が必要となる。

 

 その点で重要になるのが、既存契約の見直し(価格引き上げ)だ。報道によると、エンビバの取引先には、住友商事、三菱商事、丸紅などの日本の大手商社が並ぶ。商社は、エンビバの木質ペレットを輸入し、日本各地のバイオマス発電所の燃料として供給している。ペレットの海洋輸送には、商船三井も関与している。

 

 商社ルートとは別に、発電事業を自ら担う電源開発(Jパワー)は直接、エンビバと覚書を結んで、石炭火力発電へのバイオマス混焼用として最大年間500万㌧の輸入量確保を目指している。これらの契約の買い取り価格等も見直し対象とみられる。https://www.jpower.co.jp/news_release/2021/11/news211117.html

 エンビバが再建のために取り組むRSAでは、こうした既存契約の価格見直しが条件となる。日本のバイオマス発電はFITで買い取り価格を固定化しているが、エンビバからの輸入価格が引き上げられると、その分を輸入業者が負担するか、発電企業が負担するか、あるいは電力消費者に負担を回すFIT制度の手直しを盛り込むか、といった調整の議論が、日本国内でも起きそうだ。

 https://ir.envivabiomass.com/news/news-details/2024/Enviva-Announces-Comprehensive-Agreements-to-Delever-Balance-Sheet-and-Strengthen-Financial-Position/default.aspx

https://www.sec.gov/ixviewer/ix.html?doc=/Archives/edgar/data/0001592057/000110465924033709/tm248430d1_8k.htm

https://abcnews.go.com/amp/US/wireStory/wood-pellet-producer-enviva-files-bankruptcy-plans-restructure-108098019