OECDの原子力機関(NEA) 食品中の放射能濃度について国際基準新設へ。各国と調整、1年以内に公表へ(各紙)
2016-04-12 11:14:25
各紙の報道によると、経済協力開発機構(OECD)の原子力機関(NEA)は、原発事故に伴う食品の安全性を評価する国際的な枠組みを作る方針を明らかにした。食品中の放射性物質濃度に関する国際基準を新設する。日本など各国政府と連携し、1年以内に構築するとしている。
福島原発事故後日本の食料品については、一部の国で今も輸入規制が継続している。国によって食品中の放射性物質濃度基準が異なるほか、測定方法や測定機関に対する統一した基準がないことも影響しているとみられる。
10、11の両日、福島県いわき市で開いた福島第一廃炉国際フォーラムに出席したNEAのウィリアム・マグウッド事務局長が明らかにした。
同氏は基調講演で「原発事故の起きた国が(食品の)安全を宣言しても、他国はその情報の正確さを確認するすべがない」と指摘し、国ごとに異なる放射性物質濃度の測定方法や基準値などを一本化する必要性を強調した。
またパネル討論では、国際原子力機関(IAEA)のファン・カルロス・レンティッホ事務局次長は「(福島事故では)いろいろな組織がさまざまな数字(基準値)を出したために混乱を来した。今後、取り組まなければならない問題の一つ」と述べ、NEAと協力する姿勢を示した。
NEAは同機関に加盟する先進31カ国へ働きかけて、早期基準の合意を目指す考え。
食品中の放射性物質濃度に関する基準は各国で異なるほか、品目によっても違いがある。日本の食品衛生法では、野菜など一般食品の放射性セシウムの基準値は1kg当たり100ベクレルで、この基準値を超えた食品は出荷・流通できない。
一方、チェルノブイリ原発事故が起きたウクライナはパンが同20ベクレル、隣接するベラルーシは同40ベクレルと、ともに日本より厳しい。欧州連合(EU)の一般食品は1kg当たり1250ベクレル、米国は全ての食品で1kg当たり1200ベクレルとなっている。
福島原発事故後、福島県産だけでなく日本産の食品等に対しては、一部の国で輸入規制が続くほか、国内でも基準をクリアした場合でも消費者に敬遠される場合もある。
国際的な基準が統一されれば、各国間の格差がなくなるほか、基準への信頼性も高まることが期待される。ただ、国際基準の水準を巡っては各国の判断や、事故が実際に起きた国と、そうではない国との調整がスムーズに進むかといった課題もある。
また、新たな基準ができて場合でも、OECD加盟国に対して強制力を持たせるのは難しいほか、今後、原発建設が進むとみられているOECD以外の新興国や途上国に対しても適用できるかどうかは不明だ。基準の合理性と、基準の実効性をどう担保するかが、今後の各国間の調整の中で焦点となりそうだ。
福島県の内堀雅雄知事は11日の記者会見で、「(日本の)基準に沿った安全対策が講じられても風評や輸入規制が続いている。フォーラムをきっかけに基準の在り方などについて、より議論が進むよう期待したい」と述べた。
http://www.minyu-net.com/news/news/FM20160412-065278.php
http://www.minpo.jp/news/detail/2016041230203