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事業用太陽光発電 固定価格買取制度(FIT)の対象から外し、固定量を入札する方式に移行。買い取り量など未定。メガソーラー事業見通し難しく(各紙)

2016-10-26 01:15:36

solar2キャプチャ

 

 経済産業省は、事業用の大規模太陽光発電に適用していた固定価格買い取り制度(FIT)を見直し、入札制に切り替える方針を24日の有識者会議で示した。電力会社が入札で安い電気から順に購入することで、家庭や企業の電気代に上乗せする買い取り費用を抑制するためという。ただ、太陽光事業者は買い取り価格が変動するため採算見通しが立てにくくなり、事業参入意欲が低下するリスクもある。

 

 

 事業用太陽光発電を現行の買い取り制から入札制へ切り替える方針は、改正FIT法に盛り込まれている。経産省の説明は、現行のFITは毎年一定価格で買い取りを決定する仕組みのため、参入企業間でのコスト競争が起きにくく、買い取り価格を上乗せする利用者の料金負担コストが大きいとの指摘が出ていた。国内事業者の発電コストは欧米の約2倍とされる。

 

 そこで再エネ発電でもっとも企業参入の多い事業用大規模太陽光発電を対象に、価格の固定方式ではなく、買い取り量の固定方式に切り替える。その際、買い取り価格は、固定された買い取り量の範囲内で、電力会社が安い電力から順番に買い取る入札制を導入する。

 

  経産省の説明では、2017年10月をめどに最初の入札を実施し、以後、毎年実施する。FITから入札制度への切り替えはドイツなどでも実施している。ドイツの場合、FITの普及で再エネ電力が総発電量に占める比率が20%にまで上昇したことから、価格固定方式は一定の成果を得たとして、買い取り量を一定にする方式に切り替えた。

 

 これに対して日本の場合、FITの導入は2012年とまだ日が浅い。今回変更の対象となる事業用太陽光発電事業は、FIT導入から数年は一時的にブームとなった。経産省が設定するFIT価格は毎年引き下げられているが、それでも国際価格に比べると高く、その分、電気料金への負担が大きいと批判されてきた。 風力発電なども含めた再エネ発電電力の電気代への上乗せは、標準家庭で月675円。12年度の10倍に増えている。

 

 ただ、今回、入札制導入の方針は示されたものの、買い取る再エネ電気量の総枠をどうするのか、各電力への配分は、買い取り期間の設定は、といった、細部は示されないまま。再エネ事業に参入しようとする事業者にとって、事業計画を立てる上で必要な制度の枠組みが依然として、不明確になっている。

 

 このため、太陽光発電事業に進出を目指す事業者は、入札制に移行する前に、駆け込み申請するか、あるいは詳細な枠組みが示されるまで、事業計画を凍結するか、という選択を迫られている。

 

 

 ドイツと違って、日本の再エネ発電市場は全体でもわずか数%にとどまっている。ドイツのような「成熟市場」ではなく、「育成市場」の域を超えていない。したがって、その中で、これまで中心市場だった事業用の大規模太陽光発電事業が低迷するようなことになると、再エネ市場全体が低迷するリスクがある。

 

 経産省は入札制度の細部について、落札の上限価格や買い取り期間、買い取る電気の量などを今年末までに決める、としている。

 

 経産省の説明では、2012年のFIT制度導入後、参入が容易で買い取り価格が高い太陽光が新規参入の9割超を占め、国民負担は13年度の約3300億円から15年度には約1兆3200億円まで拡大する見通しという。家庭用の小規模な太陽光発電は引き続き、買い取り額を一定とするFITの対象とする。

 

 また、開発に時間と設備投資資金がかかる風力発電や地熱発電などは、現行の単年度ごとの買い取り価格設定ではなく、2〜5年先の買い取り価格も示し、中長期的な視点での事業者の参入を促す方針。

 

 さらに国から発電の認定を受けながら、設置費用などが値下がりするまで発電しない「空押さえ」問題などに対応するため、事業者が電力会社との接続契約を結んだ時点で認定する制度に改める。現在空押さえしている業者の認定取り消しも原則同様の基準で行う。

 

 買い取り義務を電力会社から送配電事業者に移し、地域で消費しきれない電力の広域融通などをスムーズにする。ただ、小売業者と直接売買契約を結んでいる再エネ事業者には事実上現状のままの方式を認めることも検討する。

 

http://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saiene/kaitori/dl/kaisei/01_point.pdf