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洋上風力普及なるか。政府が「海洋再エネ発電利用促進法案」を閣議決定。一般海洋の占有期間30年まで可能に。全国5カ所を促進区域に指定。秋田、青森、長崎が有力(RIEF)

2018-03-12 01:16:20

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 政府は9日の閣議で、洋上風力発電を普及・促進するため、基本的ルールを定めた法案を決定した。2030年までに全国5カ所に促進区域を創設する。促進区域では、参入企業は促進区域を最長30年占用することができ、安定的に発電事業が続けられるようにする。漁業関係者との協議の場を設けるなど全国統一の枠組みも整える。今国会での成立を目指す。

 

 提出法案は「海洋再生可能エネルギー発電設備の整備に係る海域の利用促進に関する法律案」。同法案は、エネルギーを所管する経産省と、港湾を所管する国土交通省が共同で担当する。関係の官庁との協議を経て、促進区域を指定するとともに、公募占有指針を定める。

 

 促進区域での事業を展開するためには、洋上風力発電事業者は、経産相と国土交通相に公募占用計画を提出し、認定を受ける。その際、両大臣は、発電事業の内容、供給価格等を評価して、もっとも適切な計画を選定する。事業者は認定された公募占有計画に基づき、FIT認定を申請する手順となる。海域の占有許可は国土交通相が出す。

 

 現在のところ、指定される促進区域には、風況のいいことで知られる青森、秋田、長崎の3県が有力候補とされる。政府は法案の成立後に地域選定作業を行う。5区域全体で風力発電全体の導入容量は、現行の約3倍の1000万kW(2016年度は約330万kW)と見込んでいる。

 

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  日本の周辺海域の大半を占める一般海域では、現時点で、風力発電のような大規模な構築物の占用を前提とする統一的ルールが整備されていない。このため、現在の洋上風力発電は都道府県条例に基づいて設立されている。しかし、その場合の占用許可は3~5年と短く、固定価格買取制度(FIT=20年)を見込んだ事業計画や資金調達をしづらい等の難点が指摘されている。

 

 港湾区域では、2016年度の港湾法改正で長期の占用を確保するための制度が整備されたが、より風力発電に適した一般海域ではルールが整備されないままだった(港湾区域は領海(内水含)の約1.5%)。

 

 また、海運事業者や漁業者などの海域の先行利用者との調整の枠組みもない。このため、発電事業者は、先行利用の実態把握や先行利用者の特定さえも困難な状態にあるという。普及の糸口がつかねないことから、現行の発電コストは、洋上風力が普及している欧州では約6~12円/kWhだが、日本では36円/kWhと6~3倍と高止まりしている。

 

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 このため、これまでの日本の参入業者は限られている。しかし、洋上風力の場合、陸上よりも大規模な風車を稼働させることができ、風況も陸上よりも安定している強みがある。このため開発区域さえ確定できれば、発電コストも火力並みに下がって稼働を見込める期待もある。また洋上風力の技術は日本企業もトップクラスにある。これらを考慮して、今回、制度的な法整備を図ることになった。

 

 環境金融研究機構(RIEF)が2017年サステナブルファイナンス大賞で、大賞に選定した戸田建設の長崎・五島市沖の浮体式洋上風力発電事業は、その洋上風力の浮体式での有力技術の実用化を目指したプロジェクトである。http://rief-jp.org/ct4/76862?ctid=80

 

 洋上風力発電は大規模であることから、発電設備の部品点数が自動車並みに多く(約1~2万点)、関連産業への波及 効果が期待できる。また風力発電設備の設置・維持管理のために港湾を活用するなど、 地元産業への好影響が期待される。

http://www.meti.go.jp/press/2017/03/20180309002/20180309002.html