日本紙パルプ商事、子会社のバイオ発電所が、有害な六価クロム等の環境基準超過の廃棄物を不適切処理して販売。採石場や住宅地等10カ所で既に使用(各紙)
2019-02-22 23:59:31
日本紙パルプ商事は22日、子会社の「野田バイオパワーJP」(岩手県野田村)がバイオマス発電時に発生する廃棄物を不適正処理していたと発表した。廃棄した灰から製造・販売した地盤改良材に、環境基準を上回る六価クロムなどが含まれていた。地盤改良材はすでに採石場や宅地に使用されている。紙パルプ商事では、社外取締役の小林光元環境事務次官を中心とした社内委員会を組織し原因調査中としている。
野田バイオは同地で県内の近隣森林組合から納入される未利用材、バーク、 剪定枝及びアブラヤシの実の種殻(PKS)などを燃料として2016年7月以来、発電をしている。バイオ燃料の燃焼後には焼却灰のフライアッシュ(FA)等の廃棄物が発生する。同社は、これらを水と固化剤で混ぜ、地盤改良材の原料として、東北各県の自治体やゼネコン等に、土壌改良剤として販売してきた。
販売量は、2016年12月~18年12月で合計1万2000㌧に達する。ただ、これらの製品は産業廃棄物から製造しているため、出荷地域が定める安全基準を満たすとともに、当該自治体への報告が求められる。だが、同社は宮城県、山形県では県に報告しないまま販売していた。
昨年12月に宮城県が同社に立ち入り検査し、不正が発覚した。その後、これまでに土壌改良材の一部を回収撤去する作業をしているが、同社が販売した製品の出荷前検査では環境基準を上回る有害な重金属が検出されているという。
たとえば、2016年7月~2018年11月の間に実施した27回の調査では、六価クロムが11回も基準超過で検出されている。最高値は環境基準(㍑当たり0.05mg)を4倍以上上回る0.23mgを記録した。またセレンも6回基準超過となった。このほか、鉛、フッ素、ほう素も検出されている。
また野田バイオは製造した土壌改良材を、福島県にも販売したが、同県で販売した製品販売先の業者を通じて、宮崎県に流れているのを把握していなかった。さらに岩手県から福島に持ち出す際には、最終納入先管理の徹底を求められる。だが、これの管理も不十分で、各地に拡散させてしまった。
日本紙パ商事は1月29日に、社内委員会(委員長、小林光元環境事務次官)を組織、調査中としている。野田バイオに対する日本紙パ商事の監督・経営責任が問われそうだ。
出荷された地盤改良材は福島県と宮城県内の採掘場など10カ所で使われている。一部は住宅地でも使われており、人体や環境に与える影響の可能性もあるため、今後、調査していくという。
日本紙パ商事の渡辺昭彦社長は22日、都内で記者会見し、野田バイオが出荷時の製品に検査不正があったことを認識していたと認めた。不正が行われていた背景については、「天然由来の材料を使用していることから安全性に問題がないという認識の甘さがあった」と答えた。
https://www.kamipa.co.jp/wp/wp-content/uploads/2019/02/20190222.pdf