商船三井、初の個人向けサステナブルボンド100億円発行へ。国際海運の汚染対策などのグリーン事業に加え、フィリピンでの商船大学設立費用等に充当(RIEF)
2019-07-16 16:04:16
商船三井は、個人向けのサステナビリティボンド100億円を発行した。同社は昨年、グリーンボンドを発行しているが、社会的事業も含めたサステナビリティボンドの発行は今回が初めて。主な社会事業として、フィリピンに商船大学を設立、同社自身も経営に参画し、同国での船員人材育成に役立てるとしている。
(写真は、2018年9月に開いたMMMAの開学式の模様)
発行したボンドは期間6年、利率年0.49%。1口10万円から個人を中心に販売する。調達資金のうち、大半の88.4%は船舶の排ガス規制対策等のグリーン事業に充当するが、一部をフィリピン商船大学の設立費用と、同社内のワークプレイス改革の推進費用などのソーシャル事業に充当する。昨年8月発行のグリーンボンドも個人向けに発行した。http://rief-jp.org/ct4/82050
主幹事は大和証券とみずほ証券。債券の信用格付けは日本格付研究所からA-を取得、サステナビリティ評価も、同研究所から最上位の「SU1」の評価を得た。
フィリピン商船大学(MOL Magsaysay Maritime Academy Inc: MMMA)は、フィリピン最大級の船員配乗会社で商船三井の同国でのパートナーであるMagsaysay Maritime Corporation(MMC)と共同で設立・運営する。すでに、2018年8月、首都マニラから南約30kmにあるDasmariñas市で開学している。
敷地は、東京ドーム2.8個分の13.2ha。航海科と、機関科の4年生の2コースがある。学生数は1学年当たり最大300人。全寮制。
商船三井の外航船舶ではフィリピン国籍の船員割合が68%に達している。フィリピン船員は離職率が低く、英語も堪能で、勤勉であるなどの利点で知られる。これまで同国での船員養成は欧州系海運会社が取り組んできたが、今回、商船三井も将来の船員人材の確保と、高度化のため、自ら経営に参画する形で大学設立に踏み切った。
同事業は、質の高い教育の提供と、若年層の雇用創出にもつながるとして、国連の持続可能な開発目標(SDGs)の目標4(質の高い教育をみんなに)、目標8(働きがいも経済成長も)、目標17(パートナーシップで目標を達成しよう)、のそれぞれに適合するとしている。
サステナビリティボンドで調達する100億円のうち、11.1%に相当する分を、MMMAの施設建設費に充当する。また他のソーシャル事業として、商船三井社員で育児・介護、障がい等の理由で、フレキシブルな勤務体制が必要な人たち向けのテレワーク等の活用がし易いよう、ICTツールや人事・勤務制度を見直し等の「オフィス整備費用」に0.5%充当する。
グリーン事業関連では、国際海事機構の新規制対応として、船舶からの排ガス中に含まれる硫黄酸化物(SOX)を除去するSOxスクラバー装置の設置費用に47.1%、LNG燃料船に海上で燃料のLNGを供給するLNG燃料供給船の建造費に32.7%、バラスト水処理装置に7.8%、その他、風力を利用した帆主体の未来型クリーン船舶の研究費等に充当する。