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国連職員の年金基金「UNJSPF」、石炭関連上場企業への投資を引き揚げ(Divestment)決定。2020年末までに。パリ協定との整合性のほか、長期の経済的リスクも指摘(RIEF)

2019-09-26 12:09:37

UNJSPFキャプチャ

 

  国連職員の年金基金である「The UN Joint Staff Pension Fund (UNJSPF)」は石炭エネルギー部門の上場企業への投資を引き揚げるDivestmentの実施を決めた。2020年末までポートフォリオから関連資産を除外するほか、石炭関連の新規投資も排除する。温暖化対策を各国に求める国連スタッフが自ら低炭素化投資を実践する形だ。

 

 UNJSPFは現在の保有資産680億㌦(約7兆3000億円)を抱える。1949年に国連総会で設立が承認された。国連本部だけでなく、世界中にある国連機関で働く職員約20万人を対象として、年金給付のほか、国連活動による障害・死亡等の補償給付も行う。

 

 運用資産のうち57%の344億㌦(2018年末時点)は各国の上場株に投じている。残りは26%の161億㌦が債券、7%の43億㌦が不動産、などになっている。

 

 同年金の投資部門(OIM)は、すべての投資判断にESG配慮を組み込むことで、長期的にリターンの上昇にもつながると指摘。このうち石炭は、再生可能エネルギー発電の急ピッチのコスト低下によって経済的な優位さを喪失しつつあり、2030年までには世界中のほぼあらゆるところで再エネコストを上回る、と評価。

 

 このまま石炭関連企業への投資を継続すると、温暖化の加速に加担するだけでなく、UNJSPFの年金資産の金融的リスクを高める可能性がある、としている。投資対象から石炭関連企業資産を除外することは、パリ協定の目標と合致する。

 

 UNJSPFの事務局長のSudhir Rajkumar氏は「われわれはすでにたばこ産業のほか、兵器産業等を投資ポートフォリオから除外している。今回の措置は、われわれの投資の長期リスク・リターンのプロファイルをより健全にすることにつながるうえ、国連スタッフと受給者の金融ベネフィットの将来を確実にするためのわれわれの受託者責任(フィデシャリーデューティー)に沿ったもの」と説明している。

 

  年金や保険、財団等の石炭等の化石燃料事業への投資引き揚げ宣言は、グローバルベースで11兆㌦(約1200兆円)に達している。UNJSPFは温暖化対策を推進する国連の年金だけに、もっと早くDivestment宣言をするべきだったとの見方もできる。https://rief-jp.org/ct4/94014

 

 ただ、国連加盟国の中には石炭等化石燃料産業を軸とする国々もある。国連の中立性から、そうした国々にも配慮する必要がある。そうした環境の中で、今回、Divestmentを決めたことは、長期リターンを確保する年金運用の受託者責任の視点からも、化石燃料関連企業は投資対象にはならないことが鮮明になってきた点が大きい。

 

https://oim.unjspf.org/report/unjspf-press-release-united-nations-joint-staff-pension-fund-announces-divestment-from-coal-energy-sector/