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G7の中で「孤立する日本の脱炭素政策」。アンモニア混焼、CCS依存に他の6カ国が懸念。日本の現状のCO2削減度合いも、G7の中で「最低」。Bloombergが分析(各紙)

2023-04-14 22:57:43

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 今週末に札幌で開くG7気候・エネルギー・環境大臣会合を前に、各国間の攻防が伝えられているが、特に議長国日本が他のG7諸国の脱炭素のスタンスとかけ離れた主張をしていることが海外でも話題になっているようだ。BloombergがG7各国の気候変動対応の現状を分析したところ、日本がもっとも水準が低く2030年目標の達成も極めて厳しい状況にあることが浮き上がっている。石炭火力発電を維持したうえで、アンモニア混焼等でCO2削減を目指す経済産業省の政策には、他の国々から、技術的にも、経済的にも「実現可能性」に懸念が示されており、日本だけがG7内で「落伍」する可能性が高まっている。

 

 G7気候・エネルギー・環境大臣会合は15~16日に札幌で開かれる。日本は議長国なので、本来は、各国の主張を調整し、前回G7関係閣僚会議の結果から、一歩でも前進する采配が求められる。ところが、日本政府は石炭等の火力発電を維持したうえでアンモニア混焼、水素混焼等で脱炭素を先延ばしする主張を崩さず、2030年に国内の石炭火力発電全面停止を求める欧州勢等との対立が土壇場続いているという。

 

 Bloombergは、石炭火力維持を前提とする日本の「頑なな姿勢」に対して、他の国々が疑念を示し、「議長国日本は、脱炭素目標に向けた政策について(他国からの)不愉快な精査に直面している」と指摘。「G7諸国は自らを『脱炭素化へのグローバルミッションを持つリーダー』として、名乗りをあげているが、日本の電力部門でのカーボン排出量削減計画は、他のG7諸国とはかけ離れた『部外者(outlier)』の存在になっている」とも述べている。

 

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 Bloombergは日本の「異質性」について、グローバルな中央銀行と金融監督機関で構成する「金融システムをグリーン化する金融当局者ネットワーク)」のデータ等を活用して具体的に示している。まず、G7各国のCO2排出実績値(2021年)の2030年の中間目標対比では、フランス、イタリアはすでに残り9%と達成をほぼ掌中にしている。英国(12%)、カナダ(16%)も10%台。ドイツ(28%)、米国(36%)はまだ削減努力が必要だが、日本は45%と断トツで「削減成績」が悪い。

 

 日本のCO2削減が遅々として進まないのは、電力部門での再エネ発電転換が他のG7諸国に比べて、極めて遅く、低い水準にあることが大きい。日本のエネルギー基本政策は2030年の再エネ比率を36~38%と設定している。これに原発比率6%(2019年度)を20~22%に引き上げ、合計で「クリーンエネ比率56%~60%」とする計画を公式に示している。

 

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 しかし、他のG7諸国はイタリアを除き、米、英、独は30年80%台、カナダ、フランスは90%からほぼ100%近いところに目標を設定している。日本はクリーンエネ比率が低い一方で、石炭・ガス火力を維持しながら、アンモニア混焼、水素混焼等で火力からのCO2排出量の削減を進める案に固執している。

 

 各国が懸念を示すのが、このうち石炭火力へのアンモニア混焼だ。アンモニア混焼は経済コストが高いだけでなく、CO2排出量は少なくなっても、代わりに一酸化二窒素(N2O)の排出につながる。N2OはCO2よりも温暖化係数(100年計算)が310倍も高く、温暖化削減効果どころか、温暖化を加速するリスクをかかえているとの研究成果が多数報告されている。

 さらに各国が懸念を深めるのは、日本が東南アジア諸国等を中心にして、既存の石炭火力発電を維持したうえで、アンモニア混焼とCCSの活用でCO2削減につなげるという構想を広めている点だ。アンモニア混焼の技術的課題に加え、CCSも技術面、経済面で未知数な点が依然少なくない。経済成長率の高いアジア諸国が石炭火力を維持し続けると、グローバルなCO2削減が進まない可能性がある。https://rief-jp.org/blog/134385?ctid=33

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 日本は懸念の多いアンモニア混焼だけではなく、2050年ネットゼロに向けた政策としてCCSを重視している。BloombergのBNEFの分析によると、G7各国のネットゼロ達成のための脱炭素政策のウエイト比較によると、日本はG7の中で、米国やドイツを上回り、もっともCCS依存度が高い。しかし、すでに国内で実証プラントを展開している米国や、英国等とは異なり、日本国内でのCCSキャパシティは、地質等の事情で、極めて限られている。

 経産省等は、国内で発生したCO2をアジア等の海外に搬送してCCSで処理する構想を立てているが、この点もコスト面、技術面で実現性が疑問視されている。特に、アジア諸国が、日本の主張に追随して、本格的な脱石炭に踏み出さず、アンモニア混焼のような「懸念の多い」技術に依存すると、その分、無駄な投資となるだけでなく、温暖化の加速につながるためだ。

 経産省が練り上げたアンモニア混焼、CCS依存等の「実現性」への疑問と、その「負の影響」が、G7の他の国々から直視されている。「この国は、G7のメンバーとして妥当なのだろうか」と。

https://www.bloomberg.com/news/articles/2023-04-13/japan-s-emissions-reductions-lag-rest-of-g-7-countries?cmpid=BBD041423_GREENDAILY&utm_medium=email&utm_source=newsletter&utm_term=230414&utm_campaign=greendaily