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「G7広島サミット」。共同声明で、アンモニア混焼やLNGの使用等を条件付きで容認。日本の「GX」を念頭に2035年までの発電所の完全脱炭素化も求める。NGOら強く反発(RIEF)

2023-05-21 02:07:33

G70033キャプチャ

 

  主要7カ国首脳会議(G7広島サミット)は20日、共同声明を発表した。気候・エネルギー関連では、化石燃料削減が困難なセクター向けのアンモニアや水素混焼、CCS等を一定の条件付きで認める姿勢を打ち出した。また日本等を想定する形で、アンモニア混焼等で火力発電所を脱炭素化政策をとる国の存在に言及、「2035年までの発電所の完全な脱炭素化」等の条件を付した。昨年のG7では化石燃料開発への国際的な公的資金支援の停止で合意したが、ウクライナ侵攻を続けるロシアへのエネルギー依存を断つ等の理由で、天然ガス事業への公的支援を一時的に容認する姿勢も示した。広島に集まった内外にNGO等は「議長国日本の『間違った気候リーダーシップ』によるG7の後退」と批判している。

 

 共同声明は、気候変動とエネルギー移行の関係について、ロシアのウクライナ侵攻によって引き起こされた現在のエネルギー危機と、気候変動による2050年のネットゼロ共通目標の達成を解決するため、「われわれは、クリーンなエネルギー移行とエネルギー安全保障の増大を同時に達成するという現実的かつ緊急の必要と機会に直面している」と位置付けた。

 

 こうした二つの目的に対応するため、再生可能エネルギーのグローバルレベルでの拡大やコスト削減にG7として取り組むとしたうえで、化石燃料エネルギー使用を前提としたアンモニア、グリーン水素等の開発と使用を、「1.5℃経路と適合できる場合」との条件を付け、特に排出削減が困難なセクター向けに認めるとした。CO2以上の温暖化係数である一酸化二窒素(N2O)や、大気汚染物質の窒素酸化物(NOx)等の排出増を避ける、との条件も付している。

 

平和公園を歩むG7首脳たち
平和公園を歩むG7首脳たち

 

 特に「ある国々は、ネットゼロ火力発電に向けて電力セクターで低炭素な水素やアンモニアの使用を開発していることを注記する」と指摘。日本の石炭火力発電等をアンモニア混焼等で脱炭素化するという「グリーントランスフォーメーション(GX)」構想を踏まえた表現を盛り込んだ。こうした電力部門でのアンモニア混焼等の取り組みについても「1.5℃経路」と、2035年までに完全あるいは大半の発電所を脱炭素化する(G7の)共同目標への適合が可能、という条件を付した。GXのアウトプットについて「G7条件」が示された形だ。

 

 また同様の理由で、CCSおよびCCUS、さらに直接カーボン除去技術(CRD)等についても、他の手段では排出削減が困難なセクターでの脱炭素ソリューションのポートフォリオの重要な一部分を占めると位置付けた。これらの手段の適用は、「完全な脱炭素化達成が困難なセクターの残余の排出量をバランスさせるため」と、対象セクターを絞った限定的な扱いとしている。

 

 内外の環境NGOらが不満を示したのが、天然ガス、特にLNGの扱いだ。昨年のドイツでのG7では、2022年末で化石燃料への国際的な公的ファイナンスを終了すると宣言した。ところが、今回の共同声明では、「ロシアのエネルギーへの依存性を段階的に解消することを加速する必要性がある」として、パリ協定と整合する方法だとしたうえで、「われわれは、LNGの利用の増大は、現状のエネルギー危機に対応し、ガス市場の(供給)不足を解消するうえで、重要な役割(を担う)と強調する」と、ガス利用を認めるスタンスを示した。

 

 共同声明は、この「変身」について、一時的な反応、明確な当該国が直面する環境次第、ロックイン効果を生み出さない等の条件を付けた。また今後、こうしたガスの扱いを含めて国際エネルギー機関(IEA)による検証も求めている。

 

 しかし、広島に集合した内外の環境NGOは、こうしたG7の「化石燃料容認姿勢」に強い反発を示している。国際NGOのOil Change International アジアプログラムマネジャーのSusanne Wong氏は「化石燃料の迅速なフェーズアウトが必要な時に、議長国日本の気候リーダーシップがグローバルレベルで『失敗』したことを示すものだ。今回のG7議長国は、石炭使用を長引かせる技術やLNGの拡張等を推進した。日本は気候危機を加速することを止めるまで、強い国際的な調査に直面し続けるだろう」と、日本への不信感を示している。

 

 英シンクタンクのE3Gのエネルギーファイナンス担当のLouise Burrows氏は「昨年のドイツでのG7では化石燃料への国際公的ファイナンスの停止という画期的な合意をした。だが実際には日本やドイツ等はガス産業への公的ファイナンスを継続しており、G7宣言を自ら破っている。緊急のエネルギー危機はすでに過ぎ去っているのに、G7のリーダーたちは市場の明確なシグナルに沿った行動をとることに失敗し、化石燃料への新規投資はもはや必要ないという気候科学も無視している。公的投資が必要なのは、ガスではなく、クリーンエネルギー分野だ」と指摘している。

100506878.pdf (mofa.go.jp)