HOME10.電力・エネルギー |公正取引委員会。大手電力大手の発電部門が販売部門に電力を格安販売し、新電力より競争上有利に立つ「不当廉売」等を認める。是正されない場合は「発販分離」を提言(RIEF) |

公正取引委員会。大手電力大手の発電部門が販売部門に電力を格安販売し、新電力より競争上有利に立つ「不当廉売」等を認める。是正されない場合は「発販分離」を提言(RIEF)

2024-01-18 17:26:17

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 公正取引委員会は17日、大手電力会社に対し、発電と小売りを切り離す「発販分離」を提言する報告書を発表した。現在、電力小売市場は自由化されている。だが、大手電力が自社の販売部門に著しく安い価格で販売する一方で、新電力との契約では供給地域等の取引制限を科す「不当廉売」等の事例が複数あると指摘。競争政策上の観点から、こうした取引条件の見直しを求めるとともに、改善が進まない場合は、大手電力の「発販分離」を求めた。大手電力は、送配電子会社でも、新電力の接続情報を「盗み見」する不正を働いていたことが発覚し「送配電分離」も焦点となっている。電力改革の見直しが不可欠となってきた。

 

 公取委が公表したのは「電力分野における実態調査報告書~卸分野について~」と題した内容。電力市場は2016年に電力小売の全面自由化が実施された。ただ、経済産業省による既存電力会社の改革は、発電部門と販売部門を電力大手内の事業として維持したうえで、送配電部門もグループ内子会社とするなど、電力大手に配慮した「自由化」にとどめた。https://rief-jp.org/ct5/130960?ctid=

 

 今回の公取委の調査は、こうした電力市場の「競争環境」を精査するともに、2020年に「2050年カーボンニュートラル」実現が政府目標となったことを受け、電源の脱炭素化、再エネ電源主力化を進めるうえで、安定的な電力供給の維持・確保のために現状の電力市場での競争環境の課題の把握を目指した。調査は既存電力大手12社と新電力104社等を対象とした。

 

 報告書は、現行の電力小売り自由化政策の評価として、小売り市場は自由化されたが、新電力にとって国内での大規模な電源を新たに設置するのは困難な状況にあり、競争相手である電力大手の既存電源からの電力調達に頼る環境にあると指摘。その結果、新電力各社は、既存電力の発電部門ないしは販売部門との契約において、転売禁止、供給エリア制限、供給量上限等の不利な取引条項を設定される等の問題があるとした。一方で、既存電力会社は自らの販売部門に格安で電力を供給する「内部補助」を実施しているなど、競争市場が歪められる恐れがあると評価した。

 

 こうした電力小売市場の「いびつな競争環境」と、22年のロシアによるウクライナ侵攻などによりエネルギー価格が乱高下した影響で、安定的な発電部門を持たない新電力各社は燃料調達費がかさみ経営困難に陥った。23年3月の帝国データバンクの調査では、対象となった新電力706社のうち195社が契約停止や撤退、倒産に追い込まれている。

 

 報告書は、「電力大手が、正当な理由なく、供給に必要な費用を著しく下回る料金で電気を(自らの販売部門に)小売供給して、他の小売電気事業者(新電力)の事業活動を困難にさせる恐れがある場合は、独占禁止法上問題となる場合がある(私的独占、不当廉売)」と指摘。今回の実態調査では、そうした事例が複数あったと明かしている。

 

 さらに、既存電力大手の小売価格で「調達価格を下回る小売り価格」が発生する要因の一つには、経産省の料金政策の問題もあると指摘した。大手電力の電力料金は、国の認可が必要な「規制料金」のため、燃料費の上昇や電力需要の急増等で市場価格が高騰した場合、新電力の「自由料金」より安くなり、競争上有利になるためだ。この点で報告書は「『経産省・電力・ガ ス取引監視等委員会(電取委)』は、規制料金が障害となっていることが確認された場合には、中長期的な影響も踏まえた上で、是正に向けた必要な検討を行うことが望ましい」と政策対応を求めている。

 

 報告書は、こうした課題の指摘と、対応策を提言したうえで、「これらの取組を進めてもなお、小売市場における公正な競争環境が確保されない場合には、『発販分離』を行うことが考えられる。  発販分離を行う場合は、発販分離時において、既存電力の小売りと新電力との間で不当に差別的な取扱いが行われていないかについて、電取委による監視を行う必要がある」と求めている。

 

 公取委は電力小売り自由化を実施する際の2012年にも、発販分離を提言しており2回目。今回の提言は、経産省の自由化措置が不十分だったことを前提とする再提言となる。

 

 小売販売問題だけではない。経産省の電力改革では、送配電会社も電力会社から分離せず、持ち株会社傘下にとどめる措置をとった。これにより新電力は競争相手の既存電力の送配電会社と接続契約を結ばねばならない。そうした状況の中で、電力大手すべての販売部門が、子会社の情報を「盗み見」する形で、新電力の顧客情報にアクセスする不正を展開していたことも発覚している。https://rief-jp.org/ct10/132933?ctid=

https://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/2024/jan/240117.html

https://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/2024/jan/chouseika/240117houkokusyo.pdf