HOME6. 外国金融機関 |イタリアのガス大手Snam。今年初のトランジションボンド。5億ユーロ(約780億円)発行。6度目。資金使途の明確化と投資家対応で、EUタクソノミー適合のほか、転換社債条項も(RIEF) |

イタリアのガス大手Snam。今年初のトランジションボンド。5億ユーロ(約780億円)発行。6度目。資金使途の明確化と投資家対応で、EUタクソノミー適合のほか、転換社債条項も(RIEF)

2023-09-28 01:32:35

SNAM001キャプチャ

 

 イタリアのガス大手のSnamは、同社として今年初となるトランジションボンドの発行で5億ユーロ(約780億円)を調達した。同社のトランジションボンドの発行としては6度目だが、ボンドの資金使途はEUのタクソノミー適合とし、さらに転換社債とすることで、投資家にアピールする形をとった。トランジションボンド市場はグローバルには極めて低調で、今年上半期の発行6本中、4本が日本の「グリーントランスフォーメーション(GX)」関連の発行となっている。

 

 Snamは、日本の発行体よりも先行する形で、2019年2月にメタン排出量を25%削減するため同社として初のトランジションを資金使途とする「気候アクションボンド」を発行している。同社は国際資本市場協会(ICMA)が「気候トランジションファイナンスハンドブック(CTFH)を公表する前に、自社のトランジションボンドフレームワークを設定し、以来、これまでのトランジションボンドの発行総額は31億5000万ユーロにのぼる。

 

 今回の発行分は期間5年、資金使途については、ICMAのCTFHでは定めていないEUタクソノミー適合としたうえで、株への転換条項を付与した点が従来とは異なる点だ。調達資金の使途は、同社が供給するガスネットワークに水素や他の低炭素ガスの混合量を増大させることで、ネットゼロへの経路を高めるとしている。

 

 株への転換条項は、Snamが発行株の13.5%を所有するイタリアのガス配送会社のItalgasの株への転換とする。発行日は9月29日とし、クーポンレートは3.25%。主幹事は、Bank of America Merrill Lynch、仏BNP Paribas、米JP Morgan、イタリアのUnicreditの4金融機関。このうち、BNPとJP Morganがボンドのストラクチャリングを担当した。セカンドオピニオンはトランジションボンドの評価を得意とするノルウェーのDNVが付与した。

 

 トランジションボンドのグローバル市場での今年上半期発行は本数が6本、発行額で7億7260万㌦だった。前年同期の20億㌦から半分以下に縮小し、発行本数も21年同期の10本からジリ貧。同ボンドの今年上半期の発行本数6本中、4本が日本で、あとは中国と、欧州復興開発銀行(EBRD)が1本ずつの発行。日本政府が「グリーン・トランスフォーメーション(GX)」政策推進で、同ボンドの発行を高炭素集約産業の企業に推奨しているため、日本がトランジションボンドの中心市場となっている。https://rief-jp.org/ct4/138088?ctid=69

 

 しかし、日本のトランジションボンドは、タクソノミーへの適合を前提としておらず、セカンドオピニオンには政府補助金が支給されるなど、グローバル市場からは「異質な市場」とみなされている。今回、久しぶりに同ボンドの発行に踏み切るSnamの場合、投資家の信頼を得るためCTFHへの適合だけでなく、EUタクソノミー適合等としたほか、株への転換で投資家への魅力を高める形をとった。

https://www.snam.it/en/media/news-and-press-releases/comunicati-stampa/2023/SNAM-ANNOUNCES-THE-SUCCESSFUL-PLACEMENT-OF-THE-FIRST-EVER-EU-TAXONOMY-ALIGNED-TRANSITION-BONDS-EXCHANGEABLE-FOR-EXISTING-ORDINARY-SHARES-OF-ITALGAS-DUE-2028-FOR-A-NOMINAL-AMOUNT-OF-EUR-500-MILLION.html