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石炭火力発電のバイオマス混焼および専焼化は「グリーンウォッシュ発電」。気候変動を加速させ、森林生態系を破壊する。内外の環境NGO90団体が共同声明(RIEF)

2023-04-13 16:53:11

Matsushimaキャプチャ

 

 内外の環境NGO90団体は11日、日本の石炭火力発電でバイオマス混焼やバイオマス専焼転換が進んでいることに対し、「気候変動を加速させ、森林生態系を破壊する『グリーンウォッシュ発電』」だとして、バイオマス混焼・専焼に反対する共同声明をまとめた。NGOによると、木材の炭素排出係数は石炭よりも大きいのに、日本政府は「カーボンニュートラル」とみなして燃焼時のCO2排出量を計上していない。バイオマス燃料生産のために森林伐採が進むと、森林が長期にわたり樹木や土壌等に蓄えた炭素が大気中に放出されるリスクも問題視している。

 

 (写真は、Jパワーが操業する松島火力発電所(長崎)。同発電所もバイオマス混焼。さらにガス化設備の付加やアンモニア混焼の計画も推進中)

 

 共同声明をまとめたのは、グリーンピース、FoEJapan、気候ネットワーク等や海外のNGOを含む90団体。声明によると、現在、すでに大手電力の石炭火力の約半数にあたる31基が混焼を実施中であるほか、再エネ電力の固定価格買取制度(FIT)が認定するバイオマス発電設備のうち少なくとも40件は石炭火力のバイオマス混焼設備で、そのうち35件は非効率石炭火力(亜臨界圧(Sub-C)もしくは超臨界圧(SC))という。

 

 これらの既存石炭火力発電所は、政府が旗を振るグリーン・トランスフォーメーション(GX)政策により、燃料転換策としてバイオマス混焼を進めている。

 

 バイオマス混焼の燃料となる木質ペレットは、FIT制度によるバイオマス発電の普及により、その輸入量は過去10年で61倍に増え、2022年には約441万㌧に上っている。石炭火力発電の設備容量は一般的なバイオマス発電よりもケタ違いに大きいため、石炭火力による混焼の促進に伴い、木質ペレット輸入量のさらなる増加が予想され、その結果、輸入先のアジアや北米の森林の伐採加速につながるとしている。

 

FoE001キャプチャ

 

 共同声明はバイオマス燃料の石炭火力混焼・専焼化が、CO2排出増加と森林伐採増加の両面で環境負荷を高めている点を踏まえて、石炭火力の混焼化、専焼転換に反対を表明した。第一の反対理由として、「気候変動を加速させる」点を強調している。

 

 バイオマス発電は火力発電であり、バイオマス燃料の燃焼により大量のCO2が大気中に排出される。しかし、樹木が成長の過程でCO2を吸収した分で相殺されるとの仮定のもとに、日本政府は同発電を「カーボンニュートラル」とみなしている。だが、バイオマス燃料の生産のために森林が伐採された場合、森林が長期にわたって樹木や土壌などに蓄えてきた炭素が一度に大気中に放出される。

 

 また伐採された森林が元の状態に回復する保証はなく、回復したとしても、大気中に放出されたCO2を回収し終えるまでには、数十年から数百年の長い年月を要する。加えて、森林の伐採・加工・輸送の各段階で、化石燃料由来のCO2が発生することからCO2排出量はさらに増える。特に日本は木質ペレットの多くを輸入に依存しており、輸送時にも大量のGHGを排出する。

 

 こうしたライフサイクル全体でのCO2排出と森林の回復に要する年月および森林が回復しない可能性を度外視し、バイオマス発電を「カーボンニュートラル」とみなすことは、気候変動を加速させる大きなリスクである、と指摘している。

 

 第二の反対理由は「石炭火力発電所を延命させる」点だ。パリ協定の「1.5℃」目標を達成するには、OECD諸国は2030年までに石炭火力を廃止する必要がある。しかし、経済産業省は、石炭火力の発電効率の算出にあたり、石炭投入量からバイオマス混焼分を控除する計算式を用いることで、見せかけの高効率化による非効率石炭の延命を行っていると指摘。

 

 専門家の試算では、バイオマスを混焼しない石炭火力発電所のCO2排出係数は0.84kg-CO2/kWhであるのに対し、発電効率38%の石炭火力発電所がバイオマスを5%混焼する場合には0.85kg-CO2/kWhへと増えることが明らかになっている。さらに、石炭火力のバイオマス専焼への転換および改修の促進も検討されているが、その場合のCO2排出係数は1.03kg-CO2/kWhとなる。

 

 第三の理由は、「森林生態系を破壊する」点だ。大規模バイオマス発電や石炭火力のバイオマス混焼に使われる木質バイオマス燃料は、大部分が東南アジアや北米から輸入されている。今後、日本に向けて大量のバイオマス燃料を供給しようとすれば、現地での森林伐採の圧力が高まり、森林減少・劣化や生物多様性喪失などの生態系への影響は計り知れない、としている。

 

 FIT制度の事業計画策定ガイドラインは、木質バイオマス燃料の持続可能性に関する明確な基準がなく、FIT以外のバイオマス発電には適用されない。生態系や生物多様性を脅かすバイオマス発電は、環境への負荷低減を掲げる再生可能エネルギーの根幹を揺るがす、と指摘している。

 

 NGOらはこうした理由をあげたうえで、日本政府に対する要求事項をあげている。

 

①バイオマス混焼の有無に関わらず、一刻も早く脱石炭を達成すること

②バイオマス混焼・専焼に対する支援を行わないこと

③廃棄物以外の燃料を使うバイオマス発電を再生可能エネルギーの対象から外し、補助金等による支援を行わないこと

④バイオマスの燃焼段階のCO2排出を発電所ごとに計上するよう義務づけること

⑤バイオマス燃焼のCO2排出を消費国がカウントし、自国の炭素勘定に含めること

https://www.kikonet.org/press-release/2023-04-11/NGO+Joint+Statement_biomass+co-firing_JP

https://www.kikonet.org/wp/wp-content/uploads/2023/04/Appendices-to-NGO-Joint-Statement_jp_20230411.pdf