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環境NGOの気候ネットと日本環境法律家連盟。JERAに続いて関西電力と、電源開発の広告についても「グリーンウォッシュ」として広告審査機構に中止勧告申し立て(RIEF)

2023-12-25 15:33:59

Jpowerスクリーンショット 2023-12-25 151522

 

  気候NGOの気候ネットワークは25日、関西電力と電源開発がメディアやネット等で、アンモニア・水素燃料や、原子力発電等を、「CO2を排出しない燃料による発電」「CO2フリーの水素発電」などとする広告を展開していることについて、「事実に基づかず、根拠も示されていない。『1.5℃目標』の実現に貢献するものでもなく、消費者をミスリードする」として、日本環境法律家連盟(JELF)とともに、日本広告審査機構(JARO)に対し、広告掲載中止を勧告するよう申し立てを行った。気候ネット等は、10月にJERAの広告についても、同様のグリーンウォッシュ広告だとして排除するよう申し立てている。

 

 また気候ネットは同時に、JAROに対して、広告審査のプロセスや審査基準等の明確化、裁定結果の公表、広告主体からの独立性の担保等を求める提言も公表した。すでに申し立ているJERAの審査について、2カ月以上経過しているにもかかわらず、JEROが審査の可否を示していないことを踏まえ、審査の迅速化・透明性・中立性を求める内容だ。

 

 新たに「グリーンウォッシュ広告」の懸念で審査を申し立てた2社のうち関西電力の広告は、石炭火力発電で混焼するアンモニアを「CO2を排出しない 燃料」と表示し、再エネの模型や絵を掲げて、同社の販売する電気が「CO2フ リー電気」と強調する内容。また、原発の模型を掲げ「CO2を出さずに電気を安定的に供給できる、原子力発電のさらなる可能性の拡大」とし、「ゼロカー ボン発電で明るい未来へ」とのキャッチコピーを流している。

 

関西電力がCO2ゼロを強調するロゴ(同社サイトから)
関西電力がCO2ゼロを強調するロゴ(同社サイトから)

 

 しかし、申立では、石炭火力での水素・アンモニア混焼によるCO2排出削減効果はほとんどなく、2030年までに電力セクターからのCO₂排出を半減さ せるグローバルな目標には到底、間に合わない、と指摘。同発電は再エネに比べて高コストで、消費者にとって気候変動対策として望ましい電気といえないとしている。

 

  原発についても、「福島原発事故の例をいうまでもなく、事故時の放射能汚染の危険性があり、日本のどこにも高レベル放射性廃棄物の最終処分適地がなく、処理・処分方法も定まっていない、極めて高コストの発電」と強調している。

 

 電源開発も広告で、石炭をガス化し、水素を生成して燃焼させる火力発電を「CO2を排出しない水素発電」としてアピールしている。だが、同社が同方式で発電しているのは、所有する石炭火力のうち松島石炭火力2号機のみに予定されているものに過ぎない。発生するCO2の分離回収率も明らかにされず、回収したCO2の貯留についても場所・時期・規模等は明らかでない。こうしことから気候ネット等では「CO2を排出しない水素発電」とはいえないとしている。

 

「脱炭素」をアピールする電源開発
「脱炭素」をアピールする電源開発

 

 しかも、関西電力の水素・アンモニア混焼発電と同様に、電源開発の「水素発電」も再エネよりも高コストになり、そのコストは消費者に転嫁されるため、「気候変動対策として望ましい電気」と言えない、としている。

 

 関電も、電源開発も、「CO2を出さない」とする発電手法を広告で強調することで、地球環境のために「(化石燃料から)CO2を出さない電気」を供給できると消費者に誤認させることに加えて、両社を地球温暖化防止のために画期的排出削減を行う事業者だとの「誤った印象」を消費者に与えると指摘。いずれも「広告操作」の懸念がある点を強調している。こうした点で、「これらの広告は景品等表示法及び環境表示ガイドラ インにも抵触する」と申し立て理由をあげている。

 

 気候変動の進展を受け、温暖化の原因となるCO2等の温室効果ガスの多排出企業がアピールする、企業の広告や表示、資金調達(グリーンボンド)等への「グリーンウォッシュ懸念」はグローバルに高まっている。欧州ではすでに金融機関や航空会社の広告の「ウォッシュ懸念」から排除勧告を出す事例が増えている。日本では、広告審査の公的な機関はなく、JAROが自主的団体として対応しているが、企業や広告業界からの独立性への疑念も出ている。今回、気候ネットが、JAROへの提言を合わせて発表したのは、そうした懸念払しょくをJARO自体に求める形だ。

 

https://kikonet.org/content/33324

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