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JERAの「アンモニア混焼実証実験」報道は「グリーンウォッシュ加担報道」。環境NGOが指摘。特に「時事通信、日本経済新聞、NHK、名古屋テレビ放送」。混焼の問題点に触れず(RIEF)

2024-04-04 00:32:58

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写真は、JERAのアンモニア混焼実証実験を報じるNHKの映像=3月13日放送から)

 

 環境NGOの気候ネットワークは、日本最大のCO2排出企業であるJERAがアンモニア混焼の石炭火力発電を「ゼロエミッション火力」等とする広告を展開していることに対し、「グリーンウォッシュ広告」として広告審査機構(JARO)に申し立てているが、そのJERAが碧南火力発電所(愛知県)で先月、アンモニア20%混焼の実証実験を開始したことを紹介する報道各社の記事が、アンモニア混焼が実際には「1.5℃目標」の実現と整合しない等の問題点に触れていないとして、「結果として、グリーンウォッシュに加担する記事」になっている」との声明を出した。特に、時事通信社、日本経済新聞、NHK、名古屋テレビ放送の報道内容は、JERAの主張をそのまま報じる内容で「グリーンウォッシュ加担報道」の懸念があると指摘した。

 

 気候ネットワークによると、JERAは3月13日、所有する碧南火力発電所(愛知県)において、アンモニア20%混焼の実証試験を3月26日に開始する(現在、継続中)として、報道陣向けにアンモニア混焼用の燃焼装置や配管、アンモニア貯蔵タンクなどを公開した。これを受けて、報道各社は碧南火力発電所でのアンモニア20%混焼の実証試験開始について報じた。

 

4月1日配信の日経電子版での記事抜粋
4月1日配信の日経電子版での記事抜粋

 

 しかし、同団体は、「石炭火力発電でのアンモニア燃料利用の推進は気候変動対策のグリーンウォッシュであり、パリ協定の1.5℃目標実現に向け世界が急ぐ脱石炭火力の取り組みに反している」と指摘。同団体が検証したところ、各報道機関によるアンモニア混焼実証実験報道では、アンモニア混焼方策が実際のCO2の排出削減にほとんど寄与せず、1.5℃目標の実現と整合しない等の問題点に触れた内容の報道はほとんどなかった、としている。

 

 JERAはこれまでも新聞、テレビ、インターネット等の各種広告媒体を使って、アンモニア混焼による石炭火力発電について、「2050年カーボンニュートラル」「ゼロエミッション火力」「CO2の出ない火」等の主張を繰り返している。しかし、同団体は、「こうした広告におけるJERAの主張には科学的根拠が示されておらず、事実にも反する『グリーンウォッシュ』だ」として、昨年10月、日本環境法律家連盟と共同で、日本広告審査機構(JARO)に対して、JERAへの広告中止勧告を求める申立を行っている。

 

 JERAは碧南火力の4号機(100万kW)の燃料にアンモニアを20%混焼させる実証試験を、燃焼装置を開発するIHIと共同で約3か月間行う予定。大型の商業炉でのアンモニア20%混焼は世界初とされ、JERAはアンモニア20%混焼によって燃焼時のCO2排出量を20%削減、2027年度以降に20%混焼の商用化、さらに2050年までにアンモニア100%専焼の実用化を目指すとしている。

 

JERAの実証実験を報じるNHKの放送(3月13日)
JERAの実証実験を報じるNHKの放送(3月13日)

 

 だが、石炭火力でのアンモニア燃料混焼は、先進諸国が脱石炭火力を求められている2030年はおろか、2050年になっても石炭火力を維持することにもつながる。本来取り組むべき気候変動対策とは逆行するもので、諸外国からも懸念が示されている。さらに、今回実証実験で使用するアンモニアは、化石燃料由来の「グレーアンモニア」であり、製造時にCO2を排出しており、20%混焼の場合でも、ライフサイクルで評価したCO2削減効果は20%を大きく下回る。

 

 また通常の火力発電よりコスト高となる。報道ではこうした点についてもほとんど紹介しないまま、JERAの主張に基づいて実証実験を紹介した。アンモニアや水素の火力発電混焼による高コスト分については、事業者が事業リスクとして引き受けるのではなく、国が補助金で支援するか、あるいは電気料金に上乗せして支援する法律(水素・アンモニア等供給利用推進法)も経済産業省によって用意されている。こうした日本のアンモニア混焼路線については、国際的にも「ネットゼロと整合しない」と批判されている。

 

 気候ネットワークは「確認する限りにおいて、本件についての報道(時事通信社、日本経済新聞、NHK、名古屋テレビ放送)は総じて、「CO2を出さないアンモニア」「2050年までにCO2を排出しない『ゼロエミッション火力』実現を目指す」といったJERAの主張をそのまま報じる内容であり、アンモニア燃料の製造時・輸送時のCO2排出やコストの高さ、1.5℃目標と整合しないことなど、課題点を説明した報道はありませんでした。事実に反するJERAの主張を批判的視点なしに報道することは、グリーンウォッシュに加担するものとして、懸念を表明します」としている。

 

 RIEFの確認によると、時事通信は3月15日の配信記事中で「延命批判も」として、「ただ、再生可能エネルギーが普及する欧州からは『火力発電の延命策』との批判が上がる」との指摘を加えている。https://www.jiji.com/jc/article?k=2024031401052&g=eco

https://kikonet.org/content/34302

https://www.jera.co.jp/news/information/20240401_1863