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日本政府と企業・金融機関による海外での新規LNG事業展開は「G7合意違反」。アジア、アフリカ、米国等の各国の住民団体らが国際連携で一斉抗議行動(RIEF)

2024-04-25 18:28:50

JBICの担当者に申立書を提出するフィリピンの住民代表たち

写真は、JBICの担当者に、抗議文を提出するフィリピンの住民団体の代表ら=FoEJapanサイトから)

 

 今月末(28~30日)にイタリアで開くG7気候・エネルギー・環境大臣会合に向け、アジア、アフリカ、米国等の国々で市民団体や地元住民、NGO等が、液化天然ガス(LNG)事業への日本の投融資増大に抗議する一斉行動を展開した。G7参加国の中でも日本だけに照準を合わせた国際的抗議行動が展開されたのは、2022年のG7サミットで「化石燃料セクターへの新規の国際的直接支援を終了する」とした合意を、日本政府が守っていないためとしている。官民連携のLNG開発事業の展開に加え、3メガバンク等によるそれらの事業への金融支援も抗議の対象になっている。

 

 2022年6月にドイツで開催されたG7首脳会合では、LNGを含め新規の化石燃料事業への国際的な直接支援を終了することが合意された。しかし、環境NGOのFoE Japanによると、日本政府は、今年3月だけでもオーストラリアのスカボロ・ガス田開発事業、メキシコのサン・ルイス・ポトシ及びサラマンカでのガス焚複合火力発電事業、ベトナムのブロックBオモン事業で、「G7合意」を無視する形で、官民主導での事業化・ファイナンス化を展開しているとしている。

 

 いずれも日本の商社や電力会社等が事業主体で、国際協力銀行(JBIC)や独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)等が公的金融支援を提供、それを受ける形で、3メガバンク等が協調融資をするという「日の丸官民連携方式」だ。これまでアジア各国で石炭火力発電事業を展開してきた官民連携方式の事業モデルの対象事業を、石炭火力からLNGに置き換え、アジアでの化石燃料ビジネスで、引き続き収益をあげようというわけだ。

 

 FoE Japanによると、「ガスが『クリーン』で、エネルギー移行に必要な『トランジション燃料』である」という日本政府の主張に対し、日本のみならずフィリピン、インドネシア、タイ、バングラデシュ、アメリカ、モザンビーク、カナダ、オーストラリア等の国々で、住民中心の抗議活動「#SayonaraFossilFuels(さよなら化石燃料)」が展開された。

 

バングラデシュでは、日本は同国の統 合エネルギー・電力マスタープラン( IEPMP)に
バングラデシュでは、日本が同国の統合エネルギー・電力マスタープラン(IEPMP)に、高コストのLNGを盛り込むよう圧力をかけているとして、住民らが抗議行動
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 LNG事業による健康・環境・人権問題を踏まえ、日本に対し化石燃料への投融資をやめるよう求める署名活動も、アジア太平洋、アフリカ、欧米等の26ヶ国95団体が賛同する形で、グローバルレベルで進められているという。

 

 各国の市民やNGO等が懸念を深めているのは、日本の公的輸出信用機関であるJBICによるLNG事業への金融支援だという。フィリピンを拠点とする市民団体「Center for Energy, Ecology, and Development(CEED)」によると、JBICはパリ協定以降、東南アジアで最も多額の資金支援を、化石燃料であるLNG事業に提供している。これらのJBIC案件には、フィリピンのイリハンLNG輸入ターミナル事業のように、土地転換令を取得せずに工事を開始したことで、当局から工事の停止命令が出るなどの「違法案件」も含まれていると指摘している。

 

 同案件に対して、地元の漁民団体らが昨年末、JBICに対して異議申立てを行った。これに対して、JBICの環境ガイドライン担当審査役が今年2月末に現地調査を実施し、JBICが定める「環境社会配慮確認のための国際協力銀行ガイドライン」への違反の有無を確認中とされる。NGOらは「JBICは地元住民の訴えに真摯に耳を傾け、環境・人権上の問題の大きいLNG事業への支援を停止すべき」と強調している。

 

 各団体は、何よりも、日本政府がG7の一員ならば、国際公約である「2022年のG7合意」を守るべきであり、G7合意を無視するようなLNG事業への官民支援は、即刻停止すべき、としている。G7合意の確認とコミットメントを、28日からのG7気候・エネルギー・環境大臣会合で明確にし、「さよなら化石燃料」を確実に早期に実現する合意が結ばれるよう尽力すべき、と求めている。

 

 一斉行動に参加したインドネシアのWALHI(インドネシア環境フォーラム)のキャンペーン部門責任者、ファニー・トリ・ジャンボレ氏は「 西ジャワ州のジャワ1ガス発電所、中スラウェシ州のドンギ・スノロLNG、西パプア州のタングーLNGなど、JBICが支援するインドネシアのガス事業は、著しい環境破壊を引き起こし、人々の生計手段の損失あるいは喪失をもたらし、先住民族や地域コミュニティを強制移転させている。『地球沸騰時代』の最中、環境と人権に多くの悪影響を及ぼす化石ガス事業に対して日本が支援し続ける理由はない」と指摘している。

 

 フィリピンのAsian Peoples’ Movement on Debt and Development (APMDD)のコーディネーター、リディ・ナクピル氏も「日本は、アジアを気候危機に陥れるための長く汚い道に導くのをやめるべき。JBICはガス事業によって、グローバル・サウスのコミュニティを苦しめてきた。私たちは日本の化石燃料への資金支援を拒否しなければならない」と述べている。

 

 Oil Change Internationalのシニアファイナンスキャンペーナーの有馬牧子氏は「段階的な脱化石燃料が必要な今、日本はアジア全域で、そして世界規模でガス事業の拡張を推進している。日本は特に、アジア・ゼロ・エミッション共同体構想を通じてアジアでのガス拡大に積極的だが、これは日本企業の利益を図るためのグリーン・ウォッシングに過ぎない。日本は、化石燃料への資金支援を廃止するというG7のコミットメントを遵守し、地域社会や地球に害を与える事業を支援することをやめるべきだ」としている。

https://foejapan.org/issue/20240425/17228/

https://foejapan.org/wpcms/wp-content/uploads/2024/04/MediaBackgrounder.JBIC_.G7LNG.pdf