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英環境法律家団体「ClientEarth」。日本に拠点開設。日本企業のグリーンウォッシュや、トランジションウォッシュに照準。グリーンウォッシュ広告や、政府の気候政策訴訟で「戦果」(RIEF)

2024-06-11 22:29:03

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写真は、来日したClientEarthの代表、ローラ・クラーク氏)

 

  政府の気候対策の不十分さの法的責任を問う気候訴訟等をグローバルに展開する英非営利団体である「ClientEarth」が、東京に拠点を設置した。同団体は環境専門家と法律専門家による組織で、脱炭素化に向けた企業の対策が実態を伴わないグリーンウォッシュとみなされる場合の企業の法的責任を、日本市場でも追及するほか、日本政府が推進するトランジションファイナンス政策で指摘される「トランジションウォッシュ」等もターゲットに見据えた活動を想定しているようだ。

 

 同団体の代表、ローラ・クラーク氏が来日し、11日に都内で記者会見を開いた。同氏は「日本の政府や企業等と協力しながら、グリーンウォッシュがない気候活動、同対策の推進を支援していきたい」とした。そのうえで、日本政府がグリーン・トランスフォーメーション(GX)政策の中で、石炭火力発電をアンモニア混焼等で脱炭素に移行させる政策を打ち出していることを念頭に置いた形で、「トランジションファイナンスがインテグリティ(健全性)を欠いた状態となると、長期のリスクを抱え込むほか、むしろ移行を遅らせ、企業の資本配分を損なう」等と懸念を示した。

 

 同団体は、2022年7月にオランダの航空会社「KLM」が持続可能な航空燃料(SAF)混焼によるフライトを「サステナブル航空」として広告キャンペーンを展開したことに対して、環境NGOとともに、グリーンウォッシュだとして提訴。今年3月に「KLMの広告の多くは誤解を招くもので違法」との勝訴判決を得た。また、英国政府が推進する気候対策が、2050年のネットゼロ目標と合致していないとする同国政府を相手取った訴訟でも、2度にわたって勝訴するなどの実績をあげている。https://rief-jp.org/ct4/126472?ctid=

 

記者会見するクラーク氏㊨と、日本担当のラファエル・ソファー氏㊧
記者会見するクラーク氏㊨と、日本担当のラファエル・ソファー氏㊧

 

 団体は2008年に設立され、現在、欧州を中心として世界8都市(東京を含む)に拠点に置いている。一般的に、NGOや非営利団体の環境活動としては、市民向けのキャンペーンのほか、当局や企業に対するアドボカシー活動等を中心とするところが多い。これに対して同団体の場合、環境専門家と法律専門家ら約300人で構成し、気候対策や生物多様性の損失、汚染等の解決に、法的措置の活用を重視する点が特徴だ。

 

 これまでの主な活動は欧州が中心となってきたが、数年前から、世界の人口の6割を占め、温室効果ガス(GHG)排出量の5割を占めるアジアでの気候対策の是正に力を入れている。すでに中国・北京に拠点を置き、中国のほかインドネシア、フィリピンなどの諸国でのエンゲージメント活動に力を入れている。東京オフィスの開設はアジアで二番目の拠点となる。

 

 同団体は各国の法律専門家がメンバーにいるため、政府に対しても法的措置を講じる行動力で知られる。訴訟等に際しては、当該地域の環境NGO等と連携する形での取り組みが多い。東京オフィス開設について、クラーク氏は「日本は主要経済国の一つであり、GHG排出量も世界で5番目に多い。鉄鋼、電力、自動車等の高排出企業を抱え、グリーントランジションが重要な課題」と指摘した。さらに「日本の金融機関は化石燃料向けのファイナンスを抱えており、ネットゼロに向けたグローバル競争において、重要な岐路に立っている」との見方を示した。

 

 東京オフィスの暫定所長の立場にある弁護士の山下朝陽氏は、日本の財務省が発行するGX移行経済債(GX国債)の資金使途について次のように述べた。「欧米の企業は、リスクのある技術に投資して損失を出した場合、説明責任があるので投資家から訴えられるリスクがある。そうした投資家はリスクのある技術(石炭火力発電へのアンモニア混焼等)への投資はしたくないと考える。(GX国債も)欧米の投資家に投資してもらうためには、資金使途に国際的な信認が得られるかがカギだ」。

https://www.clientearth.jp/

https://www.clientearth.asia/clientearth-in-asia/