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JERAの「グリーンウォッシュ広告」に対するNGOらの申し立てに対し、日本広告審査機構(JARO)は7カ月間の無回答の後、「門前払い」の通知(RIEF)

2024-06-08 00:26:56

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  国内最大のCO2排出企業であるJERAが、テレビやネット等で、アンモニア混焼による石炭火力発電事業を「CO2の出ない火」として大々的に広告を展開している広告は「グリーンウォッシュ広告だ」として環境NGOと弁護士団体が、広告を審査する自主的団体の日本広告審査機構(JARO)に広告中止の勧告を申し立てていた件で、JAROは申し立ての審査はしないと、「門前払い」の判断を通知した。化石燃料関連企業の「誇大広告」については、国連のグレーレス事務総長が、広告の禁止を呼び掛けている。

 

 JERAの広告の掲載中止の勧告をJAROに申し立てていたのは、環境NGOの気候ネットワークと日本環境法律家連盟(JELF)の両団体。

 

 東京電力と中部電力の石炭火力発電所等の発電所を集約して設立されたJERAは、日本最大の火力発電会社であり、それらの火力発電所の脱炭素化の取り組みとして、アンモニアを石炭等と混焼してCO2排出量を段階的に削減する方針を打ち出している。そのアンモニア混焼による発電を「CO₂が出ない火」による発電、と主張する広告を、テレビ、新聞、ネット等で展開している。

 

 これに対して両団体は、JERAが2030年時点で実現を想定するアンモニア混焼率は20%でしかなく、残りの80%は従来通りのCO2排出削減を続けるため、パリ協定が目標とする「1.5℃目標」とは整合しないと指摘。さらに2050年に100%専焼を目指すとする点も、あくまでも同社が掲げる「目標」に過ぎず、「1.5℃目標」と整合できるかどうかは、将来にならないと判断できない、とし、先行き不透明なのに、現時点で「CO2が出ない火」と決めつけるのは、誇大広告であり、消費者を欺く「グリーンウォッシュ」、と批判している。

JAROが消費者に呼びかける「怪しい広告」をなくすための審査手順

JAROが消費者に呼びかけている「怪しい広告」をなくすための審査手順

 

 JERAは今年からアンモニア混焼20%の実験を開始した段階。同混焼技術に、CO2排出削減効果があるかどうかは実験結果が得られないとわからない。仮に混焼で発電できたとしても、その分コストが高くなり、実際の発電に使えないリスクも抱えている。しかし、同社の広告ではこうした将来の不確実性については、一切説明していない。

 

 両団体は、JERAの広告は、アンモニア混焼でのCO2削減効果を過度に強調し、あいまいな表現を用いることで、消費者に「アンモニア混焼の火力発電はCO2排出がない火力発電であり、その発電による電気は環境に配慮した電気だ」と誤認させるうえ、JERA自体が地球温暖化防止のために画期的排出削減を行う事業者、との誤った印象を与えようとしていると、問題視している。https://rief-jp.org/ct7/139528?ctid=

 

 こうした点を踏まえて、両団体は昨年10月にJAROに対して、JRAの広告掲載の中止勧告を求める申し立てを行った。さらに昨年12月には、関西電力と電源開発についても、アンモニア・水素燃料や、原子力発電等を、「CO2を排出しない燃料による発電」「CO2フリーの水素発電」などとする広告を展開しているのは、「事実に基づかず、根拠も示されていない。『1.5℃目標』の実現に貢献するものでもなく、消費者をミスリードする」としてJAROに追加申し立てをした。https://rief-jp.org/ct7/141609?ctid=

 

 ところが、JAROは両申し立てに対して、申立者からの意見聴取等の取り組みは一切せず、最初のJERAについての申し立てから7カ月以上経過した先月28日付で、両団体に対して「審査しない」との回答を通知した。審査しない理由等については言及せず、「当機構が可能な広告・表示に関する判断の範囲を超えている」との理由を付け加えているという。

 

 化石燃料を生産するエネルギー企業や、化石燃料で飛行する航空会社等の広告で、環境に優しい、ネットゼロを目指す等の文言を使うことに対して、欧州等では「事実に基づかない広告」として広告掲載を禁止する動きが広がっている。

 

「グリーンウォッシュ広告を掲載するな」と、世界に呼びかけたグテーレス国連事務総長
「グリーンウォッシュ広告を掲載するな」と、世界に呼びかけたグテーレス国連事務総長

 

 グテーレス国連事務総長は今月5日の演説で、世界の広告業界に対して「化石燃料を扱う新たなクライアントの仕事を引き受けるのをやめ、既存の(化石燃料業界の)クライアントからは撤退しよう。化石燃料は地球を汚染しているだけでなく、あなた(広告会社)のブランドにとっても有害だ」と呼び掛けた。さらに各国政府に対しても「すべての国に対し、化石燃料企業の広告を禁止するよう求める」とした。https://rief-jp.org/ct4/145988

 

 JAROは広告業界、広告主の大手企業と、その広告を掲載する新聞・テレビ、雑誌などどのマスコミで構成する自主的団体だ。サイトを見ると、自らの活動について、「消費者に迷惑や被害を及ぼすウソや大げさ、誤解をまねく広告を社会から無くし、良い広告を育む活動を行っている」と説明。そのうえで「JAROは、正しい広告を育てることを目指している。 それは、消費者と広告する側が相互に信頼しあえるようにするためです」とし、広告に対する苦情審査の手順等を示している。だが、その手順の中には、今回のJERAに関する申し立てに対するような「門前払い」の手続きは含まれていない。

                           (藤井良広)

https://www.jaro.or.jp/about/works.html