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グテーレス国連事務総長。地球温暖化加速は人類自身が「危険な存在」と指摘。温暖化の元凶である化石燃料業界の広告を禁止するよう呼びかけ。日本でもJERAの広告が該当(RIEF)

2024-06-06 18:12:09

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  国連のグテーレス事務総長は5日の「環境の日」に合わせ、気候変動について演説し、地球温暖化の進展が止まらない状況を踏まえ、恐竜が巨大な隕石(いんせき)の衝突をきっかけに絶滅したとされる例をあげた。「気候の場合、私たちは恐竜ではなく隕石だ」「私たちこそが危険なのだ」と、「行動しない人類」が自ら地球を危機にさらしていると警鐘を鳴らした。そのうえで、温暖化の元凶である化石燃料業界が気候対策を遅らせるため、「グリーンウオッシュ広告」を展開していると指摘、同業界の広告を禁止するよう各国に呼びかけた。

 

 グテーレス事務総長は同日、ニューヨークの博物館で演説した。同氏は、地球が危機的状況にあることを改めて訴えるとともに、温暖化の元凶である化石燃料業界が各国政治家や政府へのロビー活動や、消費者向けのイメージ広告等を大量に展開し、気候変動対策の実施を遅らせていると批判。「恥知らずのグリーンウオッシュを行っている」と強く指摘した。

 

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 化石燃料関連業界の「クリーン広告」キャンペーンは日本でも、国内でCO2排出量が最大の火力発電会社JERAが、アンモニア混焼石炭火力発電を「CO2の出ない火」として各方面で広告を展開していることが指摘されている。環境NGOの気候ネットワークは昨年10月、こうした広告は電力需要者等に誤解を与える「グリーンウォッシュ広告」だとして、公益社団法人日本広告審査機構(JARO)に、同社に対して広告中止勧告をするよう申し立てを行っている。https://rief-jp.org/ct7/139528?ctid=

 

 ただ、JAROはそうした申し立てに対して一切反応せず、申し立てを「無視」する形をとっている。このため、JERAの広告は「野放し状態」の扱いになっている。JAROはマスコミ各社と広告業界とが主なメンバー。広告を作成し、掲載するメディアの代表で構成する自主団体だ。

 

アンモニア混焼ですでにネットゼロが実現したかのようにアピールするJERAの広告
アンモニア混焼ですでにネットゼロが実現したかのようにアピールするJERAの広告

 

 国連事務総長は、日本だけでなく、各国でこうした化石燃料関連業界による「グリーンウォッシュ広告」が長年展開されてきたと指摘。そうした企業による広告や、同業界による、各国政府や国際機関等に対するロビー活動等も相まって、各国の気候変動対策の実施が遅らされてきたと強調した。

 

 「彼らは、広告会社やPR会社(「マッドメン」というテレビシリーズを覚えているだろうか)に幇助され、狂気を煽ってきた。私はこれらの企業に、惑星破壊(地球温暖化のこと)の手助けをするような行動をやめるよう呼びかける」

 

 「今日から、化石燃料を扱う新たなクライアントを引き受けるのをやめ、既存の(化石燃料業界の)クライアントから撤退する計画を立てよう。化石燃料は地球を汚染しているだけでなく、あなた(広告会社)のブランドにとっても有害だ」

 

 

 「あなたの業界には、すでにこの問題に取り組んでいるクリエイティブな人材が大勢いる。彼らは、地球を破壊するのではなく、地球のために戦っている企業に惹かれている」などと、広告業界に呼びかけた。

 

 同氏はさらに各国政府にも行動を求めた。「多くの政府は、タバコのように人の健康に害を及ぼす製品の広告を制限または禁止している。現在、化石燃料についても同様の措置をとっている国もある。そこで、私はすべての国に対し、化石燃料企業の広告を禁止するよう求める」とした。

 

インタビューにも答えるグテーレス氏
インタビューにも答えるグテーレス氏

 

 さらにメディアにも呼び掛けた。「ニュースメディアやハイテク企業には、化石燃料の広告を取り上げるのをやめるよう求める」と。

 

 日本の気候ネットワークは、申し立てをしているJERAが碧南火力発電所(愛知県)で、アンモニア20%混焼の実証実験を開始したことを紹介する報道各社の記事が、アンモニア混焼が実際には「1.5℃目標」の実現と整合しない等の問題点に触れていないとして、「結果として、グリーンウォッシュに加担する記事」になっている」と批判する声明も出している。https://rief-jp.org/ct7/144286?ctid=

 

 特に、時事通信社、日本経済新聞、NHK、名古屋テレビ放送の報道内容は、JERAの主張をそのまま報じる内容で「グリーンウォッシュ加担報道」の懸念があると指摘している。

 

 グテーレス氏は企業広告をとりあげるメディアの姿勢についても指摘をしたうえで、「私たちは、需要側にも対処しなければならない。 クリーンな技術を採用し、化石燃料を段階的に減らし、市民としての力を行使して制度改革を推進することで、私たち全員が変化をもたらすことができる」「住みやすい未来のための闘いにおいて、人々は政治家よりもはるかに先を行っている。あなたの声を聞き、あなたの選択を大切にしよう」と、一人一人の判断を高めることを求めた。

 

 「私たちには選択肢がある。気候変動の進歩のための転換点を作るか、それとも気候変動の災厄のための転換点に向かうか。どの国も単独で気候危機を解決することはできない。今こそ全力を尽くす時だ」

https://www.un.org/sg/en/content/sg/statement/2024-06-05/secretary-generals-special-address-climate-action-moment-of-truth-delivered-0

https://www.un.org/sg/en/latest/sg/statement