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全国の放送局で天気予報を担当する気象予報士・気象キャスターらが「気象予報と気候変動の情報を関連づけて発信する」と共同宣言。気候変動による異常気象の増大化に危機感(RIEF)

2024-06-05 23:54:33

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写真は、気象のプロとしての決意を表明する「お天気おじさん」や「お天気お姉さん」の代表たち)

 

 「環境の日」の5日、テレビやラジオの番組で天気予報を担当する気象キャスターや気象予報士たちが、日常的な気象の説明と気候変動を関連づけた情報発信を進めていく、とする共同宣言を行った。日々のニュースで、毎年のように、猛暑や台風、集中豪雨の激化が内外で発生するが、テレビやラジオでの天気予報では、そうした気象現象と気候変動の関係を正面から取り上げる機会が少ない。こうした事態に、「気象のプロ」たちが懸念を抱き、今回の組織を超えた共同宣言に至ったという。

 

 同日、東京の国連大学本部で、NHKや民放等のメディアで天気予報を担当している44人の気象キャスターや気象予報士を代表する形で、朝日放送「おはよう朝日です」で天気予報を担当している正木明氏が共同声明を読み上げた。

 「気象予報士・気象キャスターの多くは気候変動に危機感を持っています。天気予報の時間枠に限らず、私たちは『日常的な気象と気候変動を関連付けた発信』を目指し、気候変動問題解決に向けた命と未来を繋ぐ行動を加速させます。専門家や各メディアとの連携、協力を強化し、気象予報士・気象キャスターが気候危機解決への架け橋になります」と宣言した。

「天気予報」がこのところはずれるのは「気候変動のせいだよね」「日本政府も真剣にやってもらいたい」などと話しているのかな?
「天気予報が最近、外れるのは、気候変動のせいだよね」「日本政府も真剣に対策をとってもらいたいなあ」ーー等と話しているのかな?

 

 気象予報士たちは、共同宣言に先立って、5月22日に「『気象と気候変動を関連づけた発信』の現在地〜気象研究所の最新動向や海外先行事例〜」と題した勉強会を開いている。勉強会には、全国から150人以上のメディア関係者や気象予報士が参加。問題意識の共有化を図った。勉強会で公表された気象予報士・気象キャスター対象のアンケートでは「130名の回答者のうち99%の人が気候変動問題に関心を持ち、90%以上が気象情報の中で気候変動に対する危機感を持っている」ことが報告された。

 

 こうした「危機感」を踏まえ、今回の共同声明に至ったわけだ。「お天気おじさん」「お天気お姉さん」でおなじみの気象予報士や気象キャスターらは、視聴者/読者にとって身近な存在でもあり、日常的に気候情報についても伝えられる立場にある。天気予報も時々、外れることがある。その影響も気候変動によるものかもしれない。天気予報については、「言いっ放し」や空手形の多い政治家の発言とは違って、視聴者/読者の信頼もおおむね厚い。

 

 ただ、個人個人の気象予報士やキャスターが気象と気候の関連性を表明するとしても、「放送時間が限られている」ほか、IPCCやCOPがどうした、と天気予報の番組で話しても、「専門的で難しい」「視聴者/読者や社内の関心がない」等の批判を局内から受ける懸念もある。テレビ局によっては「無難な天気予報」の枠からはみ出ることを嫌うところもありそうだ。

 

 しかし、地球温暖化の進展による異常気象は、世界各地で猛暑、豪雨、洪水、干ばつなどの被害を拡大させているのは紛れもない事実だ。毎年のように、国内の各地で発生する土砂崩れ、洪水、浸水等の影響は、農作物被害や交通障害、生活の危機も高めている。日本だけではない。

 

 米イエール大学の調査では、世界のおよそ70%の人々が、気候変動を解決する方法についての情報を求めている。日本では気候変動が「非常に重要/極めて重要」と答えた人は55%。一方「重要ではない」と答えた人はわずか12%と、気候変動に対する懸念は国民の間に広がっている。

 

 また内閣府「気候変動に関する世論調査」では、気候変動の影響に関する情報について、9割以上の人がテレビやラジオから情報を得ているとしている。「天気予報」がその重要な情報源の一つなのだ。こうしたことから、気象予報士・気象キャスターの役割の重大さが改めて注目されており、こうした状況を踏まえ、気象予報士やキャスターらの「気象のプロ」たちが、自ら立ち上がったといえる。

 

 正木氏と、気象キャスターネットワークの井田寛子氏が全国の仲間に呼びかける形を取り、NHKや民放等で天気予報番組に登場している気象予報士や気象キャスターらが、局や会社の枠を超えて、賛同した。気象予報士たちの今回の「連帯の決意」と同様に、毎年のCOP会議を取材している各メディアのジャーナリストたちも、もっと「職業意識」を高め、各国の政策を厳しく評価し、政策を動かすような取材と報道を展開してもらいたいものだ。

                       (藤井良広)

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000008.000128060.html