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英法務省、再エネ発電促進のため、国内19カ所の刑務所や拘置所の屋根に太陽光発電設置へ。2022年中に整備。「グリーン刑務所」だ。元空軍基地等の「グリーン化」も進む(RIEF)

2021-08-23 08:30:37

prison001キャプチャ

 英政府は「2050年ネットゼロ」を実現する一環として、全国に点在する刑務所・拘置所の屋上に、太陽光発電を整備することを決めた。全国19カ所に合計1万6000枚の太陽光パネルを整備し、年間1300㌧のCO2排出量を削減する。今後数カ月以内に、先行する3刑務所で実施、2022年の初めには19カ所全体に整備する計画だ。ただし、刑務所の収容者数が増えると、設備工事が遅れる可能性もあるとしている。わが国では、刑務所だけでなく、官公庁等の公的施設の屋上には、すべて太陽光パネルを敷き詰めてもらいたい。

 英法務省と、HMP刑務所・拘置所サービスが発表した。それによると、まずイングランドのオックスフォードシャーにある Bullingdon、ウイルトシャーのErlestoke、ノーフォークのWaylandの3刑務所の屋根に、数カ月以内にパネルを設置するほか、残りの16カ所についても来年の春に設置にとりかかるとしている。設備資金は1200万ポンド(約18億円)。

 全部の刑務所に太陽光発電設備を展開すると、刑務所での電力の約20%を自前でまかなえることから、刑務所経費等が年間約80万ポンド(約1億2000万円)節約できるという。発電量は合計で年間7000kWhの見通し。

 

 刑務所・拘置所担当大臣のAlex Chalk氏は「コロナ禍からの回復を意味する『Build back better』よりも『Build back safer かつgreener』として、我々の刑務所は政府の野心的環境政策の一翼を担うことになる」と指摘している。

 

 環境NGO等は、刑務所だけでなく、政府の税務署や研究機関、税関、さらに軍の基地等、広い屋上を抱える施設をすべて再エネ発電基地に転用するよう要請している。国民の税金で建築した公的な建物を国全体の用途に活用することは、税金の有効活用につながるとの主張だ。この論理は日本でも同様だ。

 

 国民の要請を受け、英国では2016年に、ウィルトシャー州にある英空軍の元RAFリネハム空軍基地は250 エーカーの滑走路跡地に太陽光発電設備を敷き詰めたほか、 元空軍基地のRAF Wroughtonは60MWsの発電容量を持つスウィンドン太陽光発電所に転用されている。

 

英国で進む「グリーン刑務所」の建設状況
英国で進む「グリーン刑務所」の建設状況

 

 ただ、その後は公的施設への太陽光発電建設はあまり進んでこなかった。流れが変わったのは、「2050年ネットゼロ」目標の現実化に加え、政府は今年5月に、4つの新設刑務所計画を発表し、それらの施設を犯罪撲滅のためにオール電化の近代的設備とし、将来はネットゼロでの運営も打ち出したためだ。

 

 刑務所オール電化のため、太陽光パネル、ヒートポンプ、LED照明、省エネ設計等の「グリーン化」を促進する方針だ。これによりエネルギー需要を半減させるほか、温室効果ガス排出量を85%削減できるとしている。同時に、新設の刑務所だけでなく、既存の刑務所についても「グリーン化」を進める必要があるとして、今回、太陽光発電設備の全面採用を打ち出したわけだ。

 

 日本でも、環境省等の役所は事あるごとに、企業や国民に温暖化対策促進を要求する。だが、本来は、地方自治体を含め公的機関こそが、自らの施設の合理化とともに、設備の有効活用の一環に再エネ化、省エネ化を率先展開するべきだろう。2022年度予算要求で各省庁が再エネ設備設置と、省エネ推進で競い合うことを期待したい。

https://www.gov.uk/government/news/thousands-of-new-solar-panels-helping-prisons-go-green