HOME8.温暖化・気候変動 |パリ協定の「国が定める温暖化対策貢献(NDCs)」。現時点で145カ国が改定版提出。「2050年ネットゼロ宣言」は65カ国。それでも「1.5℃目標」達成には遠く(RIEF) |

パリ協定の「国が定める温暖化対策貢献(NDCs)」。現時点で145カ国が改定版提出。「2050年ネットゼロ宣言」は65カ国。それでも「1.5℃目標」達成には遠く(RIEF)

2021-10-23 23:28:18

NDC001キャプチャ

 

 今月末からの国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)を前にして、パリ協定参加国のうち約70%に相当する145カ国が、当初の「国が定める温暖化貢献(MDCs)」の改定版を提出したことがわかった。「2050年ネットゼロ」の宣言国は65カ国に達した。ただ、2030年の想定排出量は、パリ協定前に比べ10%追加削減にとどまる見通しで、「1.5℃目標」には届かない。最も排出量の多い中国のほか、インドも未提出。

 

 NDCsの改定版提出状況は、気候変動データのオンラインサイトClimate Watchが運営する「NDC Enhancement Tracker」が公表した。すでに改定NDCsを提出した145カ国はパリ協定署名国の約70%で、GHG排出量割合では世界全体の55.0%を占める。このうち81カ国は従来のNDCsによる削減量の追加削減を確約した。

 

 米、欧州、日本等の主要国の大半は、改定NDCsを提出した。だが、世界全体の排出量の24%を占める中国と、同7%のインドは未提出。2015年のパリ協定調印前の各国のGHG排出量はそのまま2030年まで続くと、ほぼ600億㌧に達する見通しだった。「1.5℃目標」の達成に必要な水準の倍以上のレベルだ。

 

 同協定で各国が公約した当初のNDCsの削減公約量は、600億㌧を10%削減する内容。今回の改定NDCsでの削減割合は追加で10%分になるという。しかし「1.5℃目標」の達成にはまだ遠い。担当者は「新規のNDCsでも、目標達成には少な過ぎる。ただ、2050年ネットゼロを宣言した国が65カ国あり、改定NDCs未提出の中国等の追加削減を見込むと、2050年には世界の気温上昇は産業革命前からの『2.1℃』にまで抑えることが可能」と期待している。

 

 もちろん、「2.1℃の上昇」はパリ協定の「1.5℃目標」、「2.0℃目標」をいずれも上回る。だが、パリ協定前には排出水準は50年には3℃を上回るのは確実だったことから、改善は一歩m、進むことになる。改定NDCs提出国の約60%は削減量を上積みした。一方、14%の国は排出削減量に変更がないか、中には排出削減量を減らした国もあるという。

 

 今月末の英グラスゴーでのCOP26の開催までに、駆け込みでの改定NDCs提出も見込まれる。もっとも、現状ではパリ協定の目標達成には「かなり大きいギャップがある」(担当者)のは間違いない。COP26において、各国がこのギャップ解消のための追加的行動で合意できるかが最大の焦点だ。

 

 パリ協定によると、NDCsの見直しは5年ごとに行わる。したがって、2025年にも追加の見直しが予定される。だが、気候変動の激化を未然に防ぐためには、温暖化現象が進んでから排出量の追加削減をするよりも、早期対応が求められる。特に排出量の多い国々(中国、米国、インド、ロシア、日本等)の早期対応がカギとなる。

 

https://www.climatewatchdata.org/2020-ndc-tracker?utm_source=CP+Daily&utm_campaign=9d8075912b-CPdaily22102021&utm_medium=email&utm_term=0_a9d8834f72-9d8075912b-110248541