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化学業界、2050年ネットゼロに向け、脱炭素投資試算額7.4兆~9.4兆円。政府に投資への支援を要請。同業界は脱炭素だけでなく、脱プラスチック、循環経済転換も求められる(RIEF)

2022-04-26 21:18:15

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 日本化学工業協会は26日、2050年ネットゼロを実現のため、化学業界全体で7.4兆~9.4兆円の脱炭素投資が必要との試算を発表した。試算は日化協が設定した脱炭素ビジネスへの転換シナリオに基づく推計投資額を最低レベルとし、各社に対するアンケートによる設備投資や研究開発費(R&D)の上乗せ分を含む最大レベルを示した。今回の試算額を元に政府に投資支援を要請するとしている。

 

 化学業界はカーボンニュートラルをビジネスチャンスとしてもとらえているが、投資コスト増大分は政府の補助金等に頼る考えのようだ。

 

 日化協の試算は、3つの転換シナリオを設定し、それぞれに対する業界のモデルプラントの概算投資情報で推計した。シナリオは、①基礎化学品製造のほぼ半分量の原料を化石資源からCO2や廃プラスチックに転換②ナフサクラッカーの燃料の全量をアンモニアに転換 ③石炭等を主燃料とする火力自家発電設備等の燃料転換、というもの。

 

 その結果、推計投資額は7.4兆円となった。これとは別に個々の会員企業がカーボンニュートラルに向けて想定している設備投資額やR&D投資額等をアンケートで調べ、これらを加算した金額9.7兆円を最大投資額とした。

 

 これらの試算額には、カーボンニュートラル実現に関わる設備新設の投資額(原料転換・ナフサクラッカー燃料転換・自家発電設備等の燃料転換への設備投資)に加え、原料転換・燃料転換等に関わるR&D、省エネ促進関連投資・費用を含む、としている。

 

 同協会は昨年5月、政府のカーボンニュートラル宣言を受ける形で、「化学産業は ソリューションプロバイダーとして、『化学』の潜在力を顕在化させ、持続可能な社会の成長に貢献するイノベーションの創出を推進・加速する」と宣言。今回のカーボンニュートラル推計投資額の対象分野は、その際の主要な取り組みを網羅している。

 

 化学業界は、産業部門からの温室効果ガス排出量では鉄鋼、セメントと同様に高い排出量を出している「炭素集約型産業」。2030年46%削減、50年ネットゼロを実現するには、同業界のGHG削減の早期達成が欠かせないが、同時に、同業界にとっては脱炭素はビジネスチャンスでもあり、同業界の大規模投資の何を公的に支援し、何を競争に委ねるかの見極めが必要だ。

 

 化学業界には、脱炭素と同時に、循環経済(サーキュラーエコノミー)、脱プラスチック等での抜本的な改革も求められる。

https://www.nikkakyo.org/system/files/jcianewsrelease20220426.pdf

https://www.nikkakyo.org/system/files/20210518CN.pdf