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自主的カーボンクレジット認証の最大手、米Verra。認証クレジット量が10億クレジットを達成。ケニアのREDD+事業のクレジット認証で。脱炭素化の広がりでクレジット需要増を反映(RIEF)

2022-11-12 14:10:21

Verra001キャプチャ

 

 自主的カーボンクレジット認証の最大手、米ベラ(Verra)は11日、運営する認証カーボン基準(VCS)プログラムでの認証クレジット数が10億クレジットに達したと発表した。VCSによるクレジットは1㌧当たり1クレジットとして認証するため、10億㌧の温室効果ガス(GHG)を大気中から吸収したことになる。エジプトのシャルムエルシェイク(Sharm el-Sheikh)で開催中の国連気候変動枠組条約第27回締約国会議(COP27)でも、企業の脱炭素化を促進するための自主的カーボンクレジットの活用が論点の一つだ。

 

 Verraは2009年3月に最初のクレジットを認証している。以来、約13年間で合計1億㌧弱のクレジットを生み出したことになる。10億㌧乗せの事業は、アフリカ・ケニアで開発中のREDD+プロジェクト「Chyulu (チユル)Hillis REDD+ Project」。同事業はケニア南東部のマクエニ郡にある火山性の山岳地域のエコシステムを保全し、さらに生態系を保護する活動を通じて、REDD+クレジットを創出する。

 

 対象地域の自然林等は、地域住民と地域コミュニティが所有者。プロジェクトの推進者は同地の2つの地方自治体と、3つの地元NGO、さらに4つのマサイ族グループ等で構成する「Chyulu Hills Conservation Trust」で、米自然保護団体のConservation International(CI)の支援も受けている。

 

 Verraは同事業から生み出されるクレジットについて、自らが設定する「Climate, Community & Biodiversity(CCB)Standards」に基づき、産出されるREDD+クレジットの妥当性を認証した。

 

 プロジェクトを推進するマサイ族のリーダーであり、「トラスト」の会長でもあるSamson Parashina氏は「マサイ族コミュニティは、自然環境の保全を土台とする持続可能な地域経済を発展させることで得るカーボンクレジット収入によるファイナンスを得ることで生活基盤を安定させている」とREDD+事業の成果を強調している。

 

 VerraのCEOのDavid Antonioli氏は「10億㌧という『マイルストーン』を達成できたことを誇りに思う。われわれは数10億㌦もの資金を動かし、数千の人々の生活を改善し、基調なエコシステムを保全したことを意味する。しかし、10億㌧はわれわれすべてが取り組まねばならない気候緊急事態をスケールアップするための、いわば『頭金』に過ぎない。今後も市場が、カーボンファイナンスを通じた気候行動をさらに成長させ、産み出していくことを支援していきたい」とコメントしている。

 

 Verraは自主的カーボンクレジットプログラムを推進する非営利団体として知られる。京都議定書による気候変動対策を目指して、2005年に米カーボン市場投資アドバイザーのClimate Wedge社とそのパートナー企業のCheyne Capitalが共同で自主的カーボン基準(VCS : version1.0)を立ち上げたのが始まりだ。

 

 京都議定書では途上国の排出削減事業は「クリーン開発メカニズム(CDM)」として取引を認めたが、先進国等での削減プロジェクトは対象外だった。VCSはそれらのクレジット事業を取引対象とした。翌2006年にClimate WedgeらはVCM version1.0を、米ロックフェラー財団や英元首相トニー・ブレア氏らが支援する官民連携の非営利団体のClimate Groupのほか、国際排出権取引機関(IETA)、世界経済フォーラム(WEF)、サステナブル開発のための世界ビジネス評議会(WBCSD)等の非営利団体による運営に切り替えている。2018年には基準名のVerified Carbon Standardから現在のVerraに変更している。

https://verra.org/verra-issues-1-billionth-carbon-credit/