HOME8.温暖化・気候変動 |昨年の10大気候災害。最大被害額(保険金支払い)は米国を襲ったハリケーン・イアンの13兆円強。パキスタン洪水は死者1700人超、700万人が家を失う。英慈善団体が調査(RIEF) |

昨年の10大気候災害。最大被害額(保険金支払い)は米国を襲ったハリケーン・イアンの13兆円強。パキスタン洪水は死者1700人超、700万人が家を失う。英慈善団体が調査(RIEF)

2023-01-05 17:08:35

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  2022年の10大最悪気候災害が公表された。英国の慈善団体Chirstian Aidが毎年集計しているもので、最も被害額(保険金支払い額)が大きかったのは昨年9月に米国とキューバを襲ったハリケーン・イアンによる1000億㌦強。6月~9月に発生したパキスタンの洪水では1700人以上が死亡し、700万人が家を失った。ただ同地での保険加入率が低いことから、保険支払い額は56億㌦。世界銀行の推計では実際の被害額は300億㌦超とされている。

 

 (写真は、パキスタンの洪水で家を失い、間に合わせの「ボート」で避難する子供たち)

 

 同団体の調査は、年間30億㌦以上の被害額を出した大規模な洪水、干害、嵐、森林火災等を対象とした。最大の被害額となったハリケーン・イアンは保険加入率の高い米国を襲ったこともあるが、死亡者数も130人以上、住宅を失った人々は4万以上という大きな影響を及ぼした。総被害額は1000億㌦(13兆2350億円)強と推定されている。https://rief-jp.org/ct8/128916

 

 夏に英国、欧州を襲った熱波と干害は、農産物や経済活動へ影響を及ぼし、200億㌦超の被害を及ぼした。パキスタンの洪水被害は国土の3分の1が水に浸かったうえに、被害が6月から9月まで4カ月の長期にわたった。パキスタンはインドとともに3月~4月に熱波に襲われ、90人以上が死亡している。気候変動の要因となる温室効果ガス排出増大にほとんど貢献していない人々が、温暖化の影響被害の対象となり、被害を保険でカバーすることもできない状況が浮き彫りになった。https://rief-jp.org/ct8/127972

 

 中国では夏場の洪水被害で239人が家を失い、被害額は123億㌦を記録した。また、年間を通して干害被害額が84億㌦に上った。4月の南アフリカの洪水被害では、459人が死亡し、4万人以上が家屋消失等の被害を受けた。

 

 Christian Aidの調査は、こうした保険支払い額ベースとは別に、人的被害等の大きさを踏まえた別の10件の災害リストも公表している。それによると、10月に西アフリカのマリ、カメルーン、ナイジェリア、ニジェール等で起きた洪水では、600人以上が死亡し、130万人が家を失った。

 

 2月のブラジルでの洪水では231人が死亡、1400人が家を失い、10月のフィリピンの台風被害では162人の死亡と、85万人の住宅が破壊された。ソマリア、ケニア、エチオピア等の東アフリカ諸国で続く干害では、3600万人以上が影響を受け、その多くが飢餓状態となっている。

 

 保険金支払い額や人的被害等は発生しなかったが、2022年に起きた「異常事例」として、3月18日に、北極と南極でほぼ同時に異例な気温上昇が起きたケースも、リストアップされた。同事例は、南極大陸の南極高原にある観測拠点で3月18日に平年を約40℃以上、上回るマイナス11.8℃の「暖かさ」を記録する一方で、冬のピークを超えた北極でも、北極点近くで平年を30℃上回った。熱帯地方で温められた大気流が両極に還流する「Poleward transport」現象によるみられる。https://rief-jp.org/ct8/123547



 Christian Aidはこうした損失と被害が増大している現状に対応するには、より一層の緊急な気候行動が必要だと指摘している。昨年末のCOP27では気候変動で激化する途上国での自然災害による損失とダメージを補填するファンドの設立で合意しており、同団体は、世界の政治リーダ―に向けて、同ファンドの早期設立と活用を求めている。

 

  同団体CEOのPatrick Watt氏は「調査では保険金支払額が30億㌦以上の災害を選んだが、いずれも気候対策の不十分さによって被害額が増えている。こうした支払額ベースの被害とは別に、多くの人的損失や被害の実態が広がっている。温室効果ガス排出量の思い切った削減がない限り、金融的損害も、人的損失も、ただ、増え続けるだけだ」と警告を発している。

https://mediacentre.christianaid.org.uk/new-report-top-10-climate-disasters-cost-the-world-billions-in-2022/