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イオン。イチゴのハウス栽培で「CO2フリー(ゼロ)イチゴ」の実現目指す。「イチゴ版CCUS」を導入、回収したCO2をイチゴの光合成促進に活用。2024年9月の稼働の予定(RIEF)

2023-04-28 21:30:27

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 イオンは、イチゴのハウス栽培で「CO2フリー(ゼロ)イチゴ」を実現に向けての取り組みを開始する。ハウス内の暖房機から発生するCO2を回収して利用・貯留する「イチゴ版CCUSシステム」を導入、回収・貯留したCO2をイチゴの株元に施して光合成を促す進することで、栽培で排出するCO2の60%を削減。さらにヒートポンプの熱交換向上や太陽光発電によるエネルギー自給等を組み合わせて、残りの40%も削減するという。2024年9月の稼働を目指す。新設ハウスで先行して「CO2フリーイチゴ」を実現、将来的には既存ハウスにも取り組みを拡大する予定としている。

 

 (写真は、イメージです=農業協同組合新聞より)

 

 取り組みはイオングループで直営農場の運営と農産物の生産委託を行う「イオンアグリ創造」が実施する。

 

 同社が運営する「イオン島根安来農場」と「イオン三重いなべ農場」の二つの農場のイチゴ農業用ハウスで、取り組む。前者の農場に約65アール、後者に約45アール、合計約1.1haのハウスの基礎工事を今年9月から開始する。将来的には、両農場で年間 約100㌧の「CO2フリーイチゴ」を生産する見込み。東海、近畿、中四国エリアのイオンのグループ店舗へ供給する予定。

 

 新設ハウスでは、温度等の環境管理のため、耐候性ハウスに循環扇やWEBによる環境モニタリングなどの工夫を取り入れる。これらによって、ハウス 内の採光性と温度ムラを改善するほか、寒冷地でも効率的に熱を集めて生産活動に利用できる施設園芸用ヒートポンプを暖房機に使用する。

 

  ただ、空気熱源のヒートポンプのみを用いた暖房は、外気温が低すぎるとエネルギーの利用効率が悪くなる。そこで、他のイチゴハウスと同様に、補助的に重油の暖房機を使用する。その際、暖房機から発生するCO2を排煙から回収して使用・貯留するCCUS技術を使うのがポイントだ。同技術は経産省が石炭火力等の延命のために想定しているCCSと仕組みは同じだが、違うのは貯留ではなく利用(U)を軸として、イチゴの生育を促進する点だ。

 

  回収したCO2をイチゴの株元に局所施用して光合成を促進させ、イチゴの生育を高める。植物は、葉に存在する気孔からCO2を取り込み、光を受けた時に、このCO2と体内の水分を原料にして酸素と有機物(糖)を生成する「光合成」を行う。この際、生成される有機物が食物の生長や果実の生産を高める。CO2施肥(施用)と呼ばれる。

 

 キャノングローバル戦略研究所の堅田元喜研究員の論文では、「これまでの研究成果では温室内のCO2濃度を340 ppm(1995年時点)から2倍に増加させると、様々な農作物に対する実験結果を平均すると生長量が20%ほど上昇することがわかっている」と説明している。https://cigs.canon/article/20201209_5523.html

 

 石炭火力で想定される地中貯留ではないことから、回収したCO2は幾分は漏れる。イオンでは、その分および他の排出分を相殺するため、別途、ハウスの省エネ・再エネ化を高める。日射比例式給液装置を使って、灌水施肥の最適化を図ることで、より低コストで生産性の高い栽培体系を構築し、省エネと採算性の両立を目指す。さらに太陽光パネルも設置して、ハウス内の電源をCO2フリーにする。

 

 イチゴ版CCUSでCO2を60%、省エネ・再エネ化で40%の削減。合わせて100%削減になる。2030年までに閉鎖した石炭火力発電所の敷地をイチゴハウスに転換して、CCUS技術をイチゴの生育に活用することこそ、真のグリーン・トランスフォーメーション(GX)になるのではないか。イオンさん、がんばって!

https://www.aeon.info/news/release_45683/