HOME |来週の韓国の総選挙。与野党接戦だが、気候政策ではともに「脱炭素公約」で競う。石炭火力は与党が2036年までに半減、野党は40年には全廃。「石炭火力延命策」の日本との違い鮮明(RIEF) |

来週の韓国の総選挙。与野党接戦だが、気候政策ではともに「脱炭素公約」で競う。石炭火力は与党が2036年までに半減、野党は40年には全廃。「石炭火力延命策」の日本との違い鮮明(RIEF)

2024-04-05 01:25:03

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 (写真は、総選挙の公示に伴う選挙ポスターの貼り付け風景Korean Timesより)

 韓国は来週10日の総選挙に向けて、与野党の激戦が続いている。激しい政策対立の一方で、気候変動対策では与野党とも、前向きな取り組みを有権者にアピールし「気候政策の優先度」で競う様相になっているという。両党とも候補者にも、気候対策に取り組むNGO代表や弁護士らを加え、気候対策への真剣度を強調している。石炭火力発電でも、日本では政府がグリーントラスフォーメーション(GX)政策として同火力の「延命策」を推進するのに対して、尹錫悦政権を支える保守党の「国民の力」は2036年までに現行の石炭火力の半減化を、野党の「共に民主党」は2040年の全廃を打ち出している。

 Bloomberg等が報じた。投票日まで1週間を切った韓国の総選挙。接戦が各地で展開されており、現在のところ最大野党「共に民主党」がわずかに保守系与党「国民の力」をリードしているとも伝えられる。両党の政策は保守・革新で多くの点で対立軸が明瞭だ。だが、気候対策については、ともに選挙公約のトップ10の中に気候危機を掲げ、積極的な気候対策公約を有権者に示している。

 例えば、温室効果ガス(GHG)削減目標では、「共に民主党」は2035年までに52%削減(2018年比)を掲げ、グリーン政党の「グリーン公正党」の選挙公約とほぼ同じ目標水準(35年までに再エネ50%)としている。与党「国民の力」は、具体的な削減目標は示していないが、「クリーンエネルギー」に分類される原子力と再エネの両方の発展のバランスを掲げている。発電の主流はクリーンエネというスタンスだ。

野党「共に民主党」の代表
街頭演説する野党「共に民主党」のリーダー㊨

 GHG排出量増大の元凶である石炭火力については、「国民の力」が、現行の国内59基の石炭火力のほぼ半分に相当する28基を2036年までに永久停止を目標としている。一方の「共に民主党」は「2040年までに全石炭火力を永久停止とする」と、さらに先を行く「脱石炭火力」公約を示している。

 企業等の気候行動を推進する政府基金「気候アクションファンド」については、「国民の力」が2027年までに5兆ウォン(約5500億円)に倍増させるとする。「共に民主党」はそれを上回わる7兆ウォン(約7700億円)を掲げている。また「国民の力」は立候補者に、NGO「Climate Change Center」の事務局長を公認、「共に民主党」も気候問題に取り組んできた弁護士を公認立候補者の第一号に選出して、有権者にアピールした。

 

 気候危機の解決のための気候政策をめぐっては、米国ではバイデン大統領とトランプ前大統領が正反対のスタンスを示し、明白な「政治対立課題」となっている。EUでは気候対策重視のスタンスが長年続いているが、最近、台頭する右派政党等は「反気候対策」を公然と掲げるところも少なくない。「気候政策」が政治対立課題となるグローバルな傾向が強まる中での韓国の同問題への有権者の評価は、世論調査でも、政治対立課題というよりも、ほぼ無党派層向けの課題として位置づけられているという。

 この点で、ソウルの檀国大学(Dankook University)のカーボンニュートラル担当の客員教授、キム・スジン氏のコメントを紹介している。同氏によると「気候変動は、現代世界の政治家であれば、必ず議題に挙げなければならないテーマだ。したがって今回の総選挙の立候補者たちは(立候補した以上)気候変動に関連した非常に具体的な政策計画を持っていることを証明する必要がある」と述べ、気候課題が政治的対立を超えた政策課題であるとの見方を示している。

与党「国民の力」
有権者に呼びかける与党「国民の力」のリーダー㊧

 米欧での気候政策をめぐる政治対立の加速化が高まる中での、韓国での気候政策での積極性で競い合う動きの一方で、日本では気候政策は微妙だ。韓国と同様に、気候課題は「政治対立課題」とはみなされていないようだが、気候対策の積極性で競う状況からも遠いように映る。日本政府によるGX政策の柱は、石炭火力発電の「延命策」だが、同政策をめぐって国会で激しい論戦が繰り広げられたとの話は聞かない。

 韓国で気候課題が「無党派層課題」と位置づけられるとすれば、日本では「無関心課題」化しているとの見方もできる。韓国与党「国民の力」の候補者に選出されたCCC事務局長のキム・ソヒ(Kim Sohee)氏は「世界貿易から雇用に至るまで、すべてが気候変動の影響を受けている。しかし、気候関連の公約を票集めの道具として使うことは避けるべきで、各政党は協力して長期的な緩和策を打ち出す必要がある」と指摘している。政治イデオロギーを超えた政策課題との認識のようだ。

 「共に民主党」で候補者となった弁護士の朴智惠氏(Park Jihay)は「私が最初に今回の総選挙のための同党の候補者に採用されたということは、同党が気候変動問題への取り組みにいかに熱心であるかを示している。しかし、今回の選挙を『気候変動選挙』と呼ぶにはまだ早い。なぜなら、韓国自体、気候変動問題を他の問題よりも優先させるまでには至っていない」と語っている。ともに冷静に政治と気候政策の関係をとらえている。

https://www.bloomberg.com/news/articles/2024-04-04/climate-is-the-new-must-have-in-south-korean-election-gameplan?cmpid=BBD040424_GREENDAILY&utm_medium=email&utm_source=newsletter&utm_term=240404&utm_campaign=greendaily

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240403/k10014411591000.html