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化石燃料輸入額増の主因は価格高騰~化石燃料輸入と10電力会社・電源開発の火力発電燃料の分析~(KIKO)

2014-04-28 18:27:08

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kasekinenryo1キャプチャ・日本の2013年(暦年)の化石燃料輸入量は震災前の2010年比約6%増であるが、輸入額は57%も増加、輸入額増加の要因の大半は石油などの単価の高騰である。

 

・10電力+電源開発の2013年(暦年)の火力発電用化石燃料消費量は、震災前の2010年比で35%増であるが、火力発電用化石燃料推定購入額は約4兆円増加し、2010年比2.2倍増加した。購入額増加の要因の過半は、石油などの単価の高騰である。単価を一定とすれば、原発停止後の増加分は約1.5兆円、46%増加に留まる。kasekinenryou2キャプチャ

 

・政府は、化石燃料の輸入額の増加及び火力発電用化石燃料購入額の増加の3分の1がコスト要因によるものと説明するが、実態は、化石燃料単価の高騰と為替変動が主因である。原子力から脱却し、省エネ・節電・再生可能エネルギーの普及及びエネルギー供給の効率化と低炭素化によって、化石燃料の消費を減らしていくことこそが、原子力のリスクを回避し、気候変動の悪影響を最小化させ、化石燃料の輸入額を削減し国内経済を発展させる道である。

 

 

1.化石燃料輸入量の増加は震災前から6%のみ。輸入額は57%増。大半は単価上昇による


 

・原発事故を契機に省エネ

 


化石燃料輸入量は、震災前の2010 年から震災後の2013 年(暦年・1〜12 月)までに6%増加した(図1)。kasekinenryou3キャプチャ



原子力は福島事故前の2010 年の一次エネルギーの約12%を占めていた。2013 年(暦年)の原子力発電量はゼロに近く、従前の原子力分を化石燃料で代替していれば、12%の化石燃料輸入量増になったはずだった。しかし、6%の増加に止まったのは、福島原発事故を契機に省エネ、再エネ
が取組まれたことを示している(図2)。


 

・化石燃料輸入額増の要因の大半は単価高騰と為替変動


他方、化石燃料の輸入額は、暦年で2010年から2013 年までに約10 兆円、57%も増加した(図1、図3)。増加分の大半は、石油と天然ガスのドル建による輸入単価の高騰と円安政策の二重の単価上昇要因によるものである(図4)。kasekinenryo4キャプチャ


 


輸入単価が福島事故前の2010 年のままであれば、図3の「輸入額(単価一定)」の通り、2013 年の化石燃料輸入額は2010 年比で約1 兆円、6%増に留まったことになる。即ち、輸入額増加分である約10 兆円のうち9 兆円は、単価の高騰と為替要因によるもので、原発停止によるものではない。
また、仮にすべての原発が稼働していたとしても、輸入額は2010 年水準比で約9 兆円増加していたことになる。


 

 

2.火力発電用燃料の消費量は、節電により約35%増にとどまる。他方、同購入額は倍増した。その要因の過半は単価上昇。

 


・原発事故を契機に節電



2010 年の10 電力会社と電源開発の発電量の自社火力割合は5 割強、原発は約4 分の1 であった。このため、節電・再エネ普及がなければ、火力発電量が25%以上増加する可能性があった。しかし、10 電力と電源開発の火力発電の2013 年(暦年)の発電量が、震災前である2010 年の
発電量全体比で20%増、火力発電量比で36%増にとどまった(図5)のは、原発事故を契機に6〜8%の節電があったことによる(図6)。


 

 

消費電力は2013 年(暦年)に全体で2010 年比約6%削減された。規模別にみると、家庭や中小業務などの「電灯」、中小工場の「電力」、大規模業務などの「高圧」の消費量の削減率が平均またはそれ以上なのに対し、大工場などの「特別高圧」は削減率が低い(図7)。(注1)

 


・火力燃料金額増の要因の過半は単価の高騰



一方、暦年ごとの火力発電用化石燃料購入推定額(単価は輸入単価として計算)は図5 と図8 の通り約4 兆円、224%増加した。この要因の過半も化石燃料単価高騰である。単価が一定とすれば、化石燃料購入額は図5 と図8 の「単価一定」ケースの通り、2013 年までに1.5 兆円、46%増に留ま
る。全原発が稼働していたとしても、暦年で2010 年の化石燃料購入額より約2.5 億円増加していたことになる。(注2)


 

 

3.まとめ


政府は、原発停止による燃料使用量の増加で今後も3 兆円以上の負担増になると説明している。福島第一原子力発電所事故以降、省エネが進み、化石燃料の輸入額増加の要因の大半は、為替変動の影響も含む化石燃料の輸入単価の高騰によるものである。同じく、電力消費においても節電が行われ、火力発電用化石燃料の購入額増加の要因の過半は、燃料の単価の高騰によるものである。


 


化石燃料単価は将来的に上昇していく。実現可能性に乏しい原発再稼働に期待して再生可能エネルギー拡大や省エネ対策をなおざりにすることで、化石燃料の輸入額が増加する負担を将来的に固定化させることになる。


 


原発事故・トラブル防止と放射性廃棄物最小化のためには原子力から脱却することが不可欠である。省エネ、再エネの普及拡大を早急に進め、化石燃料利用の効率化、低炭素化を進めることが、原子力から脱却し、温暖化による悪影響を最小化し、化石燃料輸入額を中長期的に軽減させ、温暖化対策のための新産業の拡大、雇用創出にもつながる。これは、IPCC も認めているところである。


 


政府は、原発を再稼働させ、省エネ・再エネを事実上、先送りし、石炭火力を推進するとのエネルギー基本方針を撤回し、温暖化対策を抜本的に進める政策強化を行うべきである。


 

 

注1:本文の通り、電力消費の最大口の特別高圧が減っておらず、製造業で集中的に減っているわけではない。部門別の電力消費量は2012 年度に2010 年度比で、業務の商業が増加しているが、業務の商業以外で6〜10%、家庭で6%削減になっている。これらは活動量指標増加業種である。なお、製造業の生産を中心とする鉱工業生産指数は、2012 年後半に約5 ポイント低下、2013 年なかばに回復した。

 


注2:電事連の3 月の電力速報により計算すると、年度単位でも暦年と同じ傾向が確認できる。


 

http://www.kikonet.org/wp/wp-content/uploads/2014/04/pr20140428.pdf