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「今世紀末に海面3m上昇」 温暖化問題を最初に指摘したハンセン教授の最新研究報告。 東京、NYなど沿岸都市が水没? 他の専門家からは懐疑の声(National Geographic)

2015-07-24 22:45:43

今世紀末までに海面が3m上昇するとする論文を、元NASA所属で現在米コロンビア大学の気候科学者ジェームス・ハンセン氏を筆頭著者とする16人の研究チームが、査読付き学術誌「Atmospheric Physics and Chemistry」に発表することがわかった。

 

 気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、今世紀末までに起こる海面上昇は最高で0.9mと予測している。今回の予測は、このIPCCのシナリオを大幅に上回る深刻な予測だ。

 

 ハンセン氏らは論文の中で、この先グリーンランドと南極の氷床融解が進むと、海流の動きの停滞が引き起こされると予測している。その結果、南極海の下に暖かい海水が閉じ込められて、その海域の海氷融解をさらに加速させるという(もし南極大陸の氷が全て解けると、海面は約60m上昇するといわれている)。(参考記事:2013年10月号「氷河融解」

 

 ハンセン氏の予測通りに海面が3m上昇すれば、ニューヨークから上海まで、世界中で多くの沿岸都市が居住不可能となる。

ハンセン教授
ハンセン教授

ほかの研究者は懐疑的

 

 一方、ほかの気候科学者の多くは、ハンセン氏の結論に懐疑的だ。

 

 米ワシントン大学の地球科学教授イエン・ジョウギン氏は、氷河と氷床の融解による海面上昇は、年間で1ミリ程度に留まると考えている。ハンセン氏のチームは、今後グリーンランドの氷の融解速度が2倍になると予測しているが、ジョウギン氏は過去の傾向と、現在分かっている事実に照らし合わせてみても、その可能性はほとんどないとしている。「現在の融解速度から3mに達することはまずないでしょう」と、ジョウギン氏は言う。(参考記事:「加速する海面上昇」

 

 NASAゴダード宇宙研究所の気候科学者ギャビン・シュミット氏は、ハンセン氏の報告が「1つのシナリオに過ぎず、そのシナリオを証拠立てるものではありません」としている。

 

  論文は「議論を広げることにはなるでしょう」と言いつつも、従来の見解とはかけ離れているため、気候変動に関する主流派の主張や、二酸化炭素排出量削減へ向けた国際的な協議、各国政府へ対するIPCCの提言へ影響を与えることはないとしている。(参考記事:「フロリダ発 海面上昇とマネー」

 

 ハンセン氏には今回、話を聞くことはできなかった。

 

http://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/15/072300193/