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IHI、 石炭火力とバイオマス燃料の混焼技術開発で「33%混焼」を安定的に達成。将来は50%も可能と。石炭火力が天然ガス火力並みに(RIEF)

2015-12-09 13:26:25

IHIキャプチャ

 IHIは、石炭火力発電所からのCO2排出量を削減する手段の一つとしてバイオマス燃料の木質ペレットを石炭と混焼させる技術開発で、33%までの混焼実験に成功した。

 

 CO2を大量に排出する石炭火力発電所は、現在、パリで開いている国連気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)でも論議の対象となっている。一方で、途上国を中心に安価な電力への需要は極めて高い。こうしたことから、石炭火力発電の燃料に木質バイオマスを加えて混焼させることで、CO2排出量を削減、発電量を確保する技術開発が進められている。

 

 IHIは、環境省からの委託事業「CO2排出削減対策強化誘導型技術開発・実証事業」で2013~2015年度の間、「バイオマス高比率混焼による石炭焚火力CO2排出原単位半減に向けた先進的システムの実証」事業に取り組んできた。新日鉄 釜石製鉄所内のエネルギー工場(出力:149MW)で,純国産木質ペレット燃料を用いて実証実験を続けてきた。

 

その結果、熱量比率25%・重量比33%のバイオマス混焼による安定運転を2015年11月に達成した、と発表した。バイオマス発電出力は36MWで、国内では最大規模となる。

 

 バイオマスは植物が光合成によって成長する過程でCO2を吸収することから、燃料に用いた場合、排出するCO2と成長時期の吸収分を相殺して、CO2排出量をゼロとみなすことができる。このためバイオマス重要比で33%というのは、CO2排出量が33%減ったことと同じ扱いになる。

 

 石炭火力からのCO2排出量が3割カットされると、天然ガス発電のCO2排出量とほぼ同じになり、途上国だけではなく、先進国でも利用が進む可能性がある。IHIが今回実証した技術は既存の発電設備に小規模な改造を加えるもので、現状数%程度の混焼率を大幅に引き上げられるとともに、技術的には混焼率を50%以上にすることも可能だという。IHIは今後、この成果を活かして実機設計を行い、2017年度の商用運転開始を目指すとしている。

 

 ただ、課題も考えられる。混焼するバイオマス燃料を安定的に確保できるかという点だ。森林の間伐材などが使われるが、現在、建設計画が打ち出されている大型のバイオマス発電などでは、間伐材などだけでは足りず、海外のパーム油のヤシガラの輸入を前提にしているケースが少なくない。

 

 こうした場合は、ヤシガラを輸送する際の船舶からのCO2排出量の評価や、パーム油プランテーションによる生態系破壊のコストなどの扱いも必要になってくる。また、混焼に伴う追加設備などのコスト削減も必要だ。

 

  IHIはこれまで、相生事業所内の自社試験設備においてバイオマス単独粉砕試験、燃焼試験等、バイオマス高比率混焼に関する研究開発を進めてきた。今回の実証試験ではIHIのこれらの蓄積を踏まえて、技術可能性を高め、実用化に近づけた。