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フィンランド、2035年にカーボンニュートラル達成の法的目標導入へ。外国のクレジットに頼らず、国内のシンク源と再エネ発電中心で。CO2排出量の多い泥炭産業の雇用対策も(RIEF)

2019-06-10 08:43:44

Finland11キャプチャ

 

  フィンランドの連立政権は2035年にカーボンニュートラル達成の目標を設定することで合意した。電力だけでなく、自動車などからの排出量を含めてCO2発生量を実質ゼロとする。同じ北欧のノルウェーは2030年のカーボンニュートラル達成を目指しているが、フィンランドの場合、海外からのクレジット購入を含めず、あくまでも国内排出量の純粋ネットゼロを目指す。

 

 (写真は、政策方針を共同発表する連立政権の各党代表)

 

 フィンランドは4月14日の総選挙で、与党第1党で中道右派の中央党が大敗。新たに第1党となった中道左派の社会民主党を中心に連立交渉が進められていた。先週、社民党のアンティ・リンネ氏が首相として、緑の党や左派連合等の5党が連立政権を組むことが決まった。この連立政権の政策の柱の一つに、今回のカーボンニュートラル目標が据えられた。

 

フィンランドの新首相になるアンリ氏
フィンランドの新首相になるリンネ氏

 

 パリ協定では各国は温暖化対策の国別目標(NDC)を公表している。その中でカーボンニュートラルを国の目標とする国々は、現在、19カ国に上る。これらの国々は、昨年9月の国連気候サミットで「Carbon Neutral Coalition(CNC)」を結成している。フィンランドの積極的な目標設定は来年に予定されるNDCの見直し交渉にも影響を及ぼしそうだ。https://rief-jp.org/ct8/83367

 

 新首相になるリンネ氏は連立政権での今回の目標設定合意を「未来に投資するため」と語り、国民の福利厚生対策の一部として気候戦略を位置付けることを強調した。カーボンニュートラル目標は法律で明確に規定する。その一方で、温暖化の進展や影響を見極めるため、目標には2025年にレビューする条件を付ける予定。

 

 目標達成に向けた対策は広範囲になる。現在のエネルギー税を改革するほか、鉄道や自然保護分野への投資を促進、さらにバイオマス関連発電の持続可能なルールの設定等を実施していく方針だ。

 

 焦点となるのは同国の主要産業である森林業によるCO2の吸収力を高める「シンク(吸収源)対策」と、伝統的な、CO2排出量の多いピート(泥炭)産業の取り扱いだ。

 

 木材・パルプビジネスの進展で、同国の森林伐採率は2015年の年間6800万㎥から2018年には10%以上増えて7500万~7700万㎥となった。木材・パルプ産業ではさらに新規のパルプ工場増設の動きがあり、森林の経済効果の増大の一方で、このままだと森林のCO2吸収力が減少する課題に直面している。

 

 もう一つの泥炭対策も深刻だ。泥炭は同国の伝統的なエネルギー源で、他の石炭資源を含めると、現在、同国のエネルギー消費の約4割を占める。連立政権は太陽光や風力発電等の再エネ電力を増大させるとともに、再エネ利用による冬季の熱源、公共輸送機関等の促進等を進める考えだ。

 

 こうした課題対策を進めて目標を達成するには、連立政権下での政治のカベを超えた協働が不可欠だ。労働組合も、泥炭産業の雇用問題と同時に、市民の未来の生活に関わる問題として気候変動問題をとらえ、ピート産業や森林産業の改革が及ぼす雇用・社会問題への対応姿勢を打ち出している。

 

 労働組合の連合であるSAKのスポークスパーソンは、政府の方針支持を表明したうえで、「気候変動対策に本気で取り組むとすると、ピート産業を廃止しなければならない。そうなると同産業の労働者は職を失う。こうした問題の解決には、目標達成に向けた明確なロードマップが必要。大事なのは目標に向けた準備を着実に進めることだ」と雇用改革への着手を指摘している。

 

 再エネ電力分野では、太陽光、風力発電等のスケールアップに加えて、農業廃棄物や森林の間伐材等を燃料とするバイオマス発電に、サステナビリティの視点から取り組み、同発電量を全発電量の10%に拡大する方針も含まれている。

 

https://uk.reuters.com/article/uk-finland-government/incoming-finland-prime-minister-announces-spending-boost-tax-hikes-idUKKCN1T41DI