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宮城県・加美町でのENEOSグループの風力発電事業計画。計画に基づく契約は、事故時の町の権利を違法に放棄している、として町民が契約変更を求める訴訟提起(各紙)

2023-06-07 14:05:41

JREKMami001キャプチャ

 

 各紙の報道によると、ENEOSグループが手掛ける宮城県加美町での風力発電事業をめぐり、同町の町長が事業者と結んだ事業契約は、町議会の議決を経ずに町の権利を放棄した違法なものであるとして、6日、町民が仙台地方裁判所に提訴した。訴状によると、風力発電の建設が、周辺自治体に上水道を供給するダムに影響を及ぼす可能性があるのに、同町長は、災害や事故が起きたりした場合に同社の財産を差し押さえる権利等を議会の議決を経ず、放棄する契約を結んだとしている。

 

 (写真は、先月2日に協定書締結時の様子。㊧から、発電した電力を購入する東北電力佐々木裕司常務、JRE竹内一弘社長、猪股洋文町長の順)

 

 朝日新聞等が伝えた。それによると、対象となっている風力発電事業は、ENEOSグループが今年初めに買収したジャパン・リニューアブル・エナジー(JRE)の合同会社JRE宮城加美(東京)が計画する「JRE宮城加美町ウインドファーム」。

 

 宮城県の北西部に位置する加美町に発電量4200kWの風力発電設備を10基建設(総発電容量42000kW、年間約1億150万kWh:一般家庭約2万3000世帯分)する予定。発電開始は2024年4月の見通し。先月2日に、加美町とJRE宮城加美が建設計画での協定を結んだ。

 

 原告らが問題視しているのは、建設予定地の近くにある漆沢ダムへの影響だ。同ダムは同町や大崎市など周辺の10市町村に上水道を供給している。しかし、風力発電事業の建設に伴う森林破壊や土砂災害、土砂の流出による水環境への影響が懸念されると指摘。そのうえで、猪股洋文町長が、同社との間で、同社が町有地での工作物を所有できることを認める地上権契約が違法だと指摘している。

 

 町が公表する資料では、同社との契約では、災害発生時等に「事業者が積極的に復旧に努める」等の文言は盛り込まれている。だが、町民らによると、災害や事故が起きたり同社の経営に問題が生じたりしても、町側が同社の財産を差し押さえる権利などは放棄されているという。町民らは、こうした規定では災害等での復旧や損害賠償等の費用は、同社の財産の範囲でしか請求できないとして、「町の財産や住民の生活を守ることを困難にする不平等な内容」と訴えている。

 

 町民らは、同契約は「町の権利を放棄する場合には議会の議決が必要」と定めた地方自治法に違反していることから、違法状態が解消されるまで町有地を同社に使わせないよう求めている。朝日新聞の報道では、原告の一人、庄司新寿さん(66)は6日の会見で、「住んでいるところに風車が乱立するのは許しがたい。再生可能エネルギー全体を否定するわけではない。住民の理解を得ながら進めてほしい」と話したとしている。

 

 同町は「提訴については訴状が届いていないのでコメントは差し控える。(地上権)契約については違法なものではないと考えている」と説明しているという。JRE宮城加美の親会社のJREの広報担当者は「訴状の内容を細かく確認しておらず、コメントできない」としているという。

 

 JREは同じ宮城県内の丸森町、大内・筆甫(ひっぽ)両地区の山林などで計画していた風力発電事業について5月10日に中止を決定している。同地では最大15基の風車を建てる予定だったが、計画地に自然公園や保安林が含まれていることもあり、住民が反発していた。

https://digital.asahi.com/articles/ASR673K40R65UNHB004.html

 

https://www.town.kami.miyagi.jp/soshikikarasagasu/ondankataisaku/saiseikanoenergy/3707.html