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環境NGOのRAN、「熱帯林破壊ゼロの東京五輪」求める11万筆の署名を国際オリンピック委(IOC)と東京オリンピック組織委に提出。「森友疑惑」ならぬ「森林疑惑」の払拭を要請(RIEF)

2018-03-29 08:09:50

RAN1キャプチャ

 

    環境NGOのレインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN、米国サンフランシスコ)は28日、東京2020組織委員会が新国立競技場など主要施設の建設用木材に、環境・社会面でリスクの高いインドネシア及びマレーシア由来の熱帯材を大量に使用していることに抗議する内外の署名約11万件を、国際オリンピック委員会(IOC)と東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会に提出した。署名は「熱帯林破壊ゼロの東京五輪」を求めている。

 

 東京大会の調達木材については、RANなどの環境・人権NGO44団体が2016年12月から継続的に情報公開請求している。今年2月に公開された情報によると、2017年11月末時点で、新国立競技場建設のために使用されたコンクリート型枠合板の87%以上がマレーシアおよびインドネシアの熱帯林を原料としていることがわかった。

 

 さらに、2017年と今年にかけてのNGOの独自調査によると、新国立競技場など複数の施設で、マレーシア・サラワク州での違法伐採、熱帯林破壊、人権侵害につながりのあるサプライヤーから調達した木材が確認されたという。

 

 こうした経緯から、先に韓国で開催された平昌冬季五輪が世界の注目を集める期間中に、「次のオリンピック」への懸念として、東京大会の施設建設における熱帯材の使用と、使用熱帯林現地での人権侵害への懸念の声が高まり、RANと米国の署名サイト「CREDO Action」が米国で署名活動を展開した。

 

 署名は、IOCと東京2020組織委員会に対して、①東京大会での熱帯材の使用中止②先住民族と地元住民の権利を尊重すること③森林破壊と人権侵害をもたらす高リスクの木材についての調達基準を強固なものにすること、を求める内容だ。

 

 署名活動により、「CREDO Action」では2月27日から3月26日までの1カ月間に81,831筆が集まった。RAN本部のウェブサイトでも、昨年9月21日から3月26日までの期間に28,741筆を集め、合計11万572筆分となった。

 

 RANの責任ある金融シニアキャンペーナーのハナ・ハイネケン氏は「東京五輪の木材調達は、世界で最も豊かな生態系を誇り、かつ脅威にさらされている熱帯林由来となっている。持続可能な五輪を開催するというコミットメントに明確に違反している。IOCと東京オリンピック大会当局に対し、調達基準の改善、人権の尊重、かけがえのない熱帯林の破壊を止めるよう求める」と訴えている。

 

 これまでのNGOらの指摘を受ける形で、東京2020組織委員会は3月16日、「持続可能性に配慮したパーム油・神の調達基準(案)」を公開し、現在、パブリックコメントを受け付けている(30日まで)。ただ、RANなどは同基準案は、厳格なデュージェリエンス(相当な注意による適正評価)や調達対象外についての明確な基準を設定するのではなく、現地で伐採事業者に適用されている「緩い認証制度」でも使える内容になっているとして、疑問視している。

 

 日本は世界最大の熱帯林合板の輸入国として知られる。2016年には、インドネシアとマレーシアだけからで約200万㎥の合板を輸入している。それらの熱帯林原産地は、長い間、世界最高水準の生物多様性の宝庫とされてきた。だが、近年とみに森林伐採、パーム油植林への転換、紙パルプ生産による皆伐などの大規模開発が広がっており、熱帯林を生活の場としてきた多くの先住民族がその場を奪われ、人権侵害も多発しているとされる。

http://japan.ran.org/?p=1173