HOME |三井E&Sホールディングス、海外の石炭火力土木事業からの撤退を決定。既存受注分の完工後、2022年度に完全撤退、再エネ等に切り替え。インドネシアの工事での巨額損失が影響(RIEF) |

三井E&Sホールディングス、海外の石炭火力土木事業からの撤退を決定。既存受注分の完工後、2022年度に完全撤退、再エネ等に切り替え。インドネシアの工事での巨額損失が影響(RIEF)

2019-05-11 00:38:14

E&S1キャプチャ

  三井E&Sホールディングスは10日、インドネシアで土木工事の不備から巨額の損失を出したことを踏まえ、石炭火力発電所事業からの撤退を決めた。現在受注している事業の完工後、新規引き受けをせず、再生可能エネルギーや機械などにシフトする。

 (写真は、損失を出したインドネシアでの石炭火力発電所再拡張事業)

 三井E&Sがつまずいた石炭火力発電所事業は、インドネシア・ジャワ島で、住友商事と関西電力が中心になって推進している「タンジュン・ジャティB石炭火力発電所」。同発電所は超々臨界圧石炭火力発電(USC)。三井E&Sは、再拡張事業の土木・建築工事を請け負っていた。ところが、2018年7月に、海中に据え付けた配管に数カ所の破損が見つかった。

 工事を止めて調査をしても原因が分からず、配管を撤去し最初から別の部材を使いやり直す事態となった。その結果、18年4~9月期に配管の取り換えや、納期を守るための人員増加などの費用を合わせて総額413億円の損失・引当金を計上した。19年3月期には工事費見直しで380億円を追加計上した。

E$S3キャプチャ

 

 こうしたことから同社は、火力発電土木事業については、受注中の工事を完工した後は、新規受注を行わず、事業から撤退する方針を打ち出した。その理由として「リスクの高い大型EPC(設計・調達・建設)プロジェクトを遂行できる内部・外部環境にない」と説明している。

 

 途上国での石炭火力発電事業に対しても、内外で反対運動が強く、温暖化の進行が加速する中で事業リスクが高まっていることなどを踏まえたとみられる。同社では火力発電土木工事の既存受注分を完工させるため、エンジニアリング会社社長の直轄体制として、仕上げに全力を投じる考えだ。その後、2022年度には同事業から完全撤退する。

 

火力発電土木事業は営業収益率が低い
火力発電土木事業は営業利益率が低い

 

 一方、「再エネ分野のEPCやOM(運転維持・管理業務)は発展の余地がある」としている。このため、風力発電事業などは新インフラ会社に移管、また社会インフラ事業は事業拡大のためグループ外企業との協業を進めていくとしている。このほか、バイオマス発電はデンマーク子会社のBWSCに集約、将来は東南アジアへの展開を目指す。一連の事業改革で、2023年3月期には連結経常利益率4%を目標としている。

 

 火力発電工事分野の人材は、既存事業を仕上げた後に、新インフラ会社やBWSCに配置転換する予定。それ以外では、造船事業の千葉工場の商船新造事業を縮小し、エネルギーエンジニアリングおよび大 型鋼構造物の事業に注力する体制に変換する。

 

 タンジュン・ジャティB石炭火力発電事業には、国際協力銀行(JBIC)、日本の3メガバンクやその他の銀行、シンガポールのOCBC銀行等がシンジケートローンを供給している。一方、仏銀のソシエテ・ジェネラルとクレディ・アグリコルは再拡張事業の協調融資団から脱退した。こうしたことから、内外の環境NGOのBankTrack、FoE Japan、350.org Japanなどは、日本の官民金融機関にも撤退を求めている。

 

https://www.mes.co.jp/press/2019/0510_001223.html

https://www.mes.co.jp/press/2019/uploads/HD022.pdf