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「2017年サステナブルファイナンス大賞」受賞企業インタビュー③ 優秀賞の三菱UFJモルガン・スタンレー証券。「本邦市場でのグリーンボンド等の普及」(RIEF)

2018-02-21 17:49:29

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  2017年サステナブルファイナンス大賞優秀賞を受賞した三菱UFJモルガン・スタンレー証券は、2017年中に国内で発行されたグリーンボンド、ソーシャルボンド合計9件の単独、共同の引受主幹事等を務めるなど、積極的にグリーンボンド市場の開拓に貢献しました。同社の投資銀行本部マネージング・ディレクターの諏訪一(すわ・はじめ)氏を中心に、グリーンボンド取り組みのきっかけや今後の展開等を聞きました。

 

――三菱UFJモルガン・スタンレー証券がグリーンボンドの引き受けに取り組むきっかけを聞かせてください。

 

 諏訪氏:一番初めに関与したのは2016年6月に世界銀行が日本市場で発行したドル債です。1億㌦をグリーンボンドで発行しました。新発のいわゆる「ショーグン債(外貨建て国内債券)」です。しかもグリーンボンドなので、「グリーン・ショーグン債」でした。

 

 ショーグン債は1990年代に何件か発行されましたがその後、全く出ていませんでした。そこでこのショーグン債を新しいフォーマットで手掛けたいという思いが強くありました。世銀とも話をして、せっかく世銀だからグリーンボンドでということで話になりました。私募なので投資家は、かんぽ生命が一社で引き受けてくれました。かんぽ生命では、同社の本格的なESG投資の第一号案件と位置づけておられます。これが実績面では第一号です。

 

――そして昨年はソーシャルボンドを含めると、9件のESG債を引き受けましたね。手応えがありましたか。

 

 諏訪氏:日本の投資家の債券でのESG投資はようやくここにきて、ものすごく注目されてきたと思います。ESG投資では先に株の世界が先行して動きましたので、債券のESG投資が注目されるようになったのはこの1年ないしせいぜい2年位です。その走りが、16年の世銀案件だったと思います。

 

 ショーグン債の前後に、われわれとしてもESGについて、少し目覚めがあって、そこから本格的に研究を始めました。ショーグン債の少し前くらいから、ESGの観点で債券市場をみていくということでのわれわれの気づきと研究の開始があって、世銀の案件が出てきたというのが経緯です。

 

優秀賞の表彰状を受賞された三菱UFJ証券ホールディングスの豊泉俊郎取締役会長
優秀賞の表彰状を掲げる三菱UFJ証券ホールディングスの豊泉俊郎取締役会長(左)

 

――グリーンボンドは資金使途のプロジェクトを特定したプロジェクトボンドですから、そのプロジェクトの「グリーン性」のメリット、デメリットを評価するわけですが、その影響はどうでしたか。

 

 諏訪氏:グリーンボンドの投資家は、ボンドを買ったということを世間に表明するわけです。これは従来の債券にはないことです。投資家側もESGの投資をきちっと行っているということを表明することが重要だということは、このボンドを扱ってみての一つ大きな気づきでした。これはもしかして、他の投資家を含めて大きな動きになっていくのではないかとその時思いました。今振り返ってみると、まさにその通りでした。

 

――投資家への販売に際しては、そうした投資を表明したい投資家、あるいはPRI(責任投資原則)等に署名している投資家を選んでいくわけですか。

 

 諏訪氏:PRIの署名機関はもちろんマークしています。ただ、署名していなくても、そういう思いを本質的に持っている投資家は、日本には実は多いと思います。元々、文化的にも「三方よし」といった発想がある国です。社会軸で、世の中のために、良い使途でつながっているものならば運用したいという基本的な共感性みたいなものを日本の投資家は本来的には持っていると思います。そういう意味では、PRIの署名機関はもちろんですがが、それ以外の投資家にも積極的に働きかけています。

 

――ショーグンの次は大きなものはなんでしたか

 

 諏訪氏:去年1月のフランス電力(EDF)によるグリーンボンドのサムライ債(国内市場での円建外債)ですね。EDFには資金調達の多様化・長期化への強い意向があったのですが、彼らは既に欧州コーポレートとしては最大手のグリーンボンド発行体の一つでした。われわれのほうにもサムライ債で国内のマーケットで本格的なグリーンボンドを供給したいという思いが強く、また発行体の希望する資金調達の多様化にグリーンボンドを活用できるのでは、というところから話を詰めていき、実現できました。

 

――円建て債はもっと発行できませんか

 

 諏訪氏:海外の発行体は、サムライ債を発行しても円の資金が必ずしもほしいわけではありませんので、通常は、ドル、ユーロ等に戻した時のコストなどの経済性を見ながらやっています。EDFの場合は、発行市場を広げたいという別のアングルもありました。発行体が両方の観点から判断したのと、今回はサムライ債のグリーンボンドとしては初めて、というのもEDFにとってインセンティブになったと思います。

 

 われわれとしては、日本のホームマーケットですので、日本の市場で発行するというところが一つ大きいのと、通貨として円建てというのもあります。昨年3月にはスターバックスのサステナビリティ・ボンドの販売も担当しました。これは同じ円建てですが、「グローバル円債」と呼んでいます。サムライは国内市場発行で、国内法に基づきますが、グローバル円債は海外市場での円建て発行で、海外の法律に準拠します。それを日本の投資家向けに販売しました。

 

 かつては日本でも、日本語のもの、日本の法律のものではないと買えない、という投資家が多かったのですが、だんだんグローバル化してきて、英語でもいいとなってきました。海外発行か日本発行かの差は、大手の投資家にとってはあまりありません。海外の発行体が円建て債を出す際の一つの大きなトレンドは、サムライ債の発行が減って、グローバル円債が増えているという環境があります。海外の発行体からすると、英語のままで開示できて、日本市場で売れるならば、グローバル円債のほうがいいという感じですね。

 

 サムライ債発行体としてはEDFの他には、現在残高ベースで最大のサムライ債発行体である仏銀のBPCEが、昨年6月と今年1月にソーシャルボンドを発行しています。

 

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――昨年1年を振り返って、グリーンボンドの発行市場の変化はありますか。

 

 諏訪氏:フランス電力やスターバックス、また仏銀BPCEのようにまず海外発行体による円債起債が先行し、その後この動きが国内に広がりました。昨年10月に東京都が国内の円建てグリーンボンド100億円を発行し、翌11月に鉄道・運輸機構が財投機関債のグリーンボンドを発行、さらに12月に戸田建設のグリーンボンドが出ました。3カ月連続で国内で円建て債が出たのは非常に特徴的でした。アナウンスメント効果も大きいし、グリーンボンドというものが日本にあるんだな、という気づきと刺激を、多くの発行体と投資家に与えたと思います。この3件とも、われわれが主幹事を務めたこともあって、発行体、投資家双方からの問い合わせが非常に多くあります。具体的に検討されている発行体も少なからずいるので、2018年度は発行数が増加するのではないかと思っています。発行数だけでなく、銘柄の多様性も出てくると思います。

 

――会社内でグリーンボンド関連の部隊はどれくらいですか

 

 諏訪氏:部自体は100人くらいの部署です。中には国内外の発行体属性毎にいくつかのオリジネーションのチームがあり、またドキュメンテーションを専門にやっているチームもあれば、シンジケーションをやっているチーム、商品の企画をやる担当者などもいるので、それぐらいの所帯です。商品企画担当のチームに、グリーンボンドを含めESG全般をみている者が数名いますが、グリーンボンドの専門デスクというよりは、部内アドバイザーという位置づけです。

 

 というのも、われわれは、ESG専門の担当を置くというよりは、最終的には部の全員が、ESGやグリーンボンド、あるいはサステナビリティ・ボンド等を、だれでもがきちっとわかって、顧客に提案ができる体制にするのが目指す姿だと思っています。全員が当たり前のようにやっているのが本来の目指す姿だと思います。

 

――東京都のグリーンボンドも引き受けられましたが、自治体発行のグリーンボンド市場は欧米でも大きな流れになっています。日本も東京以外の他の自治体にも広がりそうですか。

 

 諏訪氏:ご相談は多く、関心も高いです。一方で、自治体だけではなく、一般の事業法人もそうですが、グリーンプロジェクトというのをたくさん持っているわけでは必ずしもないという課題があります。グリーンボンドを出してみたいが、そこまでプロジェクトの金額が積みあがらない、という感じですね。実際に発行するとなると、手間暇はかかるし、認証を得るための追加コストもあります。プラスの人件費や、プラスのコストなどを考えると、普通の債券と比べて、引き続きハードルはまだそれなりにあると思います。ただ、関心は非常に高いです。

 

 山縣良行氏(デット・キャピタル・マーケット部エグゼクティブ・ディレクター):東京グリーンボンドを担当しましたが、第三者機関の認証を取得しグリーンボンドを出したことによって、通常の債券発行では見られない、グリーンボンドならではの投資家を数多く確認することができ、投資家の裾野の広がりを実感できました。そういう意味では発行体としてのメリットとしては、グリーンを含むESG等に関心の高い投資家を新たに取り込むことができるという面があります。投資家基盤の強化という観点からも、良かったのではないかと思いました。機関投資家の中には、自らのホームページや東京都のホームページで投資宣言を出して、日本のグリーンボンド市場が拡大することにエールを送る行為も目立ちました。投資家も発行体と一緒に市場を創っていきたいという気持ちは強いと思います。

 

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――発行体の裾野を広げるということも重要ですね

 

 赤松英治氏(同部エグゼクティブ・ディレクター):戸田建設の円建てグリーンボンドを担当しましたが、投資家需要に鑑みて100億円超の発行でも良かったと思っています。企業が発行する社債の場合、公共セクターの債券とは違って、クレジット部分をしっかり見極めたいという投資家の視点が強くなります。グリーンボンドを普及していくうえでは普通の社債と違って、ESG投資の要素をどれだけボンドの価格に反映することができるのかの見極めも重要なカギになります。戸田建設の場合、結果として、今年度の同格付の社債と比べて低利な調達ができましたので、投資家の理解が得られたと思っています。

 

 今回は、グリーンボンドとして、疑いようのないグローバルスタンダードに基づいていることを投資家に理解してもらうため、セカンドオピニオンをサステイナリティクスから取得しました。実際に投資家と話を進める上でも、今回債のグリーンに対する濃度に疑義が生じることはなく、円滑に話を進めることができました。今後の市場拡大を図る上でも、こうしたグリーンの適正な評価は重要になってくると思います。

 

――今後の日本でのグリーンボンド市場の展望をお聞かせください。

 

 諏訪氏:投資家のESG化というか、ESG投資家がどんどん増えてきて、運用資産に占めるESG資産の比率はこれから上がっていくと思います。そうした中で、ESGにきちんとフォーカスを合わせて、発行体の方々に資金調達の提案をさせてもらうということは、われわれがグリーンボンドをたくさん引き受けたいということだけではありません。安定的に、有利な調達をしていこうと思えば思うほど、今後の方向性としてESGを意識せざるを得ない世界に入っていきます。

 

 本業でやるので、収益をきちんと稼ぐということもあるし、ESGの観点で評価の高い資金調達のお手伝いをすることでわれわれ自身も本業で社会のお役に立てることになると、考えています。

 

 一方で、長期的にみると、グリーンボンドが債券におけるESG投資のゴールでは必ずしもないと思っています。ESG投資では株が先行していますが、株のESG投資の場合、何をみているかといえば、企業の経営全体、あるいは企業活動全体が、環境や社会、ガバナンスの観点できっちりした活動を行っている企業をみています。債券でも実は同じで、企業活動全体で、発行体の活動全体が、ESGの観点で優れた取り組みをしている発行体の債券であれば、最終的に資金使途をグリーンプロジェクトに限定しているということでは必ずしもなくても、通常の社債においても、ESG投資として債券投資家が投資をしていくというのが、最終的な姿だろうと思います。グリーンボンドはその一つのきっかけとしてあると思います。

http://www.sc.mufg.jp/

                                                          (聞き手は 藤井良広)