HOME11.CSR |日立建機の“ガンダム建機”が ようやく福島第1原発へ投入 (ダイヤモンド) |

日立建機の“ガンダム建機”が ようやく福島第1原発へ投入 (ダイヤモンド)

2013-05-28 19:02:35

現行モデルのASTACOは、第2世代に当たる。右は、福島原発に向かうASTACO-SoRa
Photo by Shinichi Yokoyama(左) (C)日立建機(右)
現行モデルのASTACOは、第2世代に当たる。右は、福島原発に向かうASTACO-SoRa Photo by Shinichi Yokoyama(左) (C)日立建機(右)
現行モデルのASTACOは、第2世代に当たる。右は、福島原発に向かうASTACO-SoRa
Photo by Shinichi Yokoyama(左) (C)日立建機(右)


建設機械は、実際に仕事をしてナンボである。2012年12月上旬に完成して以来、現場導入については音沙汰のなかった「原子力災害対応用小型双腕重機型ロボット」(ASTACO-SoRa)だが、やっと5月下旬に東京電力福島第1原子力発電所の建屋内へ“実機投入”に向けた秒読み段階に入った。

島第1原発には、すでに人間が近づけない高い放射線環境下で現場の調査・測定などを行う各種の小型ロボットが投入されている。だが今後は、がれきの撤去、資機材の搬出入、遮蔽物の設置などに特化した“ロボット建機”を投入する必要性が高まってきた。

 これまで「双腕式の作業機械(ASTACOシリーズ)」を手がけてきた日立建機に、原子力関連施設などの遠隔操作技術を持つ日立パワーソリューションズ(旧日立エンジニアリング・アンド・サービス)が加わり、共同開発した小型のロボット建機がASTACO-SoRaだ。末尾のSoRaは、「福島に再び美しい空を」との思いから命名されているという。

 2本のアーム(腕)を別々に稼働させることで、掘る、運ぶ、つり上げる、押さえる、切断するなどの細かい土木作業に従事する。

 その独特の形状と操作性により、ASTACOは、アニメ「機動戦士ガンダム」にちなんで“ガンダム建機”と呼ばれたり、あるいはアニメ「機動警察パトレイバー」になぞらえて“レイバー建機”と呼ばれたりする。建機ファンの間では、よく知られた存在だ。

30年後には脚が生える?


 それもそのはず、である。

 05年に発表されたASTACOの第1号機を開発した日立建機研究本部技術開発センタの石井啓範主任研究員は、自他ともに認める“大のガンダム好き”だった。

 この作品には、さまざまな有人機動兵器(モビルスーツ)が登場する。敵方であるジオン軍のメカのデザインに引かれていた若き日の石井研究員は、「搭乗型の大型ロボットを開発するために必要な技術を習得したかった」との理由で日立建機に入社した。

 一方で、08年以降のASTACOの現行モデル(第2世代)を開発した商品開発・建設システム事業部の小俣貴之主任は、「将来は“パトレイバー”に出てくるようなロボット建機を開発してみたい」というのが、そもそもの入社動機だった。

 「10~20年後は、まったく別の形状になっている可能性がある。30年後には、脚が生えているかもしれない」(小俣主任)

 もとより日立建機は、将来的な油圧ショベルのあるべき姿として大きく二つの方向性を打ち出してきた。すなわち、(1)電気の力を使って油圧機器を制御しながら、大幅な省エネルギーを実現する“電動化”と、(2)適用範囲の拡大や、基盤製品の競争力強化という観点からの“ロボット化”である。そういう意味で、ASTACOシリーズはフラッグシップ・モデルなのである。

 今回のASTACO-SoRaは、これからたった“1人”で前人未到の地へ向かう。ようやく、活躍の“場”を得られたロボット建機は、国民のヒーローになるかもしれない。

 (「週刊ダイヤモンド」編集部 池冨 仁)